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本業をこなしつつ海外でも大盛況、学ラン・ダンス集団「コンドルズ」メンバーが考えるワークライフバランス【後編】
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  • 2018.06.29
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本業をこなしつつ海外でも大盛況、学ラン・ダンス集団「コンドルズ」メンバーが考えるワークライフバランス【後編】

写真左から、オクダサトシ氏、古賀剛氏、橋爪利博氏

前編より続く)

新宿ゴールデン街にあるバー「DUME Bar」のマスター橋爪利博氏、外資系IT企業の日本法人で代表取締役を務める古賀剛氏、アートディレクター・森本千絵氏が主宰する「goen°」に参加するアーティストであり、山田洋次監督作品などに出演する役者でもあるオクダサトシ氏。

学ラン姿のダンス集団「コンドルズ」のメンバーは、今話題の“働き方改革”や“ワークライフバランス”を先取りするかのごとく、二足のわらじを自在に履きこなし、副業(本業)でも目覚しい成果を挙げている。

そして、栄枯盛衰の激しいパフォーミングアーツの世界にあって、結成22年目を迎えても、いまだに輝きを失うことのないコンドルズ。彼らは、いかにして時代の変化に対応し、新たな魅力を創造しているのだろうか。メンバーの思い描くコンドルズの将来像とは。前編に続き、コンドルズのメンバーだけが知る内部事情にも迫った。

聞き手:米田智彦 文・構成:伊藤僑 写真:神保勇揮

古賀剛

外資系ITシステム会社(ナスダック上場) 副社長 日本法人 代表取締役

筑波大学ダンス部出身。専攻は人間学。大学院はCity University London(Laban Center)で学ぶ。英・独・ベルギーにおける5年間のダンス留学を経て、あまたのカンパニーに振付出演。コンドルズ参加は98年から。トリッキーなダンス、パフォーマンスが持ち味。英語、仏語の達人で、オープンカー狂い。

オクダサトシ

美術家・役者

東京藝術大学大学院で油画専攻(芸術学修士)。99年からコンドルズ参加。演者としては体重120キロの巨体を活かした破壊的なステージングを得意としており、作品中の映像作品、小道具、美術なども担当する。野田秀樹作演出NODA・MAP「パイパー」、山田洋次監督作品「家族はつらいよ」などに客演。

また、アーティストとして「goen°」に参加し、2017年発売のKIRIN「若葉香るホップ」「夏冴えるホップ」のパッケージイラストを担当。人気上昇中のアートユニットのATGを主宰。プロレスマニア。元女子美術大学非常勤講師。

橋爪利博

新宿ゴールデン街のバー「DUME Bar(ヅメバー)」マスター

新宿ゴールデン街のバーのマスターも務める。早稲田大学第二文学部卒。97年からコンドルズに参加する。神懸かり的なズッコケぶりで舞台に花を添えるキャラクターとして人気。野田秀樹作演出NODA・MAP「パイパー」に出演。小説執筆にも精力的に取り組み、インディーズ映画の脚本なども手がけている。

副業ケース3:森本千絵さんの「goen°」でアーティスト契約

オクダサトシ氏

―― ところで、オクダさんは美大出身ですよね。

オクダ:東京芸大の油画専攻を出たんですが、バブルの頃だったので就職に焦ることもなくのんびりしていたところ、早稲田学院高校の先生になったラグビー部の先輩に美術の非常勤講師の仕事を紹介されて、しばらくそれで食っていました。

―― ビールのラベルイラストとかも描いていらっしゃいますね。

オクダ:あれはgoen°経由での仕事です。最初は古賀も一緒だったんですよ。

古賀:実は、森本千絵さんの子供が生まれたので二人で顔を見に行ったんです。

オクダ:そうしたら千絵さんの旦那さんから「ちょっと今、会社が困っているから助けてよ」と声をかけられたんです。

古賀:私はオクダさんに「やればいいじゃん」と囃し立てていた側だったのに、なぜかビジネス面を手伝うハメになって。

オクダ:その1年後ぐらいに遊びにおいでよと言われて、ちょうど先生を辞めていたので、アーティスト契約というかたちでgoen°に入ることになりました。ちょうど今の代官山のオフィスに移った頃ですね。

古賀:最初に、ある幼稚園の仕事でオクダさんの絵を提案したんですね。それで、ワークショップをやってもらったりするうちに盛り上がってきて、goen°にオクダさんを入れちゃおうよということになった。

オクダ:純粋に「俺って絵を描けるのかな」って思いもあって、一日十何時間、毎日ずっと描いていたんです、アホみたいに。

古賀:すごい量が溜まっていたよね。

オクダ:goen°に入って、やっぱりお金は必要だなと思った。

古賀:50歳近くなって、初めて就職して、初めて厚生年金に加入したんだよね。goen°では何をしてるの?

オクダ:goen°では絵を描いてます。よく頼まれるので。

偶然が偶然を呼び、山田洋次監督作品に出演

―― オクダさんは山田洋次監督の映画『家族はつらいよ2』(2017年)にも出演されていますが、監督との出会いはどんな感じだったんですか?

オクダ:千絵さんの結婚式にコンドルズが呼ばれたんだけど、残念ながら本番と重なっていて行けなかったんです。そうしたら、奄美大島で披露宴をもう一回やるというので、俺と古賀ちゃんと近藤が家族で行ったんですよ。そうしたら、飛行機が着いてご飯を食べる時に山田洋次監督がいらっしゃって「あの大きいヤツはなんだ」みたいなことを話していて(笑)。

―― ビジュアル的なインパクトがすごかったんですね(笑)。

オクダ:それで千絵さんが紹介してくれたので夜の飲み会に行ったら、「山田監督が呼んでいる」と言われて。めっちゃドキドキして行ったら、なぜかメガネをいろいろかけさせられました(笑)。

古賀:その後、台風でまったく外に出られなかったので、コンドルズの3人で何かやってくれないかと頼まれたんですが、それなら監督が演出をすると言い出して……。

オクダ:できあがってみたら、(近藤)良平がいるのに俺メインの演出だったんです。

―― 惚れられちゃったんですね、監督に。

オクダ:その後、柴又でやる寅さん祭りみたいなのに家族で行った時に、松竹の人に呼び止められて監督にご挨拶に行ったら、「(女優の)風吹ジュンちゃんが、オクダくんのダンプにぶつかっちゃうんだよね」みたいな話をされて。何かと思ったら、すでに映画のプロットができあがっていたんです。

仕事とコンドルズ、両方やるから心身のバランスが取れる

―― 50歳近くになっても、ダンスや演劇に情熱を燃やし続けるのはすごいことだと思います。他に仕事を持っていて、それぞれ十分成功しているのに、皆さんはなぜコンドルズを続けるのでしょう?

オクダ:面白いからですね。あとは、お客さんがちゃんと入っていて、喜んでいただいていることが一番大きい。

古賀:大学の頃から知っているみんなと、バカな夢を見続けていたいのかもしれないですね。この前は、我々のレベルの団体では不可能なNHKホール公演もやらせてもらったし。

2016年6月にNHKホールで行われた「20周年記念超特別大感謝公演」。チケットは即日完売したため、同年9月に追加公演も実施された。

オクダ:十数年前にやった渋谷公会堂公演もドキドキしたね。シアターアプルやコマ劇場、青山円形劇場がなくなる時にも公演させてもらった。

古賀:コンドルズにいると、海外公演をはじめ、いろいろな旅ができることも大きな魅力かな。 

―― 海外公演だと、拘束期間はどれぐらいになりますか。

オクダ:2週間ぐらいですね。南アフリカでやった時は2週間ぐらいかかりましたが。

―― その間、お店や会社はどうされるんですか?

橋爪:うちは休みです(笑)。売上が減って困るんですけど。

オクダ:でも大阪の年末公演には来なかったじゃん。

橋爪:だって、一年で一番売上が高い時期なんだから、そこは休ませてよ(笑)。

―― 古賀さんは、どんな理由で会社を休むんですか?

古賀:そもそも契約を結ぶ時に「コンドルズとgoen°をやっています」というのが大前提で、それでもいいですかと伝えたうえで合意しています。なので、絶対出なければならない会議などを除いては、基本的に事前調整ができるかたちですね。

―― 理解のある、いい会社ですね。

オクダ:働き方改革とか、ワークライフバランスとか、やっと世の中がついてきた感じですね。

古賀:今さらですよね。私はもう何十年もやっていますから。

橋爪:俺なんか、完全に昭和のブラック企業だから、週6出勤だよ(笑)。

オクダ:僕も、1人ブラック企業といったところです。

―― コンドルズに時代が追い付いてきた、みたいなところはありますね。

古賀:ワークライフバランスという意味では、仕事で追い詰められているときにはコンドルズの活動が面白くて救われたり、逆に、コンドルズの稽古や舞台がうまく行かない時には仕事でバランスを取り戻したりっていうことがありますね。

―― 仕事とコンドルズの両立がうまくバランサーになっているということですね。

「飲んで楽しい間柄」だけでやるから続けられる

オクダ:バランスの話をすると、最近コンドルズに若手がどんどん入ってきているんですよ。

今は全部で19名いて、30歳前後のヤツらもいるんですが、そいつらも平等に話せる場になっている。例えばアイデアを出し合う時にも、若いからと否定することはなくて、面白かったらすぐ使うし、僕らがせっかく出したネタでもパッと切られちゃったりする。

古賀:もう、クソミソに言われますから、我々も。

オクダ:特に古賀ちゃんはね。でも、そこがいいんですよ、入ってきた若い人が辞めたりしないのは、居心地が良いから。

―― 若い人が入ったりすることで新しい風が常に吹いているから、コンドルズはいつも魅力的でいられるんですね。

オクダ:固定メンバーで若さを売りものにしていると、歳をとってきた時にどうするってなりますよね。でも、若い人たちがどんどん入ってくれば、俺たちが老いぼれていっても大丈夫だと。

古賀:一時期、「コンドルズのメンバーはもうこの12人しかありえないだろう」っていう感覚だった頃があって、そのまま2年ぐらい続いていたんですが、勝山が突然「新しく1人入れる」と言い出して、みんなざわついたことがあった。

オクダ:そんなことしたら、他の誰かが削られるじゃないかって(笑)。でも、加入のプロセスはオーディションじゃなかったけどね。

――どうやって選考したんですか?

オクダ:飲んで面白いとか、飲んでみたら良いヤツだったとか、そんな感じです(笑)。でもこういうやり方だからこそ、居心地の良い場所として続いているんだとも思います。

―― メンバーには、ヨガ行者の方もいらっしゃいますよね。

オクダ:青田潤一ですね。あの人は、河合塾で小論文を教えている予備校教師です。もともとゴリゴリの学生運動の闘士だったのをやめてダンスを。

古賀:学生時代にメンバーの石渕(聡)さんの部屋に行ったら、青田さんと二人でドイツ語で哲学について議論していた(笑)。

お客さんも自分たちも飽きさせない公演を目指す

古賀剛氏

―― コンドルズの公演では、毎回同じ部分と違う部分がありますよね。

古賀:実は今、うちは4本ぐらいのパターンを考えてます。

群舞で全員踊るダンスも、面白いコントも、パフォーマンスもありますというのが王道で、これが全国ツアーとか海外でやるものです。それに対して「埼玉公演」というかたちで彩の国さいたま芸術劇場限定でやっている公演があるんですが、これは大きな劇場で贅沢な設備があるけどツアーで回す必要がないから、ちょっとコンセプチュアルにやっています。そして、ちょっと小さいハコで実験的なものをやっているのが、3つ目のチャレンジ。

オクダ:意外と実験的なものもちょこちょこやっているんです。

古賀: 4つ目がNHKエデュケーショナルさんとやっている「遊育(あそいく)」という子供たち向けのプログラム。

 あと、近藤が中心になってやっているハンドルズでは、埼玉の障害者の人たちと一緒に踊ったり、そのほかに盆踊りもやったりしていて、もう10年ぐらいやっている池袋の盆踊りは1万人ぐらいが集まるんです。

オクダ:というように、いろいろやっています。基本的には近藤が考えるんですが、合議制も成り立っていて、アイデアはみんなで出し合う。

―― 近藤さんの存在は、やっぱり大きいですか?

古賀:人たらしだから、彼が始めると盆踊りなんかでも不思議と続いてしまう。

オクダ:本人は何も考えてないけど、それぐらいの魅力はある(笑)。僕にとって彼は、家族みたいな感じですね。

―― 共同体なんですね。

古賀:もはや村ですよ。

オクダ:「アートしよう」とか「表現しよう」とかいうのではなく、「コンドルズで何かしよう」みたいな感じのまま20年続いている。

―― お客さんに楽しんでもらうことに関して、皆さんの意気込みはすごく強い。

オクダ:そこは強いです。

古賀:どんな手段を使ってでも。

オクダ:それなのに技術は磨かない(笑)。

古賀:体力も使わないという(笑)。

縛られないから辞める理由もない

橋爪利博氏

―― 皆さんはコンドルズを辞めたくなったことはないんですか?

橋爪:中には休業している人もいますが、今も。

古賀:縛られないから辞める理由がないんですね、多分。

―― みなさんは「ロックスター」という事務所のタレント扱いなんですか?

オクダ:一応そういうことにはなっています。

橋爪:でも、仕事が来た時に、取りまとめ役をお願いしているだけで、所属じゃないよね。

―― 海外公演もやって、大小いろんな会場でもやって、まだ企んでいることがあるんですか?

古賀:まだ、いろいろあります。

オクダ:そういうところは貪欲だよね。

古賀:さっき言った4本の道筋もそうですが、形と内容で、まだ無限の可能性があると思っているんです。

橋爪:だんだん歳をとって体が動かなくなってきても。

オクダ:以前、近藤がインタビューで言っていたんですが「70歳ぐらいになって、衰えてヨボヨボになっても、70歳なりのコンドルズができる」と。

―― ローリング・ストーンズみたいな感じですね。

オクダ:まさに。ストーンズはまだ走っているしカッコいいし。

古賀:歌舞伎で言ったら40、50代は若手ですからね。

―― お客さんの層も変わってきていますか?

古賀:昔からのお客さんもいますが、親子連れや若い人も入って来ていますね。

オクダ:遊育をやってからは、昔観に来ていた人が赤ちゃんを抱いて来てくれることもあって、うれしかったですね。

古賀:今回の「ダブルファンタジー」も、ゼロ歳児オーケーの回がありました。

オクダ:そうやって、お客さんの裾野を広げていきたいと思っています。


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