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「ニッポンのサラリーマン」を超絶技巧のパフォーマンスで表現。大阪で『CLONES』を仕掛けるZero-Tenの狙いとは
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  • 2019.12.11
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「ニッポンのサラリーマン」を超絶技巧のパフォーマンスで表現。大阪で『CLONES』を仕掛けるZero-Tenの狙いとは

Copyright(C) 2013-2019 Zero-Ten All rights reserved.

取材・文:6PAC

松本一晃(マツモトカズアキ)

株式会社Zero-Ten プロデューサー

2006年より、主に福岡の大型商業施設「キャナルシティ博多」のイベントプロデューサーとして従事。 サーカスや音楽ライブ、プロジェクションマッピング、イルミネーションなど、さまざまなイベント企画演出を手掛ける。

サーカスアクロバット×日本漫画のアニメーション×電子音楽

2020年2月7~11日に、大阪のCOOL JAPAN PARK OSAKAで上演されるのが、『CLONES(クローンズ)』という日本発アニメーションサーカスだ。世界で活躍する日本人パフォーマーたちによる「サーカスアクロバット×日本漫画のアニメーション×電子音楽が融合した新感覚ジャパニーズサーカス」という触れ込みのノンバーバルショー(言葉不要のショー)である。

企画演出およびプロデュースを担当するのは、九州の福岡市に本社を構える株式会社Zero-Ten(ゼロテン)。情報化社会に翻弄される現代日本のサラリーマンをテーマにした『CLONES』を仕掛ける同社の狙いを担当プロデューサーの松本一晃氏に訊いた。

株式会社Zero-Tenの松本一晃氏
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―― 『CLONES』は、具体的にはどういった内容のサーカスになるのでしょうか?

松本:『CLONES』は、メインアクターであるパントマイムアーティスト「KAMIYAMA」が、2000年に上演したソロ舞台作品「CLONE'S・Lot-No.0067」をサーカスバージョンにリメイクした舞台です。“働きすぎる日本人サラリーマン”が情報化社会に翻弄される姿をモチーフに構成しています。今回のリメイクによって、サーカスアクロバット、映像演出、音楽演出が加わった舞台となりました。 

―― 『CLONES』は、ノンバーバル・ショーですが、公演場所は日本国内です。海外で活躍する日本人パフォーマーは、英語が苦手でも文字通り言葉不要で魅せる・楽しませる芸を持つ人が多いですが、日本国内でのショーをあえてノンバーバルにした理由をお教えください。

松本:原作となる「CLONE'S・Lot-No.0067」自体が台詞なしのパントマイム作品だったという経緯もありますが、今回の『CLONES』でも、国籍・年齢問わず楽しめるようにノンバーバルにしています。また、インバウンド向けのショーとしての狙いもあります。

―― 今回の大阪公演での主催は吉本興業株式会社、演出は御社、原作は吉本所属の神山一朗(KAMIYAMA)氏です。それぞれの役割分担を簡単に教えていただけますか?

日本パントマイム界の鬼才・KAMIYAMA。2008年にカンヌ国際広告祭(チタニウム部門、サイバー部門)でグランプリを獲得したユニクロのウェブ広告「UNIQLOCK」への出演や、数多くのテレビに出演
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松本:まずKAMIYAMA氏は仰るとおり、本人主演のソロ舞台作品「CLONE'S・Lot-No.0067」の原作者ですね。もちろんパフォーマーとしても出演していただきます。その原作をサーカスバージョンに企画・演出・構成したのが僕を含めた弊社ゼロテンのチームです。 

2016年に福岡の商業施設「キャナルシティ博多」でサーカス版『CLONES』を無料のショーとして上演したことがありまして、その際に大きな反響をいただいたので、今回は吉本興業を主催とし、有料のシアターショーとして展開する運びとなりました。全8公演で5000人の動員を目標としています。

―― 『CLONES』のここが見どころというポイントは?

松本:やはり、サラリーマンに扮してスーツを着たパフォーマーたちが繰り広げる、圧巻のアクロバットですね。また、今回の『CLONES』では、前述の2016年公演の時よりも映像演出を強化しています。イラストレーターのカネオヤサチコ氏とのコラボによる漫画テイストの映像演出、そしてリーマンテクノロックバンド「ANALOGIX」による音楽演出も見どころです。すべてがバランスよくダイナミックに構成されていて、迫力のあるショーとなっています。加えて、日本のサラリーマンがテーマのストーリーに、あえて世界各国で活躍中の外国人パフォーマーを入れることで、日本のワーキングカルチャーの異常さを際立たせる面白さがあります。 

日本でブレイクするためにも、海外での活躍を狙う

『CLONES』の出演者の一人で、世界が注目する日本人エアリアルアーティスト・品川ミズキ。2019年にフランスで開催されるサーカスの世界大会「Cirque de Demain」に出場し、日本人エアリアルアーティストとして初の快挙となるブロンズ賞を獲得(2020年のメインビジュアルにも起用が決定)。現在は世界のサーカスカンパニーからオファーが殺到し、「Cirque du Soleil」や「Cirque Éloize」「Les 7 doigts de la main」などの作品にも出演
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―― 日本のビジネス市場が縮小していく一方で、吉本興業は海外展開にも力を入れていますし、海外に活動の場を求める所属芸人さんも多くなっています。『CLONES』を仕掛ける裏側には、吉本的には海外でもブレイクしそうな芸人の育成や芸を披露する場の提供といった思惑があるかと思いますが、御社の狙いはどういったところにあるのでしょうか?

松本:ゼロテンは、キャナルシティ博多をはじめ国内外で世界のエンターテイナーを招聘したステージ展開や、さまざまなイベント、プロジェクションマッピング、舞台の映像演出などを手掛けています。キャナルシティ博多では無料ショーの上演が中心なのですが、そこで得た経験を基に、昨年からシアターショー制作に力を入れています。日本ではシアターショーを観る文化があまりないので、海外市場を狙った作品制作を行い、世界に発信していきたいと考えています。

また、日本のマーケットは、世界26カ国で公演実績を誇る和太鼓エンターテインメント集団『DRUM TAO』や、35カ国を超える世界各国で公演を行う『が〜まるちょば』のように、海外フェスでアワードを受賞するなど活躍した方の逆輸入パターンでブレイクする作品が多い傾向があり、そういった狙いも含めて海外発信を進めています。 

同じく『CLONES』の出演者、世界が賞賛する映像ディアボロアーティスト・望月ゆうさく。2015年にカナダ・ケベックシティで開催された、第68回目ジャグリング世界大会では総合優勝を果たす。2019年には人気オーディション番組のアメリカ版「アメリカズ・ゴット・タレント」に出場し、映像とジャグリングが融合した圧倒的なパフォーマンスで、審査員全員がスタンディングオベーションする高い評価を得た
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―― 御社ではコワーキングスペース&シェアオフィス事業も展開されています。『CLONES』の企画・演出を行うにあたり、福岡オフィスに常時出勤しているメンバー以外に、海外在住のプロフェッショナルがオンラインでプロジェクトに参加したりしたのでしょうか?

松本:今回のプロジェクトでは、残念ながらそういった参加はありませんでした。しかし、弊社のグループ会社が運営するコワーキングスペース「The Company(ザ・カンパニー)※」は国内外に拠点があり、国内外問わずプロジェクトを展開しているので、今後はそういったことも考えられると思います。 

※「The Company」は、現在国内4店舗(福岡、熊本)、海外5店舗(セブ、シンガポール、バンコク、ハワイ)を展開しているコワーキングスペース&シェアオフィス。もともと株式会社 Zero-Ten(ゼロテン)が立ち上げて運営をしていたが、昨年事業を分社化し、現在は子会社の株式会社 Zero-Ten Park(ゼロテンパーク)が運営している。 

―― 御社には、「なにか面白いことをできないか」という漠然とした依頼も多く入ってくるかと存じます。そうした漠然とした依頼を具現化する上で重要なポイントは何でしょうか?

松本:弊社の場合は、「街を面白くする」というビジョンが根底にあるので、単純にひとつのネタとしてイベントを考えるのではなく「どんな仕掛けをすれば、もっと街が面白くなるか」を重要視しています。 

例えば、2017年に弊社が担当した福岡市大濠公園のライトアッププロジェクト(常設展示)は、公園内および「中の島」の夜間の治安向上と、福岡の新しい魅力作りとして企画したのですが、きっかけは「夜の大濠公園は暗いから明るくしよう」という単純な発想からでした。74基のLEDを島の東側約800mに渡って設置し、街中にいながら幻想的な世界観を楽しめるように演出しています。他にも国内外の事例をリサーチして、その街や施設、環境に合わせてイメージしていくことを心がけています。 

2つ以上の言語が飛び交う街は発展するはず

―― 御社の公式サイトに「福岡から世界へ」という文言が記載されていますが、具体的に福岡をこういった街にしたいというビジョンなどはあるのでしょうか?

松本:弊社が目指している街のイメージは「国際化」と「多言語化」です。近年、福岡に移住する人も増えてきています。日本人のみならず、外国人ももっと増えて、さまざまな異文化がぶつかりあう仕組み、何かの流行が生まれそうなベースを作ることに興味があります。多言語化も同様で、2つ以上の言語が飛び交う街は発展すると信じています。例えばマイアミでは、英語とスペイン語が日常的に使われている中で、都市としてどんどん発展していると感じています。お互いの文化や言語を尊重しあい、その街の伝統や風土を守りながらも新しい文化を創り出すということを福岡の街でも実現したいです。 

ゼロテンは、アートやエンタメの領域に力を入れています。より多くのアートやパフォーミングアーツ(舞台芸術)などの芸術が福岡に溢れ、それらを自然に、身近に体験できる街に変えたいと考えています。福岡で勢いのある食文化とアートシーンを加速させて、化学反応を起こすといったような事も構想にあります。常に仕掛けを考え、街づくりに貢献する側でいたいと思っています。 

―― 『CLONES』を成功させた先には何を見据えているのでしょうか?

松本:福岡に劇場をオープンしたいと考えています。世界中のタレントが集まり、福岡のナイトシーンを象徴するようなショーを企画・演出したいです。その舞台を観るために国内外から人が集まる、という文化も育てていきたいと考えています。パフォーミングアーツや、食、アート、エンターテイメントなど、何かで成功したいという人々が「夢」を追いかけて福岡にやってくるようなムーブメントを作りたいです。 


株式会社Zero-Ten公式サイト

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    • テック×カルチャー 異能なる星々|深沢慶太|フリーライター・編集者
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