写真提供:ショップジャパン
取材・文:6PAC
堀木宮子(ほりきみやこ)
株式会社オークローンマーケティング
New Product Launch Div. Director2005年、ブランドマネージャーとしてオークローンマーケティング入社。調理家電、寝具、フィットネスグッズなど、数々の商品のマーケティングを担当。2017年、商品の発掘・開発からローンチまでを担う新商品プロデュースの専門部署New Product Launch Div.を立ち上げ、統括責任者を務めている。
「帰ってきたらすでに料理ができていて欲しい」というニーズに着目
最近ではインスタントカメラやカセットテープなど、「1周回って新しい」と話題になるモノはいつの時代にもある。当時を知らない若者にとっては新鮮に見えることもあり、昔評判・定番だったモノを今風にアップデートすると、やはりウケることが少なくないのだとも言える。
通信販売のショップジャパンを展開する株式会社オークローンマーケティングが、1月に発売開始した自動調理鍋「ツインシェフ」も発売開始直後から話題となった。価格は1万9800円(税抜)。3月1日時点ではショップジャパンでも売り切れとなっており、再入荷時期は未定だという。
昭和という時代を生きていた人たちなら1986年にシャープが発売した「ツインファミコン(ファミコンカセットとディスクシステムのゲームが一台で遊べた)」や、テレビとVHSビデオデッキが一体となった「テレビデオ」を思い出すかもしれない。「こういうのが欲しかった!」というヤツだ。
株式会社オークローンマーケティングで新商品をプロデュースする専門部署、New Product Launch Div.のディレクターである堀木宮子氏を取材した。
堀木宮子氏
―― ツインシェフがかなり話題ですが、発売の経緯を教えていただけますか?
堀木:ショップジャパンは、日本のお客様のライフスタイルやニーズに合った、便利でユニークな商品をお届けするべく、日々世界中から商品を発掘しています。その中で見つけたのがツインシェフです。“自動調理鍋2つで1台”、“左右の鍋で別々の調理ができる”商品を発掘したのち、日本のお客様の食卓シーンやニーズをくみ取り反映させ、さらに利便性の高い商品になるよう手を加え、発売に至りました。
調理方法に合わせて最適な火加減と時間を自動で調整し調理を行ってくれるクイックメニューを10種類搭載したこと、またそのメニューの内容や、メニューごとの調理時間や加熱温度の設定は日本オリジナルです。日本のお客様の食卓シーンやニーズに合わせた利便性の高い商品にするべく改良を重ね、開発から販売までに約1年半という期間を費やしました。
―― ツインシェフを発売しようと決断された裏にはどういた背景があるのでしょうか?
堀木:ショップジャパンでは、ツインシェフの前に、“ほったらかし調理家電”として電気圧力鍋のシリーズを発売しております。電気圧力鍋市場売上金額No.1の実績を獲得し、ご愛顧いただいている多くの客様からの声やデータを蓄積しています。
お客様からの声で多かったのが、「家に帰ってきてからの調理を楽にしたい」というニーズよりも、「家に帰ってきたらすでに料理ができている」というニーズでした。また、炊飯器やおかずをつくる電気圧力鍋の両方を置いておくというスペースがないご家庭もあることがわかり、さらに進化した自動調理鍋が必要であると考え、ツインシェフの発売に至りました。
―― ターゲットユーザーはどういった層だと想定されたのでしょうか?
堀木:お子様がいらっしゃるご家庭をメインターゲットとしています。特に共働きのご家庭やお仕事で忙しい方の毎日の料理を、少しでもラクにするお手伝いができればと考えております。
―― 現時点での販売状況はいかがでしょうか?
堀木:詳細の数字の公表は控えさせていただきますが、予想を大幅に上回るかたちでご好評いただいており、初回入荷分は即欠品となりました。お子様のいる方や共働きの夫婦の方が多いと思われる30~40代の方を中心にご購入いただいております。
―― 今後、類似品も出回ってくるかと思いますが、ツインシェフの圧倒的優位性はどこにあるのでしょうか?
堀木:1台で家族分のごはん(白米は1つの鍋で4合分炊くことが可能です)とおかず(カレーの場合1つの鍋で6皿分調理することが可能です)を同時に作ることができる点は、他社製品にはない唯一無二の強みです。
使い始めてから時間に余裕ができ、子どもと遊ぶ時間も増えた
材料を入れてボタンを押すだけで調理できる「クイックレシピ」は全10種類
―― SNS上では早速好意的なレビューが散見されていますが、御社のもとには購入者からどういった声が届いていますか?
堀木:特に、ほったらかし調理ができる点、同時調理できる点を評価していただいており、「ほったらかし調理ができるおかげで使い始めてから時間に余裕ができ、子どもと遊ぶ時間も増えた」、「煮物を作るのが苦手だったが、ツインシェフなら火加減も気にせずお任せできるからラク。美味しくできるので煮物が以前より食卓に並ぶようになった」、「最大4品同時調理できるため食卓に並ぶ品数が増えた」、「便利ですでに毎日愛用しており手放せない。特に乳児を抱えて多忙な身にとっては世紀の大発明」など、料理がラクになったこと、食卓が充実したこと、自由な時間が増えたこと、に対する喜びの声を多くいただいております。
―― 一方で「レシピがちょっと少ない」という声もネット上では見受けられましたが、専用のレシピ本やレシピ情報を掲載したサイトなどを立ち上げるご予定はありますか?
堀木:はい、検討しております。
―― 「ご飯とおかずを同時調理」というのが最大のウリかと思います。「ご飯とカレー」のような定番以外の組み合わせでのおススメは?
堀木:ご飯とおかずの組み合わせ以外にも、大人用とお子様用で違う味付けのカレーを同時に作ったり、白米と玄米を同時に炊いたり、各ご家庭のニーズに合わせてさまざまな使い方が可能です。お客様の食卓がより充実するよう、ごはん、おかず、汁物、蒸し料理など、さまざまな組み合わせの食事がつくれるよう、最大で4品の同時調理を可能としました。また、和食だけでなくピラフ、スパニッシュオムレツ、コンソメスープ、アクアパッツァといった洋食もおすすめです。
「ほったらかし調理」を武器に定番家電を目指す
―― ツインシェフのような家電は昭和の時代に多く存在していたようです。当時は定番家電となることはなかったようですが、令和の時代には1周回って定番家電となりそうでしょうか?
堀木:多くのお客様にお使いいただけますよう、邁進してまいります。料理に手間と時間をかけられないが、それでも「栄養のあるものを家で食べたい」、「簡単に美味しい料理を作りたい」というニーズにマッチした、仕事と家庭を両立する共働き世帯を中心に支持を頂ける商品だと見込んでおります。
また、簡単に調理ができるだけでなく、材料を入れてボタンを押すだけで自動調理ができる手軽さや、火を使わないため安心して「ほったらかし調理」ができ、その間に別の家事を済ませることができるので、「使える時間を創出する」ことができるのも、忙しい現代人のニーズにマッチしていると考えております。