EVENT | 2021/07/06

「テレワークで社員監視ばかりするダメ上司」が生まれるワケ。部下を病ませもサボらせもしないマネジメントを考える【特集】進まない・続かないテレワーク 2021年の課題

特集記事【日本でテレワークが進まない「5つの要因」。経営陣・中間管理職・現場が明日からすべきことはこれだ!」はこちら
...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

特集記事【日本でテレワークが進まない「5つの要因」。経営陣・中間管理職・現場が明日からすべきことはこれだ!」はこちら

特集記事【「派遣社員だけテレワーク禁止」「求めたらクビ」は違法の疑いアリ。ブラック企業と戦うユニオン共同代表が語る実態と対策】はこちら

特集記事【産業医が警告!放置すると危ない「テレワークうつ」の実態と対処】はこちら

特集記事【「テレワークは出社時より生産性が落ちる」説は本当か?約800名テレワーク企業のCROが語る「仕事の本質」】はこちら

テレワークが可能な就業体制を今後を維持していくにあたって大きな課題のひとつが「部下・新人の育成を促進するため、上司はどう動くべきか」である。

これまでにように「とりあえずOJTで教えるから」というスタンスだけで、出社時にはあったフォローのための飲み会やカフェ雑談などが失われれば狭いワンルームに閉じ込められた新人は病んでしまうし、中堅・ベテラン社員に対してもマネジメント方法を変えなければ「最低限、自分の仕事だけは片付ける」という一人親方化がますます進行し社内に停滞ムードが流れ、「だったらもうテレワークを止めてまた出社することにしよう」と逆戻りすることにもなりかねない。

今回は日本オラクルで長年人材育成に携わり、独立後も多くの企業の新人研修・人材育成をサポートし、『これからのテレワーク』『テレワークで部下を育てる』の著書もある片桐あい氏に「テレワーク環境下でのマネジメントのコツ」について話をうかがった。

片桐あい

カスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役人材育成コンサルタント産業カウンセラー

日本オラクル株式会社サポート・サービス部門に23年勤務。コールセンター業務を経て、現場のリーダーへ。2009年からは、社内の人材育成の担当として「キャリアディベロップメント&トレーニング」という部署を立ち上げ、社員の育成を担当。延べ1500名のエンジニアの育成に携わる。グローバルのプロジェクトでエンジニアのトレーニングの開発のためのメンバーに選出され、各国の教育担当とカリキュラムを開発。卓越したコミュニケーション能力・問題解決能力を武器に2013年に独立し、企業研修講師となる。

聞き手・構成・文:神保勇揮

「出社しないと不安」な若手社員にどう安心してもらうか

片桐あい氏

―― 日本のテレワーク実施状況に関して、片桐さんの実感としてはどのように見えていますか?

片桐:外資はコロナ禍以前から整備が早かったですし、日系企業でも大手はIT系を中心に導入が進んでいるという印象を私も感じます。

そうした中でやはり一番動きが遅いのが行政、役所でしょうか。私もある地方自治体からテレワーク導入の相談をいただいたんですが、初回打ち合わせの時点で「Zoomが使えないので現地に直接来てほしい」という状態だったりします。

―― 導入前からそのスタンスだと、本当に推進できるのか心配になってしまいますね。

片桐:組織として何かしらのルールや制約があるということは理解できるものの、それを変えてのテレワーク導入なんですよね、という懸念はどうしても生まれてしまいます。

そもそもテレワークの導入自体、今は新型コロナの問題もありますが「まずは月に何度か、この部署限定で始める」というところから実験的に始めるのも良いと思います。例えば「この日はテレワークで書類作成を片付けたり、教育用ドキュメントを集中して作ろう」というような目的を定めたりしても良いでしょうし。

―― 「テレワーク環境で部下をどう育成するか」は大きな課題として立ち上ったように感じます。いくつかのアンケートを見ていても「テレワークより出社して働きたい」と感じる20代は結構多いですよね。

片桐:確かにそうですね。私が委託を受けて実施している新人研修も去年4月からほぼオンラインなんですが「上司や先輩たちの顔を見て仕事をしたいです」「同期と一緒に仕事をしたいです」という声を聞きます。そうした気持ちはわかりますし、例えば新人と教育担当者だけは出社するというようなルールも、組織できちんと話し合った結果の結論であれば良いと思います。

ただ、そうした中で「一度も出社しないけれど新入社員の教育をきちんと実行する」ということが絶対にできないのか、ということも一度きちんと考えてほしいと思います。実際に私が9名の新入社員を預かったある外資系IT企業では、OJTの担当の方がこまめに新人さんたちとコミュニケーションを取っていたのはもちろんですが「シャドーイング」と呼ばれる方法論を用いて順調に研修を進めていました。

これは顧客対応や取引先との連絡をする場合などにおいて、実際に先輩社員が今対応している内容に関して「自分ならどう返答するか」を考えてもらい、その後先輩社員の対応と照らし合わせて振り返る、ということを繰り返すものです。これを根気強く続けていくことで、その新入社員が扱う製品は結構知識が必要なものだったのですが、入社から9カ月後ぐらいには独り立ちできるようになっています。

―― やっていることはほぼ実際の業務と同じでしょうし、きちんとフィードバックができていれば効果がありそうです。

片桐:ただ、業務の習熟度と社員のモチベーションや人とのつながりを求めることはまた別の話ですよね。そこはやはりメンタル面のケアやコミュニケーションを密にしていくべきということで、会わないと決めた会社であれば会わないなりにどうしていくかについて知恵を出し合い、その方針に従ってベストな解は何かということをトライアンドエラーでやっていくことで、組織の最適解を見つけていくことが大切なんじゃないかなと思います。多くの企業はその方針が決められなかったり、社員の不満を不満のまま放置していたりするため問題が生じているのではないでしょうか。

次ページ ダメ上司の典型的な特徴:監視しすぎか丸投げしすぎ

next