CULTURE | 2022/06/16

モデル兼環境アクティビストの小野りりあんさんと、ユトレヒトの社会科見学をしてきました【連載】オランダ発スロージャーナリズム(44)

ヨーロッパではすっかりコロナ明けになったかのようなムード。特にオランダでは、もう街でマスクをしている人は見ませんし、コロ...

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ヨーロッパではすっかりコロナ明けになったかのようなムード。特にオランダでは、もう街でマスクをしている人は見ませんし、コロナが理由の制限も無くなりました。感染者が何人いるのかも全く注目されなくなり、ニュース報道もほぼ無くなりました。

ということで、少しずつ観光も復活。特にヨーロッパ内での移動はほぼ制限がないので、元に戻った感じですが、唯一見かけないのはアジア人観光客。たまに目にすることはあっても、残念ながら日本人はほとんど見かけません。

そんな中、モデルで環境アクティビストでもある小野りりあんさんが、地元市民がサステイナブルの活動や取り組みにいかに関わっているのかを視察する目的でオランダ・ユトレヒトに遊びに来てくれました。

今回は、まだ観光ができない日本の皆さんへ、サステイブルな観点から見たユトレヒトの街をご紹介します。

吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

コロナ禍においてもますます進んでいるサステイナブル

小野りりあんさんのInstagramより。動画内ではもう少し詳しく説明をしているので合わせてご覧ください

世界中がネットでつながっているとは言え、2年間も国際的な行き来がなくなっていたので、実はみなさんが思っているよりも世界の国々は変わっているかもしれません。ことサステイナブル関連のトピックについて、特にここオランダは、この2年の間にいろいろなことが進行しました。

まず街で目にするのは電気自動車(EV)の多さかもしれません。今や、オランダでは時と場所によってはEVの方が多いのでは?と思うような状態になっています。

テスラは当然として、フォルクスワーゲン、BMW、メルセデス、アウディ、オペルといったドイツ車をはじめ、ルノー、ボルボなどの電気自動車も多く走っています。そしてこの2年間には韓国車の電気自動車を非常に良く見かけるようになりました。

それに反比例するように見なくなってきたのが、残念ながら日本車。電気自動車で先行していた日産は、ゴーン元会長が逮捕されたうえに海外逃亡するという前代未聞の事件を起こし、それ以降ブランドイメージも低下。すっかり見なくなってしまいました。EVが主流になりつつあるので、ハイブリットもシェアが低下。トヨタの車も残念ながらすっかり見る機会が減ってしまいました。

1980年代から自転車とグリーンが増えたオランダ。りりあんさんが立つ場所もかつての車道で、今は自転車道。過去との比較写真はこちら

日本にいるとちょっと考えられないような状況でしょうし、かつて海外のどこに行っても日本車が走っているのを見て嬉しくなった人も多いのでは?と思いますが、それも今は昔になりつつあります。

EVが発達しているので、充電スタンドも至る所で見るようになりました。しかも、大体の場合は、駐車場の中で一番良いところに充電スタンドがあります。つまり、EV専用の駐車場で、停めている間に充電できる、というわけです。街の至る所にできた充電スタンドも、いろいろな種類が出てきています。こんなのも日本ではあまり目にしない光景かもしれません。

そうそう、ユトレヒトでは公共交通機関はすでに全て電化しています。電気バスや電気トラムに加え、例えば市役所の車もEVに。ほとんどのバス停においては、屋根が緑化されて、花が咲きミツバチが飛び交っています(東京でも、こうしたバス停があると聞きましたが)。

ユトレヒト、いやオランダでは、当たり前の風景ですが、町中に張り巡らされた自転車道路。こちらはコロナ禍中にパリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークなどの大都市がこぞってレジリエンスのある街を目指す。という方針を決めて、オランダの自転車道を参考に取り入れようという動きがあるようです。

ちなみに、EVがもっとも普及していると言われるノルウェーでは、ガソリン税が徴収できなくなって、今や国の財政が困っているというニュースを目にしました。サステイナブルな着眼点で街の様子を見てみると、そんなところまで影響が出てくるということが分かって、興味深いかもしれません。

図書館にはその街の性格が出る!?

こちらは、ユトレヒトの街の真ん中にある図書館です。りりあんさんは、「知らない街に来たら、必ず図書館に行く」と言っていました。ということで、ユトレヒト図書館へ。元郵便局を改装してできた、立派な図書館。子どもたちにも大人気です。

その秘密は単純に本が並べてあるだけではなく、こんなちょっとした遊び場も併設されています。こんな歴史的な建物の中にある、ちょっとミスマッチな感じの遊具。市民みんなに愛されている秘訣でもあります。

建物自体は古いものではありますが、本の貸し借りは全て自動。イベントも数多く開催されており、訪れた時は羊毛を使った洋服作りの紹介や、羊毛がいかに地球に良いのか? なんてイベントをやってました。

学生街でもあるのでいつも学生で満席ですが、そんな場でもサステイナブルに関して学べる施設が多くあります。若いときからこういうことが身近に触れられる環境があるのも、この街の特徴です。

ぜひ、ユトレヒトにいらした時は、図書館を覗いてみてください。

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