今年もInterop Tokyoが、6月13日(水)~15日(金)の3日間、幕張メッセで開催される。
ネットワークコンピューティングに特化したテクノロジーとビジネスのリーディングイベントとして、1994年にはじまり、日本のインターネットの発展とともに歩みを進めてきたInterop Tokyoも、今年で25回目。Interoperability(相互接続性)をテーマに、最新の機器、技術、サービスが一堂に会し、実稼働する様子を体験できるイベントとして、すっかり定着した観がある。
今回のスローガンは「はじめよう。次のネット社会」。10年、20年先を見据え、すべての産業、すべての国、すべてのモノ、すべての人がつながる社会へと新たな扉を開く。そんな思いが込められているようだ。
取材・文:伊藤喬 写真:木原基行
世界最大級のライブデモンストレーションネットワーク「ShowNet」
Interop Tokyoには、他のIT系イベントにはない見どころがある。
Interopの名前の由来にもなったInteroperability(相互接続性)を検証する場として会場内に構築される、世界最大級のライブデモンストレーションネットワーク「ShowNet」だ。
その特徴は、実際に会場内におけるインターネット接続環境を提供するための実稼働ネットワークでありながら、各種の相互接続実証やチャレンジを実施するという2つの顔を持っていること。
ShowNetを構成するすべての機器は、出展社から提供された2600台以上の製品・サービスで構成されている。その設計・構築・運用に携わっているのは、ボランティアとして集まった450名を超えるエンジニアたちだ。
今年のテーマは"Dive Into the Next"
変容するインターネット環境に先駆ける近未来ネットワークの在り方を、ずっと模索してきたというInterop TokyoのShowNet。今回は、「今年から2020年にかけて、5Gをはじめとしてさまざまな技術やサービスが展開されていきます。その中で、新しい世代のネットワークにおいて必要な技術・サービスとはなにかを考え、実践し、次の世代に飛び込んでいく。という意気込みをこのテーマに込めました。ShowNetが25年間続けてきた「『挑戦し、作り上げる』精神のもと、次世代へ飛び込んでいきます」とNOCチームメンバー ジェネラリストの遠峰隆史氏は語る。
継承~再構築~創造の循環を繰り返しながら、常に新しいネットワークの在り方に挑戦し続けること。それこそが、ShowNetの精神といっていいだろう。
サービスチェイニングによるネットワーク機能の提供
今年のShowNetでは、昨年から実施している“サービスチェイニング”によるネットワーク機能の提供も、さらに進化させている。
NOCチームメンバー ジェネラリスト/国立研究開発法人 情報通信研究機構 遠峰隆史氏
「前回は、使いたいサービスをユーザーが選んで、その決まったところを通す仕組みをとっていましたが、今回は、サービスがどこにあってもユーザーの要望に応じて組み替え、インターネットに出るまでの仕組みを提供している」(遠峰氏)という。
ShowNetには、今年も通信事業者の協力を得て、大手町から340ギガの大容量回線が引き込まれている。
通信事業者でなければ使わないような大型ルーターを経由して、基幹となるバックボーンネットワークを構築するとともに、ISPやデータセンター、エンタープライズなどを意識した場所をネットワーク上に設けることで、ShowNetではインターネットの縮小版をすべて体験することができる。
地域BWAによる閉域網でIoTデバイスの安全性を確保
このように、インターネットの未来を具現化する最先端の機器や技術を駆使したShowNetに、一般のビジネスユーザーは敷居の高さを感じてしまうかもしれない。
しかし、今年のShowNetには、最先端のネットワーク環境がもたらす大きな可能性を、ビジネスユーザーも体験することができるよう工夫が凝らされている。
その1つが、IoTデバイスと地域BWA(Broadband Wireless Access)による閉域網を組み合わせて実施する、スタンプラリーのような来場者向けサービスだ。
「これは、来場者にQRコードのついたバッジ配布し、私たちがお見せしたい9つのポイントを回っていただこうという試みです。各ポイントでは、IoTデバイスであるQRコードリーダーにバッジをかざすことで、閉域網を介してクラウドにそのデータが送られ、各人がどのポイントを訪れたかをチェック。すべてのチェックポイントを回られた方にはShowNetオリジナルステッカーを差し上げます」(NOCチームメンバー ジェネラリスト 渡邊貴之氏)
さまざまなビジネス分野で活用が期待されるIoTデバイスだが、セキュリティ面で十分な対策がとられておらず、不正アクセスの被害を受ける製品も少なくない。そこで、IoTデバイスを直接インターネットにさらすことを避け、安全性を確保した地域BWAによる閉域網を利用しようという提案だ。
次世代携帯電話網である5Gの基地局も、ShowNetのライブデモンストレーションネットワークに組み込まれており、実際に5Gの世界を体験することができる。
また、セキュリティの機能もさらに拡充。「エンドポイントのセキュリティから、企業で使うファイアウォールやサンドボックス、そして、通信事業者が使うようなものまで、すべての階層におけるセキュリティソリューションを体験することができるのも、ShowNetならではの魅力」と渡邊氏は語る。
自分に最適なソリューションが見つかる
NOCチームメンバー ジェネラリスト/ジュニパーネットワークス株式会社 渡邊貴之氏
1人情シスが話題になるなど、クラウド活用の進展とともに情報システム部門の人員削減が進んでいるが、情報シスの負荷を軽減するソリューションも数多く登場してきている。
「膨大なログの中から必要なものを見つけ出す、障害を検知して復旧させる、怪しいトラフィックを止める……。様々な分野で運用時の負荷を軽減するための自動化が進んでいます。これら自動化の進展も、今年のShowNetの見どころの1つだと思います」(遠峰氏)
ShowNetに来れば、きっと自分に最適なソリューションを見つけることができるだろう。