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「派遣社員だけテレワーク禁止」「求めたらクビ」は違法の疑いアリ。ブラック企業と戦うユニオン共同代表が語る実態と対策【特集】進まない・続かないテレワーク 2021年の課題
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  • 2021.07.07
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「派遣社員だけテレワーク禁止」「求めたらクビ」は違法の疑いアリ。ブラック企業と戦うユニオン共同代表が語る実態と対策【特集】進まない・続かないテレワーク 2021年の課題

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テレワーク促進に関する話題で避けて通れないのが「非正規社員に対するテレワーク差別」の問題だ。

単にテレワークを許可しないだけではなく、「正社員にテレワークをさせるため、出社が必要な仕事を全て非正規に担当させる」ケースも頻発し不満が燻っており、厚労省が作成した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」においても今年3月の改訂版で「非正規社員の差別があってはならない」という趣旨の文言が付け加えられている。

記事でも言及しているが「(緊急事態宣言の影響で)休業補償が受け取れなかったアルバイト」に関しては多くの注目と非難が集まり、そして今回お話をうかがった青木氏も含む合同労組(ユニオン)の尽力もあって解決に向かうケースも増えてきた。テレワーク適用を訴えて解雇された派遣社員が不服を訴えた裁判も進んでいる。

今回のインタビューでは、青木氏が共同代表を務める総合サポートユニオンが実施している労働相談窓口にどんな相談が寄せられているかという質問から始まり、「テレワーク差別」は違法なのかどうか、解決に向かうために必要なことは何かについてうかがった。

青木耕太郎

総合サポートユニオン
共同代表

1989年、千葉県佐倉市生まれ。3・11以降、仙台市で被災者の就労支援に従事したのち、総合サポートユニオンの共同代表となる。共著に『断絶の都市センダイ――ブラック国家・日本の縮図』(朝日新聞出版、2014年)。

聞き手・構成・文:神保勇揮

「正社員の出社仕事が全部押し付けられる」「信用できないからテレワークをさせたくない」

青木耕太郎氏

―― 青木さんが共同代表を務める総合サポートユニオンでは、テレワークに関する電話相談を受け付けているそうですが、どういった職種の方から、どんな相談内容が多いのでしょうか?

青木:「テレワークができる環境なのにできていない」という内容が多いので、デスクワークをする総務・人事系の人が多かったです。あとは本社ではなく支社・営業所の受付などをしている方も多くいらっしゃいました。

雇用形態として派遣が一番多くて、その他は直接雇用の契約社員やパート社員など非正規雇用労働者からの相談も多く、40~50代あたりの女性が多い印象でした。ただ、それは非正規比率が女性の場合は年齢が上がるごとに高くなるという統計があるので、必然的に割合として多くなるというところもあるかと思います。

どんな理由・経緯でテレワークをさせてもらえないかというと「どうしてもオフィスの中でしかできない業務があり、そうした仕事が全部非正規社員に押し付けられている」というケースが多いです。あるいは「派遣社員は信用できないからテレワークされると困る」というケースや「派遣先との契約で勤務場所がオフィスになっているからテレワークは不可」というケースも耳にしました。あとは上司が出社しないと気が済まないタイプで、正社員も含めてその部署だけ出社を強要されている例もあります。

―― Twitterでも「テレワーク差別」などと検索すると、確かにおっしゃっているような不満を少なからず見かけます。これまで東京では3回緊急事態宣言が出ましたが、その度に相談数や内容に変化はありましたか?

青木:やはり2021年1月、2度目の緊急事態宣言の時はグンと増えましたね。4月からの3回目の緊急事態宣言が出てからも同じぐらいの件数が続いています。去年の1回目は想定もしない出来事としてコロナ禍が起きたので、いきなり準備できないのは仕方ないかなという思いもあったと思います。ただ1回目から2回目までの間には半年以上ありましたし、その間に「テレワークできるようにして下さい」と訴えても無視されたことから、不満が高まっているということだと思います。

また、相談数はそこまで多くはないものの印象的だったのは「1回目はテレワークを許可したけれど2回目はさせない」という会社がそれなりにあったことです。それは「1回目はとりあえず緊急だしと認めてしまったけれど、よくよく考えたら非正規にはやらせたくなかった」ということですよね。

非正規社員にテレワークを認めないのは「違法の疑いが強い」

厚労省が作成した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」より。下線は編集部によるもの

―― 非正規社員にテレワークを認めない扱いは、何か法律に違反しているのでしょうか?

青木:断言はできませんが「違法の疑いが強い」とは言えると思います。

まず労働契約法第5条に基づく安全配慮義務違反の可能性という観点があり、契約内容に「テレワークができる」と明示的に書かれていなかったとしても、企業側は当然安全に働けるように配慮する義務は負っています。

もう一つは有期パート法(パートタイム・有期雇用労働法)の8条、9条に均等待遇規定があって、賃金面だけではなくかなり包括的な労働条件について均等に待遇しなさいとされており、それに違反しているのではないかということも言えると思います。

ただ、これらはあくまでも民事上の話ですし、まだ判例も出ていないので裁判を起こしてみないとわからないところもあります。2020年の後半に正社員・非正規社員間の同一労働同一賃金に関する最高裁判決がいくつも出たんですが、そこでは例えば扶養手当や年末年始勤務手当、夏季・冬期休暇などの待遇で差別をするのは不合理であるという結論となりました。いち労働者が最高裁まで粘るのは相当に大変ですが、そこまでやらなければ本当の意味で白黒つくことはない面もあるということです。

―― 実際、会社からテレワークを認められない非正規社員が、声を上げたい、アクションを起こしたいという場合、何から始めれば良いのでしょうか?

青木:まず一番直接的な方法で言うと、先程お話ししたような法的権利に依拠して、会社に対して要求することになると思います。安全配慮義務、差別待遇の禁止、そして今年3月に改定された厚労省のガイドライン(厚労省が作成した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」の改訂版において、正社員・非正規社員間でテレワーク差別を行ってはならないという項目が盛り込まれた)というような、自分が要求することの法的な正当性を訴えながら会社に対してテレワークの導入や差別の是正を求めると。

ただそれは個人で行うと訴えを軽んじられる、報復されることも多いので「労働組合法に基づく組合の交渉」という手段が存在します。交渉の機会を求めた場合、会社は応じなければいけない義務があるので、それを通じて交渉していくことが基本的な筋道だと思います。そのために我々のような組織もぜひ活用いただければと思います。

とはいえ、それでも会社から良い条件を引き出すのは簡単ではない現実もあるため、例えばネットやSNSでの世論喚起や、オンライン含めた署名運動も精力的に実施しています。

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