EVENT | 2020/01/29

少子化が進む日本で「おもちゃのサブスク」は成立するのか。「トイサブ!」を運営する株式会社トラーナに訊く

© 2020 Torana, Inc
取材・文:6PAC

小坂優希
株式会社トラーナ広報担当
慶應...

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© 2020 Torana, Inc

取材・文:6PAC

小坂優希

株式会社トラーナ広報担当

慶應義塾大学卒業後、書店販売員を経て、東京都特別区職員として税務業務に従事。3年半の勤務後、FinTechスタートアップへ転職。管理部門を経験後、円満に卒業し、現在はトラーナにて広報及び管理部門を担当している。1児の親。

サブスク百花繚乱の時代に「おもちゃのサブスク」が登場

「トイサブ!」で2018年度に人気だった1歳向けのおもちゃ。1位は「おかおがチェンジ! モンスター」(フィッシャー・プライス)、2位は「たたいてベビードラム」(トイローヤル)、3位は「リングリィリング」(Neaf)だった
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さまざまなジャンルのサブスクリプションサービスが定着しつつあるが、未だに使ったことがなくてよくわからないという人も多いことだろう。最近も焼肉チェーンの牛角が「焼肉食べ放題PASS」という名のサブスクリプションサービスを開始したものの、今年初めに突如Twitterで話題になってから(販売自体は去年11月から行われていた)、席の予約が殺到してしまったため新規販売をストップしたという結末を迎えている。

サブスクリプションサービスには、Netflixのように誰もが知る月額制動画配信サービスもあれば、スーツや普段着といった服の定額制サービスも存在している。今回話を訊くことができた株式会社トラーナは、「トイサブ!」という幼児向けのおもちゃをレンタルする月額制サービスだ。世界でも頭一つ抜けて少子化が進む日本という国で「おもちゃのサブスクリプション」という事業領域が生き残れるものなのだろうかといった疑問が湧いたので、同社の小坂優希氏に詳しい話を伺った。

月額3340円で1万5000円相当のおもちゃを提供

株式会社トラーナ広報担当の小坂優希氏
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―― 「トイサブ!」はどんなサービスなんでしょうか?

小坂:月額3340円(税別)で、一度に6点(1万5000円相当)のおもちゃを定期的にお届けするサービスです。発送後2カ月経過すると、おもちゃの一部または全部を交換することができます。もし特に気に入ったものがあれば、現物をお買い上げいただくことも可能です。また「トイサブ!」ではお子様におもちゃで思いっきり遊んでいただきたいとの思いから、おもちゃ本体やパーツの汚れ・破損については、タバコの臭いの付着、ペットの噛みあとなど、留意事項で禁止されている利用方法での場合を除き、原則弁償不要としております。

お届けするおもちゃは認定ベビートイインストラクターを含む専任のスタッフが選定し、お子さまの月齢や嗜好、ご家庭の環境などを総合的に勘案し、個別の要望もお聞きした上でお届けしています。交換後に再びお届けするおもちゃも、研修を受けた弊社スタッフが食品安全基準に則ってクリーニングしています。

―― 現在の利用状況はいかがですか?

小坂:延べ人数で4000名以上の方にご利用いただいており、アクティブユーザー(継続会員)は2400名を超えています。契約者のうち3割が東京都内在住の方です。月に1000件ほど発送しており、おもちゃの在庫は1万5000点以上となっています。おもちゃの種類は、ばらつきがあるため現在非公表としています。

幼児への早期教育に強い関心を持つ家庭が主な利用層

おもちゃのプラン例は0~1歳向け、1~2歳向け、2~満4歳向けでそれぞれ紹介しており、住環境や個別の要望も考慮される© 2020 Torana, Inc

―― 契約している家庭はどういった層が多いのでしょうか?

小坂:職業などは把握しておりませんが、(1)共働きで教育に関心がある、首都圏および三大都市圏在住の家庭、(2)配偶者の一方が家事に専念しており、幼児への早期教育に強い関心を持つ家庭、が主な利用層だと思います。契約者(または意思決定者)は、夫婦どちらかに偏っているようには見えません。

―― ユーザーからは、ポジティブ・ネガティブ両面でどういった声が届いていますか?

小坂:ポジティブな声としては、「親の知らないおもちゃが届いてワクワクした、よいサプライズになった」、「低年齢(月齢)時に活用するおもちゃの収納に悩まなくて済んだ」といったものがあります。一方でネガティブな声としては、「サポート体制の不備及びサポートに関する周知不足により、おもちゃを十分に使いこなせず高く感じた」、「借りたおもちゃの管理に気をつかい疲れてしまった」といった声があります。

―― ユーザーの契約理由と解約理由をそれぞれ教えてください。

小坂:契約理由を正確にトラッキングしていませんが、「おもちゃを収納し続けるスペースを確保するのが難しい」、「質の高い玩具を比較的低価格で利用したい」といった声はよく頂戴します。解約理由は、「対象年齢から外れた」、「幼稚園や保育園に通い、家で過ごす時間が減った」、「おもちゃを使いこなせなかった」ことが三大理由と認識しています。

―― 日本で事業を始めるにあたり、参考にした先行サービスはありますか?また、先行サービスとの比較において「トイサブ!」の優位点・独自性はどこにあるのでしょうか?

小坂:玩具のサブスクリプションというよりは、他のサブスクリプションやロジスティクスの絡む事業のビジネスモデルを参考に展開しています。国外のサービスではむしろ、サブスクリプションモデルよりも玩具業界のスタートアップに注目しています。

「トイサブ!」の優位性については、日本国内で先行しているサービスが無いところに優位性があると考えています。また、累積1万5000件を超える配送データにより、玩具のセレクトがより正確にできる点も優位点だと考えています。

―― 日本における「おもちゃのサブスクリプション」は、「トイサブ!」が初めてでしょうか?また、TOYBOXやIKUPLEといった同業他社との差別化ポイントはどこにあるとお考えですか?

小坂:厳密に他社のサービス開始時期を把握していませんが、大規模に行っているのは弊社サービスが初めてだと認識しています。同業他社のサービスよりも累積ユーザー数が多い、データが蓄積されている、メディア露出が多いなどといったことから、信頼感が醸成できているところが大きいのかなと思います。おもちゃの定額制レンタルというよりは、キュレーションの機能を提供できていることが大きな特徴と認識しています。

子どもの数は減少し続けるが、国内の可処分所得の総和は急激には減少しない

―― 少子化で子どもの数が減少し続ける中、「おもちゃのサブスクリプション」が生き残っていくには何が必要となってくるのでしょうか?

小坂:子どもの数は減少し続けるでしょうが、国内の可処分所得の総和は急激には減少しないとみています。皆それぞれが異なる家庭のありかたに合ったおもちゃを提供するサービス展開によって、おもちゃがただの消費財ではないことが伝わっていくと考えています。おもちゃへの価値や認識の転換が、今後の乳幼児向け玩具業界に必要になっていくことでしょう。ただ、消費財ではないおもちゃという価値観を普及させるためのビジネスのあり方として、「サブスクリプション」という形式をとる必要は必ずしもないと考えています。

―― 「トイサブ!」が直面している課題や問題、またそれらに対する解決策などはどういったものがあるのでしょうか?

小坂:顧客増に対応するロジスティクスメンバーの育成という課題があり、現状パートタイムのメンバーが清掃、検品、梱包、発送を担っているものの、スケーラビリティをいまだ担保できていない状態にあります。他には、顧客増に対応するカスタマーサポートメンバーの増員という課題もございます。ユーザーが増えれば当然お問い合わせも増えるのですが、現状ではカスタマーサポートが万全とはいえない状況です。「トイサブ!」のキュレーション機能を十分に発揮するためにも、カスタマーサポート体制の充実は急務です。

こうした課題の解決策として、現在様々な媒体で求人募集をしています。人員を募集するだけでなく、社内勉強会も開催していく予定です。


トイサブ!公式サイト