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NFTアートの売買で問題になっているのがイーサリアムのガス代(GAS代、手数料)です。取引量が多くなると高額になるので、それをどのように回避するのかということで、世界でも大手のOpenSeaが、イーサリアムだけでなく、他のブロックチェーンにも対応するということが発表されました。OpenSeaが動き出すと、他のマーケットプレイスも追随するようになるでしょう。
一方で、日本の金融庁もNFTマーケットが拡大し、取引金額も高額になってきていることから、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」を発足しました。特にNFT市場での取引がマネーロンダリングに使われることを懸念しています。
今回は、現状のところ法的な規制もなく、自由に取引できるNFTアートでの危ういところ、そして、それを回避する方法はあるのか、そんなことを考えてみようと思います。
足立 明穂
ITトレンド・ウォッチャー、キンドル作家
シリコンバレーで黎明期のインターネットに触れ、世界が変わることを確信。帰国後は、ITベンチャー企業を転々とする。また、官庁関係の仕事に関わることも多く、P2Pの産学官共同研究プロジェクトでは事務局でとりまとめも経験。キンドル出版で著述や、PodcastでITの最新情報を発信しつつ、セミナー講師、企業研修、ITコンサル業務などをおこなうフリーランス。
NFTの大前提は、登録されているデジタル・データがオリジナルであること
NFTは『オリジナル』を証明するとは言っているけれど…本連載の1回目『なぜデジタルの「絵」が75億円で売れるのか?』では、下記のように書きました。
「NFTという技術が出てきて、インターネット上で公開しても、『オリジナル』のデジタル・データがどこにあるのかを証明することができるようになりました。」
このこと自体には、間違いはないのですが、『オリジナル』であることの証明には、大前提があります。それは、『登録されているデジタル・データがオリジナルであること』。
なんだか言葉遊びのようですが、アート作品をNFT化する場合には、その作品を作ったアーティストが登録しているということが大前提になっています。前回紹介したマーケットプレイスでは、nanakusaは審査があるのですが、それ以外では特に審査などはありません。良くも悪くも性善説に基づいていて、アーティスト自身が自分の作品をNFT化することになっています。
極一部ではあるのですが、他人の作品を勝手にNFT化して販売していたり、購入したリアルの作品を無断でスキャンしてデジタル化し、NFTアートとして販売していたりするケースも出てきています。
また、海外のアーティストが自分で描いたデジタル作品と言っているのを見ると、時々、明らかに『ウルトラマン』や『仮面ライダー』と思えるようなキャラクターを描いた作品がNFTマーケットプレイスで見ることがあります。
リアルな美術品の画廊や展示会では、キュレーターと呼ばれる人たちが専門家の目から作品をチェックし、アーティストについて調べるので、簡単には盗作や贋作が入り込むことはありません。
現時点では、NFTマーケットプレイスで審査をしているところは少数で、単にNFT化するだけであれば、マーケットプレイスを通さずに誰でもNFT化することは可能なので、いくらでも盗作や贋作に対してNFTというデジタル証明書を作ることは可能です。そして、厄介なことに、改ざんできないブロックチェーンと組みあわわったNFTを取り消すというのは、簡単なことではありません。
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