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「悪魔化」した安倍晋三は歴代トップ。総理大臣がネット上で存在感を発揮するための必須条件とは?【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(15)
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  • 2020.09.01
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「悪魔化」した安倍晋三は歴代トップ。総理大臣がネット上で存在感を発揮するための必須条件とは?【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(15)

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中川淳一郎

ウェブ編集者、PRプランナー

1997年に博報堂に入社し、CC局(コーポレートコミュニケーション局=現PR戦略局)に配属され企業のPR業務を担当。2001年に退社した後、無職、フリーライターや『TV Bros.』のフリー編集者、企業のPR業務下請け業などを経てウェブ編集者に。『NEWSポストセブン』などをはじめ、さまざまなネットニュースサイトの編集に携わる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)など。

政権批判で存在感を失う野党

安倍晋三氏が総理大臣の職を辞任することを発表した。私個人の感覚でいえば、「自民党も民主党も散々1年で辞める総理だらけだった中、よくぞ8年間近く総理であり続けたよな」と、その点だけは評価している。

何しろG7サミットでも存在感を出せた総理など、小泉純一郎氏と中曽根康弘氏以外47歳の私は知らないからだ。常におどおどして、ホスト国である時以外は集合写真では隅っこに写る総理を見続けてきただけに、安倍氏のあの堂々とした様子にはホッとしたものだ。

「モリカケ・桜、説明しないまま去るのか!」なんて言いたくなるかもしれないが、敵を倒すには、より魅力的な政策を出すべきなのに、野党は政権批判こそ自らの支持率を上げるはず! という手を長年にわたり使い続けた。なんだか「政策のプロ」というよりは「糾弾・重箱の隅をつつくプロ」といった印象を与えてしまったのである。

「攻めることによる政権交代」って古臭い手法なのよ。後に籠池夫妻を野党は英雄視し、長男が「野党は両親を利用した!」などと異議を唱える、といったよく分からん展開になったし。結局「悪魔の証明」で無駄に国会の時間を使っただけじゃないの?

ただ、河井夫妻の件については、徹底的に追及すべきだ。選挙の買収疑惑については、大問題とすべきである。

鳩山由紀夫はネットのおもちゃに

鳩山由紀夫のAA(アスキーアート)

さて、平成の時代、ネットが一般に普及した後(2000年~)の総理のネット上の評価ってどのようなものだったのか。分かりやすい評価を全員分してみる。

◆小渕恵三:「平成おじさん」を経て「冷めたピザ」となった。そして沖縄サミットを契機に2000円札を発行したが、その後急死したというイメージ。娘は群馬の地元民を東京で観劇に連れて行き公職選挙法違反の疑惑が出たが、秘書がドリルでハードディスクを破壊させた小渕優子。調整型としては優秀だった、との説もあるが、在任期間が短すぎて評価はしづらい。

◆森喜朗:「神の国」発言で批判に晒され、さらにはクリントン・米大統領に対して「Who are you?」と言い、クリントン氏が「I’m Hillary’s husband」と答えたところ、森氏は「me,too」と言った、というトンデモ都市伝説を出された。しかし「森氏だったら言いかねない」といった評価をされた。その後も東京五輪やラグビーW杯などをめぐり「老害」扱いをされ続けた。小池百合子氏とのバトルでも名高い。

◆小泉純一郎:北朝鮮の拉致被害者5名を奪還した功績、「郵政民営化選挙」「自民党をぶっ壊す」などの「ワンフレーズポリティクス」で話題に。ネットでもそれなりに高い評価。ただし、その後の「脱原発」ではまったく支持されず。

◆安倍晋三(第一次政権):「美しい国日本」で、保守派からの圧倒的な支持を得た。だが、持病の潰瘍性大腸炎で辞任せざるを得なくなり「悲劇の宰相」扱いに。左派からは「お腹が痛いのね、よしよし」のように扱われたり「下痢晋三」などと揶揄された。

◆福田康夫:官房長官としての冷静なイメージが強かったが、総理になる。面白みがあまりないと思われていたが、退陣会見では記者に対して「あなたとは違うんです!」と発言し、これが人気のAA(アスキーアート)に。

◆麻生太郎:漫画が好き、べらんめぇ調口調で保守派からはネットで人気となったが「カップラーメンの値段を知らない」「漢字が読めない」などでメディアから叩かれ、その後は選挙で大敗し、政権交代を許す。

◆鳩山由紀夫:政権交代後初の総理として期待を集めたが米メディアからは「ルーピー」と呼ばれたり、沖縄に対しては基地問題で「最低でも県外」と述べたり、「トラストミー」と米国に言うなど、二枚舌外交がアダに。ただし、批判的なネットの反民主党政権派からは散々「やる夫」をベースとしたAAを作られ、「ネットのおもちゃ」としての人気度で言えば歴代No.1に近いかも。

◆菅直人:元々は薬害エイズや「O-157騒動の際のカイワレ大根を食べて安全性アピール」など、厚生大臣としてそのイケメンっぷりが人気があった。だが、東日本大震災の際の首相だったため、「現場を混乱させた」「活動家上がりには首相はできない」など散々な言われよう。運がなかった。また、サミットでも「ぼっち」姿が目立つ結果となった。

◆野田佳彦:意外と評価が高い泥臭く、バランスに富んだ「どじょう総理」。安倍氏の挑発に乗り、解散総選挙に打って出て惨敗。

◆安倍晋三(第二次政権):とにかく左派からは徹底的に悪魔化・独裁者扱いされた人物。「アベガー」という言葉を生み出し、何かと左派から叩かれ続けた。選挙に勝ちまくるも、この様は「一強」「独裁」と言われるほか、「アベ政治を許さない」とやたらとカタカナで呼ばれる人物だった。

こうしてネットが普及して以降の総理を見てきたが、存在感を発揮したランキングトップ3を挙げるとこうなるだろう。

【1】安倍晋三
【2】鳩山由紀夫
【3】麻生太郎

3位については麻生氏と小泉純一郎氏で迷ったが、まだ小泉氏の時代はそこまでネットが普及していなかったほか、麻生氏はネットが普及した後も何かと存在感を出し続けたため、小泉氏は【4】となる。

その意味では森喜朗氏もそこそこ存在感はあった。【5】と言ってもいいだろう。「森元首相」と書かれることが多かったため「森元」というあだ名もついたほどだ。

次ページ:首相がキャラ立ちしているほど、ネット上の政治議論は盛り上がる

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