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「最善の選択」ではなかったジョー・バイデンが「結果的に大正解」と言える理由【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(20)
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  • 2020.11.16
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「最善の選択」ではなかったジョー・バイデンが「結果的に大正解」と言える理由【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(20)

駄々をこねるトランプを無視し、淡々と仕事を進める姿に好感集まる

このように情熱的に選ばれた大統領ではないが、今になって「結果的にバイデンで良かった」「バイデンは、予想していたより良い大統領になるのではないか」という人が増えている。

まず、予備選のディベートで自分を個人攻撃したカマラ・ハリスを副大統領候補に選んだことで、「個人的な感情を交えずに最も良い人選をすることができるリーダー」ということを民主党支持者に印象づけた。高齢者のバイデンがすべての問題を自分で解決する必要はない。独裁的だったトランプ政権にひっかきまわされたアメリカでは、優れた人物を重要な職につけ、その人達が良い仕事ができるような環境を作るようなリーダーシップが強く求められている。

次は、選挙に負けた現職統領が、証拠もないのに「選挙不正」を訴え、敗北を認めようとしないという前代未聞の出来事に対するバイデンの対応だ。

アメリカの大統領選挙では、大手のテレビ局や新聞社がそれぞれの方法で当確を発表する。最終的にフロリダ州での537票差でジョージ・W・ブッシュ勝利になった大接戦の2000年の大統領選を除くと、複数のテレビ局が当確を発表した時点で敗者が勝者に祝福の電話をかけ、勝者は勝利宣言スピーチを行う。勝者はスピーチで戦った相手を褒め、敗者は敗北宣言スピーチで勝者を讃えて自分の支持者をねぎらう。これが、アメリカ大統領選での伝統的な「紳士・淑女的なふるまい」なのだ。

ところが、トランプ大統領は、すべての大手メディアがジョー・バイデンの当確を出した後でも「不正選挙だ」と主張して敗北を認めようとしない。フロリダ州の結果にすべてがかかっていた2000年のブッシュ対ゴアの選挙とは異なり、獲得選挙人数で306対232という明らかな勝利だ。そして、「不正」の根拠や証拠がないことは、トランプがお気に入りのFOXニュースも報じているし、トランプ自身の弁護士がペンシルバニア州の判事に語っている。多くの訴訟を起こしているが、証拠がないので次々と却下されている。それでも、「不正だ」と主張し、敗北宣言を出さないことで次期も大統領を継続するかのような態度を貫いているのだ(11月16日時点)。

通常なら、今は国防や国政についての重要な情報の引き継ぎをスタートしなければならない時期である。大統領選中にどんなに激しい戦いを繰り広げても、結果が決まったら、アメリカと国民のために力を合わせるのがしきたりだ。けれども、トランプとトランプ政府はそれをブロックし続けている。

選挙の前からトランプは「不正の可能性」を匂わせ、「平和的な引き継ぎ」の約束を避けてきたから、それ自体は意外ではない。アメリカの政治を長く見てきた者にとってむしろ意外だったのは、バイデンの「大統領らしさ」だった。

バイデンは、若い頃のイメージのように怒りを口にしたり、失言をしたりせず、駄々をこねているトランプを徹底的に無視している。そして、即座に各種専門家を集めたCOVID-19タスクフォースを作り、トランプの元で働いた国防総省の職員から過去4年の情報を集めるなど、次期大統領(President-elect)として淡々と仕事を始めている。

引き継ぎをしないことで、国防が脆弱になることを案じる人は少なくないが、4年前まで副大統領を務め、その前に36年間上院議員を務めたバイデンは、すでに多くの知識と人脈がある。欠けているのは過去4年間だけだ。本人が老いていても、次期副大統領のハリスはシャープだし、実際に仕事ができる専門家に任せることに長けている人物だからアメリカは困らない。

そんなバイデンのdecentさに従うかのように、保守の重鎮たちも、少しずつバイデン擁護の発言をするようになっている。

トランプやその支持者がどんなに暴言を投げつけようと、冷静に「私は、自分に投票していない国民のためにも働く」と国をひとつにすることを呼びかけるバイデンは、混乱している現在のアメリカにとって、村の長老のような心落ち着く存在になりつつある。


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