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「日本一働きがいのある大企業」を作り上げた20年の試行錯誤。シスコシステムズに訊く、社員が会社を好きになる方法
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  • 2021.09.08
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「日本一働きがいのある大企業」を作り上げた20年の試行錯誤。シスコシステムズに訊く、社員が会社を好きになる方法

「好きなアイドルが結婚して仕事に手が付かない」を上司に報告できる?

―― これらの理念はいずれも大切なことですが、社員一人ひとりが「うちの会社は本当にこういう文化があるんだよな」という実感が伴わなければ空文化してしまう恐れもあります。その部分についてはどのような取り組みをされているのでしょうか?

宮川:その通りです。当社の人事評価の例で言うと、

・Results(期待された成果を出せたか)
・Principles/Behaviors(組織のビジョンに沿った行動ができたか)
・Team Impact(チーム・組織へ貢献できたか)

の3つの指標を使っています。

昇進するためにはこれらの指標全てが重要で、「他人を蹴落とし、自分の営業成績だけアップさせるような人は評価しません」というメッセージを常に伝えています。

―― ResultsとPrinciples/Behaviorsについては個人単位で実現可能なことも多いですが、Team Impact、つまり「(短期間で)チームや会社に評価される行動」の総数はそこまで多くないのではとも感じます。取り合いのようなことになってしまわないのでしょうか?

宮川:まずこのTeam Impactはチームに対して自分がどう貢献しているか、を計る指標です。そこにはたくさんの側面があり、確かにチームインパクトをビジネス成果という側面だけに限定してしますと、確かに職種によっては総数が決まっているものというものは出てくることもあるかと思います。とはいえ現代の仕事は非常に複雑化しているので、最初から最後までたった一人で完結できる仕事もそこまで多くないと思うんです。

今回の取材でも、同席する広報担当者が日程のすり合わせや会議室の予約などをしてくれています。そうした働きもきちんと評価に入れるということで評価項目を増やしていけるという考えです。

また、Team Impactの項目は業務だけを評価しているのではありません。当社では社内のダイバーシティを推進するための6つのグループがあり、参加は任意ですがそういった会社全体に対してカルチャーをよりよくしていこうという活動も評価対象となります。

例えば「Woman of Cisco」は女性活躍を推進するためのグループで、時には業務時間も使いながら草の根的にこの会社をより良くするために何ができるかを考え日々活動しています。

―― なるほど。確かに「取材を受ける会議室を予約した」という行動はチームのためになっていると誰しもが思うでしょうが、あまり評価項目を細かくしすぎても報告・チェックともに大変になってしまわないでしょうか。具体的にどのような仕組みになっているのですか?

宮川:まず、大前提として当社では上司・部下間の頻度の高いコミュニケーションを重要視しています。その中で上司に毎週の週報を提出するのですが、前週の振り返りでは以下の4項目を入力してもらっています。

(1)あなたは毎日自分の強みを発揮しましたか?
(2)あなたは大きな価値を発揮しましたか?
(3)先週エネルギーを得た出来事は何ですか?
(4)先週やる気を削がれた出来事は何ですか?

各項目を5段階評価で入力してもらい、自由解答欄もあります。次の質問項目は「今週の優先すべき業務」で、ここで上司から「仕事に余裕があるならここを手伝ってもらえないかな?」と相談できるようになっています。最後は「どのようなサポートが必要か」という項目で、部下から上司へのお願いを記入できます。これらの項目を上司との1on1で話し合っていくという流れです。

ここで一番重要なのが「前週の振り返り」の4つの質問です。どの数値をつけたかそれ自体はさほど重要ではなく、前週から上がった・下がった場合に「何があったんだろう」ということに気づけることに意味があります。口頭で言うほどではないけれど…ということでも時間を置いて文章でなら書けることもあると思いますし、過去の記録も見られるようにしています。

加えて、「エネルギーを得た出来事」「やる気を削がれた出来事」は業務以外のことを記入することも推奨しています。例えば「パートナーと離婚の危機にあります」といった状況に陥ってしまった場合、100%の力を発揮するなんて無理ですよね。「社員のモチベーションやエンゲージメントを高めることが重要だ」と考えた際に、社内でプロフェッショナルとして働いている姿はごく一部でしかなくて、業務外での出来事や価値観にも多分に影響されて個人が成り立っている以上、「会社での自分」以外の姿を言ってもらえる、チームが受け入れられる状態を作れてはじめて「そういう会社だから自分も貢献したい」というモチベーションを持ってもらえるのだと思うんです。

―― SNSなどでもよく「好きなアイドルが結婚報告したから仕事に手が付かない」といったことが言われますが、会社や上司からすれば「仕事なんだからちゃんとやってくれよ」と思う一方で、本当に落ち込んでしまうのも事実だったりしますよね。

宮川:手がつかなくても頑張ろうとする姿勢は当然持ってほしいですが、「そうなってしまったこと」は事実としてあると思いますし、向き合ってあげるということも非常に大切ですよね。

―― 「それを言えるぐらいの心理的安全性は必要だ」とは言えるということですね。

宮川:おっしゃる通りです。実際、この仕組みの導入当初は「上司に自分が嫌だったことなんて言えません」というフィードバックがかなりありました。とはいえ時間が経つと慣れてしまうもので、自然と運用ができています。

コロナ禍で完全テレワークという環境で、いかに会社と社員の信頼関係を構築するかというのは非常に重要なテーマだと思います。「社員がサボっていないか」といったところにだけしか目を向けないとなると、当然難しいわけです。

当社は「皆さんの安全と健康が第一のプライオリティです」というメッセージを出し続け、幸福学の先生を呼んだトークイベントやオンラインヨガ教室なども開きました。そしてまたトップから「皆さんの安全と健康が第一だからこそ、出社・出張の制限を厳しくします」とメッセージを発信する。そうした取り組みを繰り返すことで、毎年実施している社員のエンゲージメントに関する調査結果が2020年からむしろ良くなっていきました。

これまでは先ほどもお話しした通り在宅勤務をしたとしても週1日程度だったところ、コロナ禍により基本的に完全テレワークに移行してから「コロナ禍が収まった後、どのぐらいの頻度でオフィスに出社したいですか?」とアンケートを取ったところ、98%が「月4回以下」と回答していました。

「テクノロジー使って何ができるか」まで提案できる企業になりたい

―― 最後に、ここまでの知見を踏まえ、クライアント企業に対して今後どのようなソリューションを提供していくかというお話をうかがえますでしょうか。

宮川:当社はテクノロジーを売っている会社ではあるものの、それ単体ではなく「テクノロジーを使って何ができるようになるか」を含めてご提案できる存在でありたいと考えています。

今後、新型コロナが制御可能な状況が訪れたとしても、働く場所が必ずしもオフィスに限らない、ハイブリッドなワークスタイルは続くと予測しています。そうした中でセキュリティをどう確保するか、いかにオンラインで双方向で活発な意見交換を可能にするか、導入企業様にさまざまなアドバイスを差し上げる、当社製品を病院・教育現場などに無料で貸し出すといった取り組みも行っています。

―― 7月に始まったユーザーコミュニティサービス「Webex Connect – Japan」は、それに近いお取り組みなのではと感じました。

宮川:そうですね。我々もお客様から「導入はしたけれど使いこなせていない」といった声を耳にすることが少なからずあり、ユーザー同士の意見交換やTipsを共有できる場があると良いのではと思い発足しました。いずれは勉強会なども企画したいと考えています。

今後、オフィスと自宅などのハイブリッド勤務が広まってくると、例えば「このやり取りはオンライン会議をすべきかメールを送るかチャットツールで済ませるか」と選択肢が多くある中でどれがベターなのか迷ってしまう機会が多く生じてくると思います。あるいは「3人がオフィスの会議室、2人が自宅からオンライン会議で参加」という状況で、自宅にいる2人ともしっかり意思疎通を図るファシリテーションをどうすれば良いかというのも現代的な悩みだと思います。

当然ながら会社や部署によって何が正解かは異なるわけですが、重要なのはチームにとって最適な解は何かを「自ら考える」ということです。そのボトムアップを自発的にできる文化を醸成することがネクストステップして必要だということを最近感じておりまして、当社の取り組みとして何らかのアクションを進めていく予定です。


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