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文:櫻井哲夫
アナログレコードと聞くと、CDやストリーミングサービスに取って代わられた「過去の産物」というイメージを持つだろう。日本ではすっかり見かけなくなっただけに、そう思うのは当然かもしれない。
しかし、アメリカでそんな流れに異変が起きている。アナログレコードが息を吹き返しつつあるのだ。
全米レコード協会が独自予想
その根拠となっているのが、アメリカの全米レコード協会の発表。2019年、アナログレコードがCDの売上を超える見通しなのだという。
同協会によると、2019年上半期のアナログレコード売上は約239億円なのに対し、CDは約265億円。CDが上回る現状は変わっていないが、2018年からアナログレコードは12.8%売上が上昇しているのに対し、CDは横ばい状態だ。
しかもCDは2018年と比較すると3倍の勢いで減少しており、このままのペースが続けば、アナログレコードの売上がCDを上回る可能性が高いと全米レコード協会は予測している。
まだ確定というわけではないが、アナログレコードがCDの売上を上回る可能性はかなり高いといえそうだ。仮に予測通りになった場合、1986年以来33年ぶりの出来事となる。
アメリカでストリーミングが主流に
アメリカでアナログレコードが息を吹き返していることは事実だが、もちろん主流とはなっていない。ストリーミングサービスが多くの人々に支持され、利用者が増え続けている状況だ。
その勢いは凄まじいものがあり、現在SpotifyやApple Musicなどのストリーミングサービスの利用率は全体の62%とかなり高い割合に。一方、アナログレコードは売上を伸ばしている傾向はあるものの、全体で見るとわずか4%にとどまっている。ネットを介した音楽配信が、世界の主流になっていることは間違いない。
日本でもアナログレコードの売上が5年連続増加
一方、日本ではどうだろうか。日本レコード協会の発表によると、昨年のCDの売上がアルバム・シングルを合わせて1542億円、アナログレコードは21億円で、未だにCDがアナログレコードを大きく上回る状況だ。しかし、CDは年々売上が減少しているのに対し、アナログレコードは5年連続で増加している。
そして日本でも音楽配信が伸びており、売上は645億円と5年連続の成長。中でもストリーミングは前年比133%の349億円となった。日本の音楽デバイスとして君臨してきたCDは第一線を退きつつある。
日本ではアメリカのようにアナログレコードの売上がCDを上回る事態は当分訪れそうにないが、遠くない将来に訪れる可能性はかなり高いといえそうだ。
デジタル時代にアナログレコードが再評価
日本の音楽再生デバイスは昭和の時代、アナログレコードが主流で、その後テープに受け継がれ、平成に入りCDに移行。CDはテレビ番組とのタイアップなどで爆発的な売上を見せ主流になる。
ところがスマートフォンの普及などの影響で、音楽は「買うもの」から「ネットで聴くもの」へと移行しつつある。当然、役割を終えたアナログレコードやテープは片隅に追いやられ、ひっそり姿を消すことになった。
しかしそんな状況から密かにアナログレコードが息を吹き返し再評価。デジタル時代の出来事に、なぜか嬉しくなってしまう。全米レコード協会の予想通り、アメリカでアナログレコードがCDの売上を上回ることになれば、快挙といえるだろう。