CULTURE | 2020/04/24

映画館が危機に瀕する今だからこそ、濱口竜介監督が「ミニシアター・エイド基金」にかける想い|緊急連載 #新型コロナと戦うミニシアター (1)

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「ミニシアター・エイド基金」の発起人のひとりである濱口竜介監督

今、ミニシアターが存亡の危機にある。

新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言を受け、全国のほとんどの映画館で一時休館を余儀なくされている。

全国の劇場のスクリーン数はシネコンが88%を占める一方、年間公開される日本映画の約1300本のうち、1000本ほどがミニシアターでの上映である。

その作品選びは多様であり、本年度米アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞したポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』は今でこそシネコンで気軽に観られたが、デビュー作の『ほえる犬は噛まない』はミニシアターで上映されていた。シネコンでは上映されない良質な海外映画から、新進気鋭の日本の監督作品、懐かしの名画まで、率先して上映してきたのがミニシアターなのだ。

そんなミニシアターがもし閉館となれば、業界の未来を担う日本人監督たちが才能を発表する場は絶たれ、世界各国の良質な映画は観られなくなる。仮にインターネットで配信という形が取られようが、整った音響と設備の中で見る映画体験には到底敵わない。

そこでミニシアターを救おうと映画人たちが集い、立ち上げたのが、#Save the Cinema 「ミニシアターを救え!」というプロジェクトだ。

まずはネット上で署名を集い、10日間でなんと6万6828筆もの署名を集め、15日に要望書を内閣府や文化庁に提出した。続く動きとして「ミニシアター・エイド基金」というクラウドファンディングを開始。クレジットカード会社への決済手数料5%、およびリターンを用意するための運営事務局の手数料85万円を引いた金額を、参加するミニシアター運営団体に分配する。こちらは開始からわずか3日目で目標金額1億円を達成した。

クラウドファンディングは今も5月14日の締め切りまで募集を続ける中、「ミニシアター・エイド基金」の発起人のひとりである濱口竜介監督に話を聞いた。

聞き手・文:伊藤さとり(映画パーソナリティ)

2~3月時点でさえ劇場は50%以上の売上ダウン

「ミニシアター・エイド基金」基金は4月24日時点で約1億8000万円の支援を集めている

―― 「ミニシアター・エイド基金」のクラウドファンディングを立ち上げるきっかけはなんだったのでしょうか?

濱口:4月2日に旧知の名古屋シネマスコーレ副支配人・坪井さんのインタビュー記事を読んだのがきっかけです。坪井さん曰く、コロナの影響でこのままいくと1、2カ月で休館。閉館もあり得るという内容で、自分に何ができるかを考え始めました。クラウドファンディングサイトのMotion Galleryはコロナの支援プログラムには手数料を取らないというシステムを発表していたので、同社社長の大高健志さんに連絡しました。そうしたら、その1時間後に深田晃司監督から連絡が来たんです。深田さんも同じことを考えて、大高さんに連絡した後でした。

その次の日から有志のメンバーと会議をして結果的に、5月14日の23時59分締め切りまでに目標達成金額を1億円と決めました。ただ、クラウドファンディングがスタート3日目で1億円を突破してしまいました。正直、ここまで多くの人がミニシアターを必要としていると知って、感慨深かったです。

―― 目標金額の1億円で全国109劇場・92団体(4月20日現在)を完全に救うことは出来るのでしょうか?

濱口:1億円を大体80館に分配すると、一館に130万から140万ということになります。とすると劇場の規模によりますが、大きな劇場では1カ月持たない状況です。立ち上げ当時は、いくらあればミニシアターが救えるか正確な額は分からない。多ければ多いほどいいのは間違いないけど、緊急に、多くの人に「現実的」な支援策と思える金額を提示しないといけないと考えて、目標額を1億円と設定しました。ただ、開始3日目で1億円を達成してしまうという嬉しい誤算があったため、ストレッチゴール(次の目標)を設定するために劇場に経営状況をより詳しくヒアリングをしているんです。結果としてまだ全然足りない金額だということがわかってきました。1億円という目標を達成したとしても、コロナ禍がいつまで続くか分からない状況なので、この金額で十分、とはどこまでも言えないんです。

終了予定日の5月14日までにできる限り集めないといけないし、この活動を弛まず続けていく必要があります。劇場は、2月・3月の時点ですでに例年より50%から70%の売上ダウンが生じているので、劇場によってはこの金額では売上ダウン分の補填でそもそも消えてしまうんです。

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