LIFE STYLE | 2021/08/17

悔しいほどワクワクしたパリ五輪の紹介映像。日本復活のためにお願いしたいたった1つのこと【連載】オランダ発スロージャーナリズム(36)

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誘致段階から前代未聞の問題が起こり続けた東京オリンピック。かつて「疑惑の総...

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「引退した国」から復活するためにこそ世代交代を!

街のいたるところで「未来を作る」取り組みが。写真はアムステルダムの海軍跡地を利用してできた実験的なエリア「Marineterrein」で行われた「スペーステックの技術が、サーキュラーリティをどう推進するのか?」というテーマのカンファレンスの看板

さて、オリンピックに話を戻します。「パリオリンピックは、肥大したオリンピックを開催都市の市民の手に取り戻すために、パリという街自体を会場と捉えて、市民も参加し楽しめるようにして世界からのアスリート迎える。自由と平和と愛の象徴である、華の都パリこそが、その地に相応しい。コロナ禍を克服して平和の祭典を、パリ市民とともに祝いましょう」こんなメッセージを映像から感じました。それはもう悔しいほどにカッコ良く、期待を持たせるものでした。

実際に閉会式を取材していた友人に聞いたところ「あのビデオが流れたとたん会場の雰囲気が変わった」と言っていました。残念ながら、それは遠く離れたオランダのTV画面からも十分に伝わりました…。

確かに、あのパリの映像は素晴らしかったのですが、おそらくこれが世界標準だと思います。コンセプトの立て方も上手いし、表現も洒落ている。期待感しかありません。閉会式でこの映像の前にあった「日本の公園」を表現したという、学芸会っぽいパフォーマンスとは雲泥の差がありました。空気が一変したのも納得です。出席していたアスリートたちが続々、途中で帰ってしまったのもしょうがないと思います。会場で寝転んだり、写真撮影大会になってしまったりというのもしょうがないでしょう。

開閉会式にまつわるゴタゴタがあったのは、今となっては日本国民全員が知っていることですが、それにしても「観光ができなかった選手の皆さんに、東京の姿を知ってもらうために公園を表現しました」というコンセプト。残念でならないし、それが世界に放送されてしまったという…。やっぱり、これは「日本は引退した国」ということを認めざるを得ないのでしょうか?

オリンピックの開閉会式くらいで、なにを大袈裟な?と言う声もあるでしょう。個人的にも、そんなに大袈裟に捉えたくはありません。いろんなゴタゴタあったし、しょうがないよね、と。コロナ禍だったし、しょうがないよね、と。

でも、この「しょうがない事情」はどの国でもつきもので、おそらくパリにだって色々あるはずです。

ただ、今までの日本だったら、この「しょうがない」は起こらなかった気もするし、もしかしたら、それはそれは鮮やかなリカバリーをしていたような気がします。2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップでは、台風上陸からの奇跡の復活試合開催を成し遂げ、世界中から賞賛を浴びたことは記憶に新しいはずです。この差は、なんなのでしょうか…。

思えば、国立競技場の設計案変更問題やロゴの盗作問題から始まった、今回のオリンピック。その後のすべての問題を、我々はただ黙って見守るしかありませんでした。でも本当に「見守る」以外にできることはなかったのでしょうか?確かに、SNSでは思う存分、批判や文句も言えたかもしれません。それが束になって、いくつかの問題のあると見なされた人事を変えることはできたかもしれません。ただ、果たしてそれが本質的な解決策になったのか?というと疑問も残ります。

そこで思うのは「これを期に日本全体で一気に世代交代ができないか?」ということです。確かに、我々には歳上を敬うという儒教的な素晴らしい伝統が文化としてあるのですが、そうした人たちが、この異様に変化スピードが早い時代についてこれていないのは紛れもない事実です。世界では政治の分野でもビジネスの分野でも、30代、40代、時に20代が大活躍しているではないですか。

外の文化を取り入れることが上手な日本ですから、これも取り入れませんか? 一気に、世代交代を進めませんか?

人生100年時代となり、いわゆる「引退」という概念も変化してきています。

今回のオリンピックを教訓として、引退から奇跡のカムバックに期待したいと思います。いや、世界で仕事をしている日本人として、奇跡のカムバックに貢献していきたいと思います。


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