斜度37度の超急勾配を一気に駆け上がる、究極の坂道スプリント
レッドブル・ジャパンは、2025年5月17日(土)、札幌大倉山スキージャンプ競技場にて、今年で8回目となるヒルクライムのスプリントレース 「Red Bull 400 (レッドブル・フォーハンドレッド)」 を開催した。標高差約130m、最高斜度は37度、ワールドカップでも使用されるラージヒルスキージャンプ台の超急斜面を駆け上がる 「世界でもっとも過酷な400メートル走」 だ。2011年にオーストラリアではじめて開催され、日本においては2017年からスタートしたレッドブルの人気名物イベントだ。(2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止)
ただ人気の名物イベントと言っても参加者にとっては、気軽に楽しむことができるような生やさしい競技ではない。それは昨年無謀にもチャレンジし、なんとか完走は果たしたものの、心拍数は190近くまで上がり、途中何度もリタイヤする理由を探し続けたFINDERS編集部の加藤 (♂・53歳) が身を以て体験している。ちなみに加藤の完走タイムは10分39秒、当然ながら昨年見事四連覇を果たした田中聖土選手の優勝タイム3分35秒16には遠く及ばない結果となったが、参加者には普段からトレーニングを重ねてきたリピーターや、トレイルランなどを主戦場としているプロのアスリート達が数多く参加している。
つまり、「素人は気軽に手を出すな!」 というイベントだと思う。(私見)
ということで、本年のエントリーは控え、大人しく大会の様子を見守るとともに、「昨年はなぜ参加してしまったのか?」 という自問とともに、参加した挑戦者たちに 「人はなぜこんなスキージャンプ台を駆け上がる?!」 といった質問を投げかけつつ、出走前後の感想などを伺った様子をお伝えしたい。

スキージャンプ台に挑む挑戦者たち
まずお話しを聞いたのは、札幌市内で看護師として働く相樂絵里香さんと、富居彩さん。初のチャレンジながら、お二人ともフルマラソンに何度も参加、日頃からランニングなどに取り組むアクティブな女性だ。今回の参加にあたってはスポンサーのJOY FITが提供した北海道内のJOY FITの施設を無料で利用できるキャンペーンを利用しトレーニングを積んできたという。相樂絵里香さんはなんと月間200kmを走破、富居彩さんもベビーカーに乗った娘さんに付き合ってもらい毎日も走ってきた。

次にお話しを伺ったのは、職場の仲間に誘われて初めてエントリーした札幌市在住の奥瀬一樹さん。若い頃はアイスホッケー選手として活躍し体力には自信があったが、最近の運動はゴルフぐらいとのこと。またありがたいことにエントリー後に FINDERSの体験記事 をご覧いただきレースをイメージ、目標タイム10分を目指すという。

さらにお話しを伺ったのは、大木美佳さん。モデルとして活躍する傍ら、東京ガールズコレクションのランニングチーム 「TOKYO GIRLS RUN」 への参加をきっかけに、トライアスロンや100キロマラソンを完走するほか、ランニングやフィットネス関連の仕事にも数多く携わっている。「Red Bull 400」 への参加は今回が初めてだが、来年度以降は決勝にも進出したいというステップアップも見据えてのチャレンジだ。

史上最大規模1,763名が参加!男子は田中聖土さんが5連覇を達成、女子も布施愛里さんが2連覇を達成!
ここで本大会の方に話しを戻そう。今大会では昨年の1,644名を大きく上回る1,763名が参加。またもや史上最大規模の開催となった。予選会はこの時期らしく爽やかで暖かい天候に恵まれたが、決勝を迎える頃には曇り空に覆われ風も強まるなど、かなり肌寒い中で行われた。
男子シングルでは、今大会最年少の16歳で初出場の鈴木嵩一郎さんが予選を1位で通過し注目を集めた。予選タイム上位30名で行われた決勝は、序盤は団子状態で互いに様子を伺いながらの展開となったが、コース中盤過ぎから田中聖土さんが徐々にペースをあげコース中盤過ぎから独走体制に。後続を一気に引き離し、そのまま加速しながら2位以下を大きく突き放す圧巻のリードでゴール。3分36秒のタイムで前人未到の5連覇を達成した。2位には予選1位通過の最年少参加の鈴木さんが入り、田中さんに迫る軽快な走りを見せ会場を沸かせた。


一方、女子シングルでは、2019年に韓国で開催された Red Bull 400での優勝経験を持つ韓国出身のHyunji KANGさんが予選を1位で通過。決勝でも驚異的なスピードでトップを独走していたが、ラスト100mで昨年の覇者 布施愛里さんが怒濤の追い上げを開始、ゴール直前の急斜面でKANGさんを抜き去り、昨年を上回る5分11秒のタイムで見事大会2連覇を達成した。

また、学生リレーには69チームが出場し、「東海fenix」 が、2分22秒で2連覇を果たし、全5種目のうち3種目で連覇が達成される大会初の快挙となった。
“世界でもっとも達成感のある400メートル走”を体感
さて、ここで出走前に話しを聞いた方々の走り終えた後の様子と感想もお届けしたい。
日頃からアクティブに活動している相樂絵里香さんと富居彩さんは、完走メダルを手に満面の笑顔で戻ってくると開口一番 「楽しかった!」 「サイコー!」 と連呼。トレーニングの成果がしっかりと現れた様子で、相樂さんのタイムはなんと7分18秒。初出場ながらあと2秒で決勝進出という好タイムをマークした。娘さんとベビーカーで練習を重ねた富居さんも8分18秒と好成績を残し、「今なら何でもできそうな気がする!」 と興奮冷めやまない様子だった。

続いて男子シングルの第3ヒートに出場した奥瀬一樹さん、9時半の出走ながら待ち合わせ場所のスタート地点に戻ってきたのは10時半近くとなっていた。どうやらゴール地点で動くことができなくなってしまったようだ。レース後1時間以上経って 「想像していたより1万倍ツラい」、「もう無理、何の余裕もない」 と声を絞り出したものの覇気がない。とはいうものの11分22秒で見事完走。アイスホッケーや長い社会人経験で培われた精神力で乗り切ることができたに違いない。

そして来年度以降も参加を表明していた大木美佳さんも、完走メダルを手に充実した面持ちで戻ってきた。感想を伺うと 「楽しかった!意外と平気だった!」 とあっさり。その後 「途中、四つんばになって昇っていたんですが、私の場合は2足歩行の方が楽で、かつ腕をよく振った方が上手く走れました。」 と、さすが次回以降を見据えたもはやアスリートらしいコメントを残した。ちなみにタイムは7分58秒の好タイム。しかし本人的には 「もっといけた!」 と感じているようで、今後は坂道ダッシュなどの 「Red Bull 400」 用のトレーニングも行っていくという。早くも来年の出場が楽しみだ。

「人はなぜこんなスキージャンプ台を駆け上がる?!」
レース全体を通じては、参加者のレベルも上がっているように感じられたが、話しを伺った富居さんや相樂さん、大木さんしかり、特に決勝に出場するような選手たちはこの日のために日々の努力を積み重ね、入念に準備してきたことが伺え、昨年気軽な気持ちで参加してしまったことに改めて自責の念を抱くことになった。
そして最後に話しを伺った皆さんに、「人はなぜこんなスキージャンプ台を駆け上がる?!」 と訪ねると、あと少しで決勝進出だった相樂絵里香さんは 「クレイジーになりたいから!」 と笑顔で答え、娘さんをお母さんに預け参加した富居彩さんは 「弱いから!強くなるため!!」 と力強く答えてくれた。
また、FINDERS的にアスリート認定された大木美佳さんは、「むしろ…何故レッドブルはこの競技を何年も続けているのか!!おかげで毎年チャレンジしようとしている私がいる!!」 とコメントを残した。
残念ながら、辛うじて完走を果たした奥瀬一樹さんからはコメントをいただくことはできなかった。
来年もぜひ取材したいと思う。






Red Bull 400
開催日:2025年5月17日(土)
会場:札幌大倉山ジャンプ競技場(北海道札幌市中央区宮の森1274)
レース結果
男子 シングル
1位:田中聖土 3分36秒28
2位:鈴木嵩一朗 3分53秒21
3位:一橋聖也 4分17秒56
女子 シングル
1位:布施愛里 5分11秒22
2位:Hyunji KANG 5分15秒51
3位:滝澤空良 5分17秒27
男子4×100mリレー
1位:階段スプリンターズ 2分25秒19
2位:TWIST SAPPORO 2分40秒33
3位:空自千歳剛クラブ 2分58秒44
オープン4×100mリレー
1位:スタイルジム 3分5秒45
2位:HTBイチモニ! 3分11秒39
3位:ちーむ ゆうぽよ 3分14秒73
学生4×100mリレー
1位:東海fenix 2分22秒19
2位:東京都立大学 陸上競技部 2分23秒74
3位:山部太郎 2分26秒85
公式ホームページ
https://www.redbull.com/jp-ja/events/red-bull-400