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悔しいほどワクワクしたパリ五輪の紹介映像。日本復活のためにお願いしたいたった1つのこと【連載】オランダ発スロージャーナリズム(36)
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  • 2021.08.17
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悔しいほどワクワクしたパリ五輪の紹介映像。日本復活のためにお願いしたいたった1つのこと【連載】オランダ発スロージャーナリズム(36)

Photo By Shutterstock

誘致段階から前代未聞の問題が起こり続けた東京オリンピック。かつて「疑惑の総合商社」という発言が国会でありましたが、今回のオリンピックはまさに「トラブルの総合商社」。次々と起こるトラブルをなす術もなく、ただ見守り続けていたのですが、コロナ禍により1年の延期を経て、「無事に?」というべきか、「なんとか?」というべきか、「とりあえず」というべきか…やっと閉会式を迎えました。無観客、そして日本への入国制限がありで、残念ながら、我々自慢の「おもてなし」を提供する場面もほぼ無くなってしまいました。

もちろん、引き続きのパラリンピックがあるわけで、まだまだ宴はたけなわ。できる限りの「おもてなし」を期待したいのですが、ひとまずここまでのところ、ボランティアを含め関わった皆さまは、猛暑の中、大変お疲れ様でした。そして「ありがとうございました」とお伝えしたいです。

吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

ムカつくほどにかっこいいパリ五輪の告知映像!

パリのデパート「プランタン」屋上からエッフェル塔をのぞむ。パリの街並みは、やはりヨーロッパ一の美しさ

筆者は広告代理店で約20年、クリエイティブ職での映像制作経験があり、代理店時代の先輩、同期、あるいは友達の友達、ちょっとした知り合いといった多くの人たちが今回のオリンピックには、なにかしら関わっています。そういう人たちの努力や苦労を間接的にも、直接的にも聞いているので、なかなかに言いづらいところもあります。その中にはズバリ、渦中のトラブルに巻き込まれてしまった人もいます。

が、しかししかし、やっぱりハッキリした方が良いのかな? と思ったのは、パリオリンピックの告知映像を見た瞬間でしょうか。もう悔しいほどのクオリティで「オリンピックってこうだったよね」「っていうか、こうあるべきだよね」「パリってやっぱりかっこいい!」なんていう期待感が自然に湧き上がってきてしまいました。自分にとっては開閉会式併せて最大の見どころというか、もう衝撃映像でした。純粋に見に行きたい!

この差は一体、何なんでしょうか…。

最後までテーマがまったく見えてこなかった東京オリンピック。当初のテーマであった東日本大震災からの「復興五輪」は、大惨事ではあるものの一国だけの事情をテーマにはできないということで、実は早々にIOCに否定されていたとも聞きますし(ただまったく聞いてないですよね?)「そもそもまだ復興が終わってない!」ということもあります。さらにこのコロナ禍で、「この期に及んで何からの復興だよ?」とか、大会委員長を含め、次々と変わる人事にテーマももみくちゃにされ、残ったのは、ツギハギだらけの文化祭のようなごった煮パフォーマンス。

対して、パリオリンピックの告知映像のムカつくほどの素晴らしさ。「コロナ禍からの復興を目指しオリンピックの持つ自由と平和を最大限に表現し、自由と愛と平和の都パリ全部をオリンピックの舞台としてスポットライトを当てて、みんなで待ってるよ!華の都パリで世界の平和の祭典をお祝いしましょう!皆さんをお待ちしております!」的な。

思わず、あまりにもパリオリンピックの告知映像と、東京オリンピックの開閉会式の差を嘆いてしまいましたが、実はこの感覚、普段ヨーロッパで仕事をしていても感じることがあります。

日本はG7から引退した国?

2020年に出版された、慶應義塾大学環境情報学部教授、安宅和人さんの著書『シン・ニホン』には、『米国の友人にあるパーティで言われたのだが、日本は現在「G7で初めて引退(retire)した国になった」と言われはじめているという』との記述があります。lOCのバッハ会長ではありませんが、コロナ禍で大変な中でもオリンピックをやり切った日本に対して何を言うのか? という感じがしなくもないものの、欧州で仕事をしていると思い当たる節は、実はかなりあります。

日本は「ものづくりの国」として世界で高い評価を得ていました。古くはいわゆる白物家電と言われる冷蔵庫や洗濯機、そしてパソコンやテレビ。つい最近まで、圧倒的な高品質を誇り、さらには故障しないなどと評価されて、世界を席巻していました。しかし今、欧州で日本製品を見かけることは、残念ながらほぼありません。

国内においても以前と比べると日本製品のシェアが減っている領域もあるかと思います。例えばスマホ。iPhoneが発売される以前は、それこそ日本の携帯はかなり普及していたのは記憶に新しいでしょう。ですが今や世界市場はおろか国内市場でも、日本メーカーの製品にかつての勢いはありません。

スマホ発売を機に、もう一つ激変が起こったのはカメラ市場。そもそもフィルムからデジタルへの移行が一つの契機ではありましたが、スマホ登場によりそれは加速し、いくつかのカメラメーカーやフィルムメーカーは消えてしまったところもありますし、残っているメーカーにとっても、いずれもビジネスのメイン事業にはなり得ない状態ではないでしょうか?

さらに、ここ2年ほどで欧州、特にオランダなど北ヨーロッパで急速に起こっているのが、EV、つまり電気自動車へのシフトです。

これに伴い、ものづくりの国日本の最後の砦かもしれない? 日本車までもが非常に影が薄くなってきています。日本にいるとあまり感じないかもしれませんが、EVの売上が非常に伸びているオランダにおいては、反比例して明らかに日本車の存在感が薄まってきています。EVに関しては、ほぼすべての欧州系のメーカーが本腰を入れて取り組んでいますが、欧州市場では韓国のEVの存在感も高まってきています。まだこちらでは見かけませんが、おそらく今後中国のEVも増えてくるでしょう。最近ではボルボ(実は中国資本)系列の新しいメーカーのEVを少し見かけるのですが、一部、中国で設計されているという話も聞きます。

こうした日本からのシフトは、上述の通りすでにさまざまな分野で起こってしまったことです。今はサステイナブルシフトと併せて、まさに自動車市場においても、このことが起こりつつあると感じています。日本が新型コロナやオリンピックで大変な思いをしている間に、世界ではものすごいシフトが起こっているのです。

こうした動きがさらに広まると、確かに「引退した国」と言っても過言ではないかもしれません。

次ページ:「引退した国」から復活するためにこそ世代交代を!

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