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なぜ「映画祭はオンラインで完結すればいい」では困るのか【連載】松崎健夫の映画ビジネス考(22)
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  • 2020.07.31
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なぜ「映画祭はオンラインで完結すればいい」では困るのか【連載】松崎健夫の映画ビジネス考(22)

映画祭は映画人同士の交流の場

また映画祭は、映画を鑑賞するためのだけの場ではない。作品を出品した監督や出演した俳優たちの交流の場にもなるからだ。例えば、西島秀俊は第6回東京フィルメックスで審査員を務めた時に、イランのアミール・ナデリ監督と出会ったことが『CUT』(11)出演のきっかけだったと述懐している。このような映画人同士の交流エピソードは枚挙にいとまがない。映画人同士の出会いの場が設けられないオンラインでの開催は、そのような繋がりによって製作される映画の機会が失われることが危惧される。

映画祭が開催されなければ「マーケット」の規模も自ずと縮小される。場合によってはオンラインでの開催になって、ビジネスとして映画に関わる人たちの交流の場が失われるのだ。そして、知られざる良質な作品との出会いの機会が減ることとなる。また、映画人同士の交流も生まれず、当然、そこから派生した作品が生まれることもない。「それは映画に関わる人たちの勝手でしょう」と思う方もいるかもしれないが、このことは結果的に観客にとって「面白い」と思える映画に出会う機会を減らすことにも繋がるのだ。評論家やライターたちだけでなく、実は映画ファンもまた、配給会社の人たちが厳選し、熱を持って買い付けた作品を観ているからにほかならない。それゆえ、オンラインではない、フィジカルな場を持つ映画祭が、<映画>そのものにとっても重要なのである。

新型コロナウィルスの世界的な感染拡大によって、多くの新作映画は公開延期を余儀なくされている。先日も、今夏公開から冬公開に延期された『トップガン マーヴェリック』(20)が、2021年7月2日へさらに公開延期することが発表され、映画興行に混乱を与えている。映画祭ではないが、世界で最も権威があるとされる映画賞「アカデミー賞」の授賞式も、2021年2月28日の予定を、4月25日に延期する決定が成された。こちらもオンラインでのヴァーチャルな開催になるのか、あるいは、実際に会場で開催されるかに関しては今のところ未定となっている。そして、動画配信で初公開された<作品>(あえて<映画>ではない点がポイント)も候補の対象となるよう、ルールの変更が示唆されているという変化も見いだせる。

コロナ禍は、人々の生活様式にも変化をもたらしたが、<映画>のあり方においても変化をもたらしている。7月、イタリアのヴェネチア国際映画祭とカナダのトロント映画祭、アメリカのニューヨーク映画祭とテルライド映画祭が協調体制を敷くことが発表された。各々の映画祭がライバルとして競争するのではなく、お互いが協力することで団結する。このことが、不寛容な傾向にある国際情勢において、ポジティヴなメッセージを発信することに繋がればと期待するばかりだ。


参考文献

・FESTIVAL DE CANNES 

・GALACOLLECTION「ヴェネチア国際映画祭」 

・WE ARE ONE A GLOBAL FILM FESTIVAL

・東京国際映画祭「We Are One: A Global Film Festival 21の参加映画祭と東京国際映画祭のプログラムが決定!」

・Hulu「無料配信決定!ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020」

・『CUT』西島秀俊インタビュー

・Variety「Oscars 2021 Pushed Back by Two Months」(2020年6月15日)

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