LIFE STYLE | 2021/12/23

100億円以上の脱税で摘発も。加熱するライブコマースの「有名インフルエンサー頼み」を乗り越える、新たな販売テクニック【連載】中国ウォッチ・ナウ!(3)

「独身の日」ライブコマースで莫大な売上を記録した李佳琦(Austin)と薇婭(viya)
たった一人で1日1400億円...

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「独身の日」ライブコマースで莫大な売上を記録した李佳琦(Austin)と薇婭(viya)

たった一人で1日1400億円も売り上げた記録を持ち、時には約6億円のロケットを2時間で完売させるライブコマースの女王が先日脱税で約240億円の罰金を課されたことが話題となった。裏を返せば日本でも売上倍増の新たな秘策となるこの方法、ライブコマース先進国の中国で何が起きているのか?日本ではどんなチャンスがあるのか?

荒木大地

Shenzhen Fan Founder

深セン最大級の日本人情報サイト深セン最大級の日本人情報サイト「深セン ファン」(www.shenzhen-fan.com)管理人。 Webエンジニア兼ライター、また講師として中国・テック関係の情報を発信中。合計3000を超えるメンバーを抱える中国各地の渡航情報共有グループチャットの運営も行っている。
Twitter : @daichiaraki

売上新記録を達成した中国最大のセールイベントのカギはライブコマース

毎年大きな話題となる、中国最大の値引きセール「独身の日」(11月11日)。2021年は中国の大手2社(アリババ/JD.com)だけでも売上高が15兆円を超えるというとんでもない記録を樹立した。

ネット通販(EC)といえば、日本ではアマゾン、楽天、Yahoo!ショッピングなどが有名だが、中国と日本の大きな違いは「ライブコマース」に力を入れているという点が挙げられる。

ライブコマースとは、「KOL(キーオピニオンリーダー)」と呼ばれるインフルエンサーなどが視聴者に商品をライブ動画を通して紹介する販売手法のこと。日本では「ジャパネットたかた」のようなテレビショッピングが近いイメージだが、ライブコマースはネット視聴者のコメントにリアルタイムで答えることができ、数タップで購入まで誘導できる。なおかつ商品の残り在庫数なども画面に表示されるので、視聴者にとってはつい買ってしまう要素が満載である。

中国のライブコマース市場は1兆元(約17兆円)の規模に成長している。例えば「口紅王子」とも呼ばれるトップインフルエンサーの李佳琦(Austin)氏と、「ライブコマースの女王」薇婭(viya)氏は、タオバオの独身の日セール商品の予約販売が始まった10月20日だけでそれぞれ80億元(1400億円以上)を売り上げた。

1が4つ並ぶことから認知され始めた11月11日の「独身の日」だが、以前は独身の若者たちがパーティを開く程度のものだった。それに目をつけたアリババが大規模な販促イベントを開催したことでセールの意味合いが強くなった。

アリババでは「ダブルイレブン/双11」とも言われるこの大セールに合わせて、消費者は予約販売されている商品を11月11日より前にショッピングカートに入れる。そして11月11日当日にそれらを決済するため、この1日の売上額は毎回新記録を達成していた。「11月11日に売上新記録を達成」の報道の裏側にはこのようなからくりがある。もちろんサーバのトラフィックも膨大だが、アリババのサーバーはそれにも耐え得ることを証明する良い機会にもなる。

2020年からは少し様子が変わり、物流インフラなどへの圧力を緩和するために11月11日の当日に行われていた決済方法を変更。11月1日から3日までの注文を第一弾の決済として、そして11月11日の決済を第二弾の決済として2回に分けるようになった。

また今後は中国でのライブコマースのあり方も大きな変化があるかもしれない。12月には先述の「ライブコマースの女王」こと薇婭(viya)氏が約6億4300万元(約115億円)の所得隠しで摘発され、追徴課税や罰金などで計13億4100億元(約240億円)の支払いを命じられた。他のトップインフルエンサーに対しても同様の追徴課税や罰金が相次ぎ、今後もプラットフォーム含め中国当局の「共同富裕」スローガンに基づく規制強化が予想されている。彼らがライブコマースを制覇する構図に変化がみられ始めているが、海を渡るとこんな桁違いのニュースが話題になっていることに驚く方は多い。

そこで気になるのが、日本でもこのスタイルが通用するのか?という点である。

コロナ禍で各国との自由な往来が難しい中、新たな販路として、また副業としてライブコマースに活路を見出したいが、どうしていいか分からない人も多いのではないだろうか。

まず、ライブコマース先進国の中国で今何が起きているのかを見てみよう。当記事では中国でのライブコマース成功事例や課題、そして日本でライブコマースを成功させる秘訣についても取り上げる。

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