EVENT | 2020/05/02

「コロナ解約」が急増中!コロナ禍を理由に契約や予約を解消するのはあり?【連載】FINDERSビジネス法律相談所(22)

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(今回のテーマ)Q. 新型コロナウイル...

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新型コロナに関する判例の参考は東日本大震災

「新型コロナウイルスの感染拡大自体、現代日本にとって未曾有の事態。日本の裁判例で、今のところ新型コロナウイルスのような感染症の拡大が不可抗力にあたるかどうかを判断した例は見当たりません。他方で、不可抗力の典型例でもある地震について、帰責事由の有無が問題となった裁判例は参考になります。

まず、阪神淡路大震災に関連するケースで、震災によって倉庫内の化学薬品が荷崩れを起こすなどして火災となり貨物が消失した場合に、倉庫会社やその代表者などに帰責事由があったのかどうかが問題となった事例です(東京地裁平成11年6月22日判決・判タ1008号288頁)。

裁判所は、(抽象的な地震の発生ではなく)大地震発生の具体的な予見可能性の問題と捉えた上で、阪神淡路大震災は震度7の未曽有の大震災であり、このような規模の大地震が発生することを具体的に予見することはできなかったことを理由に過失を否定。倉庫会社の債務不履行責任や不法行為責任を否定しています。

次に、東日本大震災に関するケースで、分譲住宅の購入者らが震災に伴う千葉県浦安市の分譲地の液状化で損害を被ったとして、デベロッパー(Y社)やその代表者などに対し、瑕疵担保責任等に基づく損害賠償を請求したという事例です(東京地裁平成26年10月8日判決・判時2247号44頁)。

裁判所は、Y社が東日本大震災規模の地震発生や液状化被害の発生を予測するのは困難であるとして、Y社の予見可能性および結果回避可能性がないことを理由に損害賠償責任を否定しました。

このように、いずれの事例でも、帰責事由(過失)があるといえるためにはその事象の発生についての予見可能性が必要とされ、結果、予見可能性がないことを理由に過失が否定されています。

つまり、あらかじめ予測できないものは備えようがないのだから仕方がないということです。

新型コロナは予見できたのか?

こうした地震に関する裁判例の判断枠組みを参考にすると、新型コロナウイルスの感染拡大も未曽有の事象であり、具体的に予見することは困難といえるでしょう。今後、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による債務不履行についても、裁判所で帰責事由がないと判断される場合は出てくると思います。

ただ、20世紀に入ってからも、スペイン風邪(1918-1919)、アジア風邪(1957-1958)、香港風邪(1968-1969)、SARS(重症急性呼吸器症候群)(2002年11月から2003年7月まで)など、感染症の世界的な流行の例はありました。 

そうすると、予見可能性を具体的にどの程度まで要求するかによっては、結論が変わる可能性もあり得ます。そしてその予見可能性は、グローバル企業などの国際的な取引の場合と、国内企業の国内取引の場合でも異なるでしょうし、個別具体的に検討されるものです。このあたりは裁判例の集積が待たれるところです。

新型コロナのせいで売上減でも借金は見逃してもらえない?

新型コロナウイルスや自粛要請に起因して売上が大きく減少し資金繰りが悪化したことで、取引先や銀行に対する支払(金銭債務の支払)が困難となるケースは、実際に増えてきています。こうした場合に、「不可抗力だ」として支払い義務を負わない旨の主張ができるかというと、そのような主張はできません。

金銭債務の不履行については民法419条3項に特則が定められており、不可抗力をもってしても支払えないことを正当化できないとされているのです。契約書でもあえて同条を排除するような免責条項を設けるというものはほとんど見られません。

ですから、新型コロナウイルスや自粛要請に起因して資金難に陥っている企業が、金銭債務の不履行を避けるには、取引先や銀行に対して返済期限の猶予を求める、もしくは、資金を調達して期限どおり返済する、などの対応が必要です。

何でもかんでもコロナのせいにするのはNG!

当然ながら、新型コロナウイルスの感染拡大や自粛要請の時期と重なったとはいえ、債務を履行できない原因が別にある場合には、「不可抗力」による免責は主張できません。

ほかの原因による場合、新型コロナによる影響とはいえず、不可抗力によるものとはいえないからです。新型コロナウイルスや自粛要請と債務不履行との間に、因果関係があるかどうかが重要なポイントです。

契約解除の問題は?

新型コロナの影響、すなわち不可抗力や当事者に帰責事由がない状況で債務履行のメドがたたない場合、債権者としては、契約を解除した上で、その代わりとなる取引先と契約をしたいところです。

しかしながら、従来の民法では解釈上、債務者に帰責事由がない場合、債権者は契約の解除をすることができないとされていました。そのため、債務者に帰責事由なく履行不能となった場合、当事者間での合意解除を検討するか、もしくは、このような状況を回避するため、あらかじめ契約時に特約を置くことで対処するケースが実務上は多いです。

なお、2020年4月施行の改正民法541条ないし543条は、債務不履行があれば債務者に帰責事由がなくとも、(債権者に帰責事由がないことが前提になります)債権者は契約を解除できると定めています。ちなみに、改正民法が適用されるのは、2020年4月1日以降に交わされた契約についてであるという点は注意が必要です。

予約キャンセルの問題は?

予約とは、将来において契約を成立させることを約束する契約をいい、予約により本契約を成立させる権利を「予約完結権」と呼びます。

つまり、契約ほど当事者を拘束しておく力はありませんので、不可抗力や帰責事由などなくても予約をキャンセルできますし、予約完結権を行使しないことによっても予約は解消することができます。

ただし、世間一般に「予約」と言われているものの中には、法的性格としては予約ではなく本契約そのものである場合もあり、一概に「予約」といっても予約としての法的性格を持つものかどうかは注意が必要です。予約販売やコンサートチケットなどの先行予約といったものは、「予約」の名が付いてはいるものの、予約完結権の行使なしに本契約が成立します。

個々の契約が予約なのか、本契約なのかの区別は判断が難しい場合もありますので、契約書、約款、利用規約などで定められている契約解消についての条項や「キャンセルポリシー」などを確認しておくのが大切です。

どこへ行っても、誰と会っても、新型コロナウイルスの話題が挨拶代わりのように交わされている現在。

「拡散希望」を謳うデマ情報もあれば、不安を煽る情報も氾濫していますが、新型コロナウイルスがビジネスにおける契約にどう影響するかということが、少しでもお役立ていただける情報となりましたら幸いです。


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