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過去20年「変われない日本」だったからこそ、「アフターコロナ」の希望がある(前編)【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(0)
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  • 2020.04.17
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過去20年「変われない日本」だったからこそ、「アフターコロナ」の希望がある(前編)【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(0)

「アベというフタ」の功罪とは?

―― そうしたお話を踏まえて第二次安倍政権以降の7年間を振り返ってみると、今までにないレベルのムチャクチャな所業も多数あった一方、株価と就職売り手市場は維持してきたのも事実です。そうした「経済は順調っぽい」というムードの中で「パワハラやセクハラを止めよう」「LGBTに関する理解を深めよう」ということを一部のリベラル層だけでなく社会全体で考えられる余裕もあったのかな、ということも思ったりします。

倉本:なるほど、あまりそういう視点で考えたことはなかったですが、ツイッターを拝読する限りバリバリの左翼の神保さんがそういうことを言うと説得力がありますね(笑)。

グローバル経済の容赦ない競争圧力にも“ある程度”対処しつつ、それが破壊してしまう日本ならではの良さをなんとか“誤魔化し誤魔化し”守りつつ、しかもLGBTの権利やパワハラやセクハラをやめよう的なムーブメントにも“そこそこ”対処しつつ…と全方位的にいろんなものをやりくりしてきたので、「グローバル経済至上主義者」からも「LGBTやフェミニズムといった新しい社会運動の支持者」からも「日本主義者」みたいな人たちからも、それぞれどの立場から見てもほんとうに中途半端で不満が溜まる時期だったですよね。

ここのところの難しい構造が、安倍政権に対する非常に難しい感情的対立につながっているんですよね。物凄く嫌っていて諸悪の根源だと思う人たちもいれば、なんだかんだ言って5割弱の人は安定的に支持していて選挙にも何度も勝っている。

個人的には安倍氏が嫌いな人が嫌う理由もすごいわかるんですが、過去20年間のグローバリズム的圧力が「日本的な良さ」を崩壊させようとするエネルギーは物凄かったので、とりあえず「アベというフタ」をして自分たちのコアの部分を崩壊させないように維持しておくことを最優先にしよう…という日本人の集団的無意識の決断の結果が、「知的な個人主義者」の一部の人たちからすると心底許しがたい長期政権ということだったと私は思っています。

もちろん、そのシワ寄せを受ける立場の人のことがあるので、手放しに最高というわけにはなかなか言えませんが。

ただ、「あたらしい意識高い系」が育ってきて、長所と短所が表裏一体であり、欧米的価値観から一方的に断罪するのではなくて、現地現物に自分たちの良さを時代の変化の中で伸ばしていけばいいのだ…という機運は徐々に高まってきていると私は感じています。

そうやって「あたらしい意識高い系」のムーブメントが育っていけば、「アベというフタ」をしてあらゆる変化を押し留めておく必要性が根底的になくなりますから、「反アベ」の人たちにとっても受け入れやすい社会に変えていくことは可能だと思います。

ネットでこういうことを言うと「反アベ」の人たちから「さっさと死ね」的なメールが送られてきたり、「絶対こいつはアベから金もらってる」とか言われたりするんですが、そのあたり、別にいますぐ僕の言っていることを受け入れてもらえなくてもいいんですが、考え方としては理解してもらって、いずれ一緒になって「あたらしい意識高い系」のムーブメントで日本をよりよい国に変えていく動きを起こしていければいいなと思っています。

これから日本は、ちゃんと「あたらしい意識高い系」が次々と現れてきて、世界中でどうしようもなくなってしまったその分断を超えていくようなビジョンを提示していく国になれますよ。

インタビューの後編で詳しくお話しますが、たとえば日本の製造業の現場とかでは、ちゃんと「インテリな人」と「現場っぽい人」がうまく長所を活かし合って活躍している文化が生き残っている。

世界のテクノロジー的な変革が、「重さのないIT」の世界から、徐々に「重さのある世界とITとの相互作用」が主戦場になってくる今後の時代には、そういう「2つの世界を分断しない、お互いの良さを発揮できる」ような日本スタイルの変革のあり方が、世界の新しい希望になるという道は開けていると思います。

それは社会全体の運営としても重要なことだし、目先の経済運営的にも、その「両方の力を吸い上げられる」スタイルの必要性が増してきているからですね。

だからこそ、過去20年間の流行にはあえて乗らずに、「変化できない国」としてグズグズしてきた日本だからこそ可能な、「2020年代以降の繁栄の仕方」ってのは必ずあります。

今までの日本の「変われなさ」に不満をつのらせていた人たちにも、ちゃんと「あたらしい意識高い系」的な視点から活かし合う変革が起きてくれば、むしろ願ったり叶ったりでその変化の中で腕を振るう充実感を感じてもらえるようになると思います。

メディアの流行とはかなり違う方向性で20年間地味な模索をしてきた経験から、そういう新しいビジョンを示す連載にできたらいいなと思っています。

ちなみにここまでの話で興味を持っていただいた方には、今年出した「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」を手にとっていただければと思っています。「みんなで豊かになる」という人類永遠の、しかし叶わずにいる目標に近づいていくためにはどういう考え方が必要なのか、について、「経営コンサル」的な実地の話と、「思想家」的な広い視野からの捉え直しを往復しながら浮かび上がらせていく内容になっています。


後編はこちら

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