文:滝水瞳
近年、世界各国で干ばつや大雨に見舞われ、気候変動をはじめとする環境問題の取り組みが急務となっている。
そんな中、アフリカの女性がプラスチック廃棄物を使用した強固なリサイクル製品を開発し、今世界中で話題となっている。
「もう傍観者でいるのは疲れました」
エンジニアで経営者のザンビ・マティーさん(29歳)は、東アフリカのケニア・ナイロビで、プラスチック廃棄物を使用した他に類を見ない強固なレンガを作る工場「Gjenge Makers」を経営している。手掛けるレンガは、一般的なコンクリートの5〜7倍の強度があり、住宅の庭や道路の敷石など、さまざまな場所に利用が可能だという。最も一般的なレンガは、1平方メートル当たり850ケニアシリング(約820 円)と、低価格で販売されている。
マティーさんは、プラスチック廃棄物と砂を混ぜ合わせて加熱し、圧縮する技術を開発。プラスチック独自の素材の特徴を生かし、コンクリートよりも割れにくいレンガを完成させた。さらに製造用の機械を設計したことで、さまざまな種類のプラスチックの混合が可能に。シャンプーのボトルに使われるような「高密度ポリエチレン」や、シリアルやサンドイッチなどのパッケージに使われる「低密度ポリエチレン」、またバケツやロープの製品にも使用される「ポリプロピレン」など、数種類のプラスチックが再生できるようになった。さらに、他のリサイクル業者が不可能としているタイプのプラスチックまでレンガに再生できるという。これまで環境汚染の要因だった大量のプラスチックが、マティーさんの手によって新たな商品へと生まれ変わり始めた。
一方で、経済的な社会貢献の側面もある。リサイクル業者からのプラスチック廃棄物は有料で買い取る他、これまで包装の工場などが廃棄物として捨てていたプラスチックは無償で受け取るため、双方向に有益なビジネスモデルとなっているのだ。
マティーさんは他人を当てにするのではなく、プラスチックの汚染問題を自ら解決しようと同工場を2018年に設立。「もう傍観者でいるのは疲れました」と『Reuters』に語っている。
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