CULTURE | 2020/04/26

「ミニシアター・エイド基金」は経営者にとってどんな役に立つのか。ポレポレ東中野&下北沢トリウッド支配人インタビュー|緊急連載 #新型コロナと戦うミニシアター (3)

ポレポレ東中野の外観
第1回:「ミニシアター・エイド基金」の発起人のひとりである濱口竜介監督のインタビューはこちら
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ポレポレ東中野の外観

第1回:「ミニシアター・エイド基金」の発起人のひとりである濱口竜介監督のインタビューはこちら

第2回:ユーロスペース支配人の北條誠人氏のインタビューはこちら

「このままでは街の映画館が潰れてしまう」

新型コロナウィルスの感染拡大により、全国に緊急事態宣言が発令され、補償もなく映画館休館を余儀なくされ、今や廃業の危機にある全国のミニシアター。

この危機を乗り越える手助けをすべく、ミニシアターとの関係も深い深田晃司監督と濱口竜司監督が発起人となって立ち上げたのが、Motion Galleryのクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」だ。

全国のミニシアター109劇場・92団体(4月20日現在)が支援を求めており、5月14日を締め切りに集まったお金が、各劇場に均等に分配されるというものだ。実際のところ、ミニシアターの危機は、ニュースで新型コロナウィルスが取り上げられ始めた2月中旬から巻き起こっている。閉鎖空間を恐れた人々が映画館から一時的に離れ、その後、非常事態宣言発令により休館を余儀なくされ、政府からの補償もない状態でもスタッフへの給料、映画館の家賃など、支払い続けている。

「新型コロナと戦うミニシアター」最終回で話を聞いたのは、ポレポレ東中野下北沢トリウッドの2劇場の支配人である大槻貴宏氏。

日本のドキュメンタリー映画を多く上映し、『ヤクザと憲法』『さよならテレビ』など東海テレビ制作のドキュメンタリーや、配給ルートを持たない村上浩康監督の『東京干潟』『蟹の惑星』をいち早く上映してきたのがポレポレ東中野だ。

この劇場もオリジナルTシャツやバッグ、休業期間限定販売の劇場招待券やコーヒー券を併せたセットを発売するなど、休館になってもオンラインショップを開設するなど工夫している。

聞き手・文:伊藤さとり(映画パーソナリティ)

4月の売上は95%減。ミニシアター・エイド基金の存在自体が大きな支えになる

大槻貴宏氏

―― まず、休館になった映画館の現状を教えてください。

大槻:3月には例年の60%減、4月にはどちらも3日間しか営業出来ていないので、下北沢トリウッドだと数万あったかぐらいですから、95%減。4月はこのまま売り上げは無いです。今は、家賃の支払いを延ばせないかをすでに相談しています。

―― クラウドファンディングを呼びかけた濱口竜介監督は、目標金額として設定した1億円では、全国の映画館を救うには足りないと気づいたそうですが。

大槻:必ずしもそんなことは無いです。金銭的には、正直、トリウッドサイズ(50席弱)のミニシアターだと、家賃、スタッフへの給料、光熱費などの固定経費が1カ月約130万円。ポレポレだとその2~3倍程度です。売上が無い以上、借り入れをします。いつもお付き合いのあるメインバンクから、区、都の制度融資、そして国の融資全てから借り入れを起こす、今はそれが仕事です。これはどこの会社やお店でも経営者がやることでしょうし、それで何カ月分かの運転資金を確保し、ある程度目途が立ったときに、この「ミニシアター・エイド基金」はものすごくありがたいものになる。つまり、何かあった時の「切り札」になります。

そして何より一番なのは、もっと頑張らなきゃいけないと思えるモチベーションになっていることです。恐らく他のミニシアターの皆さんもそうだと思いますが、僕はチケットを売れない今、自分たちは何が出来るのだろうかということを考えています。今、オンラインショップでTシャツの販売などを行っているんですが、これもその結果です。幸い予想以上の反響をいただいているのでありがたいですし、助かっています。こういった直接間接を問わず皆さんからの応援にプラスして「ミニシアター・エイド」さんからの金銭的な援助があれば、なんとか運営する勇気、希望が湧いてきます。ただ、休館が半年続けばどうなるかと。

―― 休館になってもスタッフには給料は支払っているのでしょうか。

大槻:休館の時は、申し訳ないですが少し減らして支払っています。それは社員にもアルバイトにも、です。映画館に限らず、こうした場所はこうしたスタッフがいるから成り立っているのだと思うからで、そういう皆で映画館を続けていきたいし、皆が継続して働ける映画館でありたいんです。

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