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角勝さんと語る「こんな会社辞めてやる!の前に試してみたい、ビジネス大変革期に生き残る組織・人材を作る方法」 「FINDERS SESSION VOL.4」動画・レポート
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  • 2019.02.07
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角勝さんと語る「こんな会社辞めてやる!の前に試してみたい、ビジネス大変革期に生き残る組織・人材を作る方法」 「FINDERS SESSION VOL.4」動画・レポート

「クリエイティブ×ビジネス」をテーマに新たなイノベーションを生むためのウェブメディア「FINDERS」が定期的に開催するトークイベントの第4弾「FINDERS SESSION VOL.4」が、9月25日に東京・中目黒の株式会社シー・エヌ・エスのコミュニケーションラウンジにて行われた。

今回は、企業の新規事業開発、オープンイノベーションなどに関するコンサルティングやワークショップを多数手がける、株式会社フィラメント代表取締役CEOの角勝氏が登壇した。

昨年8月に掲載した同氏のインタビュー記事「日本の大企業からイノベーションが生まれなくなった理由はほぼ解明できた」がFINDERS史上最大級にバズったことを受け、公開再インタビュー&質疑応答の実施を決定。

上記記事は主に日本企業の経営陣や、決裁権を有する部長クラス以上の問題点を明確に指摘したものだが、そうした記事に対してよく出てくるのは「批判はもっともだけど、じゃあこれからどうやっていけばいいんだよ」という疑問。それに応えるかたちで

・テクノロジーの進化が既存産業のあり方を劇的に変えていくなかで「日本企業が陥りがちな失敗」は何か

・そうした変革期において、どんな「人材」が必要なのか

・活躍できる人材を多数生み出す「組織」はどう作ればいいか

という話題を中心に語り合った。

文・写真:神保勇揮

角勝(すみ・まさる)

株式会社フィラメント 代表取締役CEO

1972年生まれ。公務員(大阪市役所)出身で、「大阪イノベーションハブ」の立上げと企画運営を担当。2015年、大阪市を退職し、共創による新規事業開発と組織開発・人材開発を行う株式会社フィラメントを設立。2016年には企業アライアンス型オープンイノベーション拠点The DECKの立上げにも参画し、他のコワーキング・コラボレーションスペースのコンセプトメイキングや活性化にもアドバイザリーを提供している。

20年の大阪市役所勤務を経て起業

角氏は大阪市職員として約20年勤務した後、2015年にフィラメントを起業。市職員時代の最後には同市のスタートアップ支援施設「大阪イノベーションハブ」の立ち上げと運営に携わった。

大阪イノベーションハブではGoogleやシャープ、また関西圏のテレビ局である毎日放送などとタッグを組んでハッカソンを開催している。この時の経験や人脈がそのままフィラメントでも活かされている。

「フィラメントという会社は設立日が4月9日、資本金が89円でして、2つつなげると“四苦八苦”です。89円なので当然1人でやっていこうと思って作った会社なんですけど、今はだんだんメンバーが増えていて、シャープのデザイン部長だった佐藤啓一郎さんが取締役としてジョインしてくれていたり、ヤフーの元執行役員で今はLinkedInの日本代表の村上臣さんも非常勤で手伝ってくれたりとか、チーフアライアンスオフィサーの留目真伸さんは元々レノボジャパンの代表をやられていて今は資生堂のチーフストラテジーオフィサーなんですけど、ウチのお手伝いもしてくれています」(以下、カギ括弧内はすべて角氏の発言を要約したもので、動画内で発言していないものも含まれる)。

フィラメントは年間50回を超えるオープンイノベーションイベントの企画に携わっているほか、企業・自治体向けの事業開発コンサルティングなどを主に手がけており、2016年にはオープンイノベーションのための拠点として3Dプリンタやレーザーカッターなども揃える、大阪市営地下鉄 堺筋本町駅直結のコワーキングスペース「The DECK」の開設にも全面的に関わっている。

「VUCA」の時代に存続が危ぶまれる企業とは

最初のトークテーマは「VUCA(ブカ)の時代に企業が注意すべきこと」。VUCAとは

・Volatility(変動性)
・Uncertainty(不確実性)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧性)

という4つの単語の頭文字を取った用語。急速なIT技術の発達とそれに伴うイノベーションの進行により、ビジネスに限らず社会全体の今後の見通しがほとんど予測不可能になった状態を指している。

「今の時代は誰もが発信者、メディアになれる時代だし、それがグローバルにつながって著しく均質化もしている。要は変動パラメータが多いということですが、言い換えれば多様性があるということだと思うんです。その変動の可能性がたくさんある世界においては、その1つ1つをつぶさに検討していくための視点がたくさんあるということが大事なんです。でも今の日本企業に多様性があるんでしょうか?」

「大企業では空気を読むのが上手い人とか上司がこれをして欲しいんだなというのを忖度してパッと持っていく人が出世します。逆に空気を読まずにトゲのあることを言う人は脇に追いやられる。加えて、新しくアクションを起こす人よりも批判する人の方が賢く見えて評価されてしまいがちというところもありますよね。そしてとにかく色んな縛りが厳しい。あるいは縛りが厳しいと思い込んで動けなくなってしまう。FINDERSのインタビューでも話しましたけど、勤務中にSNSどころかネット検索も満足させないようなフィルタリングをかけている会社が結構あるんですよ」

こういった話はたしかに“大企業あるある”ではあるだろうが、新しいアクションを起こす人を排除し続けていると何が起きるのか。角氏は、自社の商品がまったく必要なくなってしまうような破壊的なイノベーションが起こった際、企業の存続すら危ぶまれてしまうこともあると指摘する。

「正常性バイアスという言葉を聞いたことがないでしょうか。自身にとって都合の悪い情報を無視あるいは過小評価してしまう性向のことで、地震・洪水などの災害時にも『今まで大丈夫だったから、この場所は安全だ』などと思いこんで逃げ遅れてしまうことがある。言い換えると人間はこれまでの経験あるいは現状をもとに判断してしまうので、経験のないことが起こると判断を誤ってしまうことがあるということです

「今起こりつつある変化の例でいうと、自動運転車の社会実装が挙げられます。その時代にユーザーが求めるのは移動する能力そのものであったり、その際に生み出されるプライベートな時間や空間だったりする。つまりモノとしてのクルマや“運転する楽しさ”といったものに対するニーズが大きく減る可能性があり、さらに自動運転車の普及によって渋滞や事故がなくなったり物流コストが大幅に下がったりすると『人間のドライバーが混じっているのは迷惑だ』ということにすらなりかねない。多くの会社員は多かれ少なかれ自社商品にプライドや愛着を持っているでしょうが、そうでない視点の意見も取り入れられるような企業風土がないと、社会が大きく変革した際に誤りを犯してしまうんです

不確定・不安定な時代に必要な人材とは

では、そうした時代に対応すべく企業は一体どうすればいいのか。角氏は高い専門性を有するスペシャル人材だけでなく、多様な考えがあることをキャッチできるアンテナを持ち、社内外の豊富なネットワークを有し、企業内の同調圧力に屈せず未来を見据えたアクションができる「ハブ人材」の育成をより積極化すべきだと語る。

こうして要約するとまるでスーパーマンのようにも聞こえてしまうが、もちろん1人が全要素を兼ね備えていなければならないわけではない。角氏は変革の荒波を乗り切った企業の例として、スイスの時計ブランド「ゼニス」の例を挙げる。

「ゼニスはもともと機械式時計の駆動部分である『ムーブメント』を含め一貫して自社生産するマニュファクチュールと呼ばれる職人のメーカーで、昔から好きなんですよ。ただ、1970年代にクォーツ式の腕時計が登場して、こっちの方がより正確でしかも安いということで、機械式時計のメーカーは大打撃を受けました。ゼニスも経営難に陥り、アメリカの会社に買収されて『機械式時計の設計資料や製造資材を全部売るか廃棄するかしろ』と命令されていたんですが、さらにその後、伝統的な意匠とかモノとしての良さみたいな観点から機械式時計のリバイバルが起きるんですよ。その時、シャルル・ベルモさんという技術者が図面や金型を密かに保管していて、彼のおかげでゼニスは機械式時計ブランドとして復活することができました」

「何が言いたいかというと、時代の変革期に組織が下す決定は短期的な視点でなされることが多くて、そのさらに未来の常識にそぐわないことも多いんです。単に社命に背けばいいというわけではありませんが、会社で想定していないリスクを考えて行動できる、そのために必要な情報を持っている、あるいは外部に頼れる人がいるかが大きな差を分けるんです

「ハブ人材」を組織的に育成する方法

では、会社組織としてハブ人材を生み出しやすくする、あるいは育てられるようにするためにはどうすればいいのか。

角氏は「人間の心には質量、重さがあり、他人の行動を促す、あるいは変えるためには、できるだけそれを軽くしてあげる必要がある」と説く。

「新しいことをやる時には動き出しが大変とか、動き出したら出したで方向変換ができないっていう経験が皆さんにもあるんじゃないかと思います。慣性の法則と同じように人の心にもバイアスがある。これを僕は“慣性バイアス”と呼んでいます」

「人間は基本的に対人コミュニケーションを欲する生き物です。そうであるがゆえにコミュニケーションを起点として行動変容をしやすい。例えばYahooでは“1on1”という面談を全社的に行っています。これは1周間に1度、上司が部下と30分面談をして、そこで聞いた部下の経験や情熱がどこにあるのかを見つけて背中を押す。本間浩輔さんの『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(ダイヤモンド社)という本に詳しい内容が書かれています。僕らフィラメントの事業としては“事業発想エクササイズ”というワークショップをよくやるのですが、これはテーブルごとに参加メンバー一人ひとりが自分の語れるものや自慢したいものを1分間アピールし続け、その後に周りの人が3分間褒め続けるという内容です。自慢すると称賛される、その体験をすることによって、自分の行動を軽くしていく。人間の心の重さをまずは理解して、その上で対抗策として燃料をくべるようなポジティブなコミュニケーションのサイクルを組織的につくっていく。それが結果ハブ人材の育成にもつながりやすい環境づくりになるんです

その後、話題は「社内に多様な経験・人脈をフィードバックさせる」という観点からの副業の意義、少子高齢化がますます進む中で、「意味もなく続いている、生産性を押し下げるような慣習・マナーをなんとなく強要するのは勿体無い」といったかたちで展開。質疑応答でも「自分のいる組織で今日の話を応用するにはどうすればいいか」などかなり実践的で参加者の熱量がうかがえる内容が見受けられた。

「世界を変えるイノベーション」が多数登場するようになった世の中であっても、そうした製品やサービスを利用するのは個々の人間であり、本格的な社会実装に向けては政府・自治体などの“(ときには自分たちを理解してくれない)人”とのすり合わせが必須となる。大きな状況を変えるためにこそ目の前の物事をしっかり解決していく必要がある。そんなことを改めて実感させられた回だった。


2月13日(水)にFINDERS SESSION VOL.6を開催!参加無料ですのでぜひ起こしください。

【2/13(水)・参加無料】FINDERS SESSION VOL.6 田崎佑樹さん(KANDO)と語る「世界を変えるテクノロジーにこそ求められる、優れた人文科学・ビジネスプランとの融合」

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