鳥取に450人結集、"温泉文化"のユネスコ登録へ号砲となった全国初サミット
「温泉のあるところに争いは無い」。そんな言葉に象徴されるように、温泉文化には人々を結びつける力がある。2026年9月7日(月)、鳥取県湯梨浜町の「ハワイアロハホール」に全国から450人が集まり、「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録を応援する知事の会(会長:鳥取県知事・平井伸治)による「温泉文化・世界サミット」が全国で初めて開催された。
このサミットは、2025年11月28日に文化庁が「温泉文化」をユネスコ無形文化遺産の国内候補として決定したことを受けて企画されたものだ。目的は、日本各地に根付く温泉文化を学術的に価値づけ、2030年度の登録実現へ向けて国内外にその魅力を発信していくことにある。
会場では、平井会長のほか伊藤学司文化庁長官、赤羽一嘉・ユネスコ無形文化遺産登録推進議員連盟会長代行が挨拶に立ち、機運の高まりを印象づけた。閉会にあたっては平井知事と山本一太群馬県知事が「温泉文化」鳥取宣言を読み上げ、47都道府県が2030年の登録実現を誓う言葉が会場全体で共有された。
『テルマエ・ロマエ』の著者が"温泉文化アンバサダー"に就任、鳥取県職員はルシウスに扮した
サミットの目玉となったのが、漫画家・文筆家・画家のヤマザキマリ氏を「温泉文化アンバサダー」に任命する場面である。ヤマザキ氏は、古代ローマの浴場技師が現代日本の温泉にタイムスリップする漫画『テルマエ・ロマエ』の作者として知られる。平井会長から任命書を手渡されたヤマザキ氏は、講演やパネルディスカッションを通じて温泉文化の魅力を語った。
任命式では、映画版『テルマエ・ロマエ』で主演を務めた阿部寛さんに似ていると話題になった鳥取県職員が、浴衣姿の主人公・ルシウスに扮して登場し、会場を沸かせた。手桶に入れた温泉ミストが副賞として手渡される演出も加わり、行政の式典にありがちな堅さとは異なる、遊び心のある場面となった。
会場内には、続編『続テルマエ・ロマエ』とのコラボレーションによる複製原画展や、ルシウスと一緒に撮影できるフォトブースも設けられ、来場者は展示や写真を通じて温泉文化に親しむ機会を得た。
裸で湯に浸かる文化は世界でも稀——パネルが語った"温泉文化"の価値
講演では、温泉学会副会長の大川哲次氏が世界各地の温泉事情を紹介した。続くパネルディスカッションには、東洋大学国際観光学部の内田彩准教授がコーディネーターとして加わり、ヤマザキマリ氏、台湾・台中市温泉観光協会の洪明峯副理事長、温泉学会の大川哲次・茶山健二両副会長が登壇した。
議論では、裸のまま湯に浸かる日本の入浴文化が世界的にも極めて珍しいものであること、癒しを象徴する温泉には争いが生まれにくく平和的な価値を持つこと、そしてユネスコ登録によって温泉文化に学術的・国際的な価値づけがなされる意義について語られた。数字や規模を誇るのではなく、日常に根づいた文化そのものの価値を掘り下げる議論であった点が印象的である。
観光資源としてだけでなく、地域に生きる人々の誇りや暮らしを支える文化として温泉を捉え直す機会にもなった。次に温泉旅行を計画する際は、何気なく浸かる一湯の背景にある歴史や物語にも目を向けてみたい。
温泉文化・世界サミットin鳥取
開催日:2026年9月7日(月)
会場:ハワイアロハホール(鳥取県湯梨浜町)
参加者数:450名
主催:「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録を応援する知事の会(会長:鳥取県知事・平井伸治)
温泉文化アンバサダー:ヤマザキマリ
https://www.pref.tottori.lg.jp/321648.htm