“アフリ観LIFE“を送る人を紹介する連載企画《「奥 祐斉と考える - “アフリ観LIFE“ -」 僕たちは、きっとアフリカに救われる」》第1回目のゲストは、アフリカ・ケニアの巨大スラム街キベラとの出会いから自らの人生をシフトさせた、坂田ミギーさんです。アフリカの孤児・貧困児童と女性へのサポートを目的としたエシカルアパレルブランド「SHIFT 80」の代表として活躍されています。
前編はこちら
連載:「奥 祐斉と考える - “アフリ観LIFE“ -」 僕たちは、きっとアフリカに救われる
第1回ゲスト|坂田ミギーさん 【前編】
ケニアの巨大スラム街との出会いで人生が一変 「朝起きれたら幸せ、今日もなんかいい感じ」
坂田 ミギー(Miggy Sakata)
株式会社こたつ 共同CEO クリエイティブディレクター
広告制作会社、株式会社博報堂ケトルを経て、株式会社こたつを設立。31歳で世界一周の旅へ出発。帰国後は、TVCMやデジタル、PRなどの広告企画制作を続ける傍ら、旅の途上で出会ったアフリカの孤児・貧困児童と女性へのサポートを目的としたエシカルアパレルブランド「SHIFT80」を立ち上げる。現在は、旅やキャリアに関するエッセイ執筆のほか、キャンピングカーをモバイルオフィス兼自宅として、日本各地を旅しながら働くというスタイルを実践するなど、活躍の幅を広げている。
【著書】『旅がなければ死んでいた』(KKベストセラーズ)、『かわいい我には旅をさせよ』(産業編集センター)等。
SHIFT 80
https://shift80.jp/
坂田ミギー Instagram
https://www.instagram.com/migimagari/
奥 祐斉(Yusai Oku)
株式会社bona 代表取締役
108の国と地域を回った旅人。イベントやツアー企画、プロダクト開発、場づくりなどを通じて、人と人を繋ぐことを積極的に行う。東アフリカや西アフリカを中心に企画型の旅を提案する。日本国内においては、京都を中心に企画・募集型の旅を主宰。また、スパイスの輸入を行い、全てアフリカ産のスパイスにこだわった「アフリカコーラ」などのプロダクト開発も行う。かつて暮らしたアフリカで心が救われた経験から、日本にアフリカの多様で大らかな価値観を輸入すべく活動を続けている。趣味は、アフリカで坊主にすること。「坊主とアフロと」と題して、Pod castを展開していく予定。
株式会社bona
https://bona.world/
奥 祐斉 Instagram
https://www.instagram.com/yusai0214/
現代人の精霊、ChatGPT!?
奥祐斉:前編に引き続き、坂田ミギーさんにお話を伺っていきたいと思います。前編では、ミギーさんが立ち上げたアパレルブランド「SHIFT80」について伺いましたが、アフリカに向き合うミギーさんをもう少し掘り下げていけたらなと思っています。
ミギーさんって、旅を通じて裸族っぽいことも経験されていて面白いなって、それも結構刺さってるんですけど。人間が人間らしくある場所に、ありのままの自分で飛び込んでいくというか。
いろんな世界を見てきたミギーさんですが、何かを返していくことや共に何かをはじめることを考えた時に、なぜアフリカだったのか気になっているんですよね。
インドは呼ばれるって言いますけど、アフリカも近いものがあるなと思っていて。
坂田ミギー:世界一周するまでは、正直「アフリカでは太鼓を通じて精霊と会話する人がいるの?本当に?そんなわけない」と思っていたんですよね。
奥祐斉:わかります(笑)。
坂田ミギー:「呪術を使って病気を治す?それで治るわけがないし、非科学的だろう」と。当時の自分は浅はかでした。実際に彼らと出会うと「太鼓で会話するのも、呪術で問題を解決するのも、本当に存在するんだ」と思えるんですよね。
奥祐斉:わかります。そうですよね。
坂田ミギー:私たちが失ったものを、彼らはまだ持ち続けている。素敵なことだと思います。大地や死者からエネルギーを受けとるとか、精霊に問いかけて答えを聞くとか、「本当に?」とは今でもたまに思うものの、実際に存在するんです。もしかしたら、アフリカにはまだ残されているけれど、我々の多くがそのような世界・力とつながる能力を失ってしまっただけなのかもしれない。
奥祐斉:先日、アフリカをベースに活動している方と、日本国内で活躍されているAIの専門家の大学教授とを引き合わせて話してもらいました。「ChatGPTに何かを問いかける時、誰がどんな風に答えているのかアルゴリズムも解らない。けれど現代人は、安心する・落ち着くという感じで使っている」との話で着地したんですね。そして、アフリカで活動されている方が「アフリカの人たちが、精霊や呪術師に祈ったりする時と一緒ですね」って言ったんです。確かに!と、思わず笑ってしまいました。
坂田ミギー:確かに近いものがありますね。面白い。
奥祐斉:だから結局、現代人も同じことをやっているんだなと思いました。本質的にはほとんどの人がAIを理解して使っているわけではない。けれど、安心したいことがあって、テクノロジーに頼っている。
坂田ミギー:アフリカで精霊や大地に問いかけるのとおなじかもしれません。結局、我々にはそれらに近い存在が必要なのかもしれないですね。
大地を踏んだ瞬間にビリッと感じる人、この指止まれ
奥祐斉:去年、ブラジル、アメリカ、インドとか色々行って来たんですけど、やっぱりアフリカに行く前が凄く高揚するんですよね。わかりますか?この気持ち。
坂田ミギー:わかります(笑)。
奥祐斉:なんなんですかね、あの気持ち。ドキドキもするし、ちょっと不安にもなるし、だけど、圧倒的に楽しくて、寝れないな〜みたいな、小学生の時の自分に戻るような感覚。
坂田ミギー:確かに他のエリアにはないですね。
奥祐斉:毎日ワクワクしちゃって。例えるなら、運動会の前日。いやぁ〜勝てるかな〜みたいな。そういう感覚です。
坂田ミギー:アハハハハ。その気持ちはわかります。あまり共感してもらえていないんですけど。飛行機から降りてケニアに降り立つ時に、大地を踏んだ瞬間にちょっと“ビリッ”ときたんですよね。
奥祐斉:めっちゃわかります。アフリカの匂いとか、熱風とか、“ムワッ”とするあの感覚。タイとか東南アジアとも違うんですよね。アフリカは、何かが違う。
坂田ミギー:言葉では表現できない、特殊なエネルギーがありますよね。
奥祐斉:あるある、絶対ありますね!アフリカって、またすぐにでも行きたくなりますもん。あのエネルギーは何なんですかね?いつも元気をもらえるし。
坂田ミギー:他のエリアでは得られないエネルギーが、アフリカにはありますね。
奥祐斉:みんなに、それを体感してもらいたいんですよね。僕は、その強い思いが、アフリカを伝える原動力になっています。
坂田ミギー:とても理解できました。皆さんにも経験してほしいですよね。
奥祐斉:僕は、アフリカの入口に立ってもらうきっかけをつくることが役割だと思っていて。だからこそ、ミギーさんもそうですけど、そういう方を色々紹介していきたいなと思っています。
豊かな繋がりこそが、最高で最強!
奥祐斉:連載のテーマでもあるんですが、ゲストの方が感じる「アフリ観(アフリカン)」というのを聞いてみたいと思っています。僕は、「アフリ観」の「カン」を「観る」という言葉に置き換えて活動していて、過去には「アフリ観ラジオ」っていうのもやってたんです。
僕は、最初は旅を通してアフリカに出会いましたが、JICAをはじめいろんな活動の中で感じたことがあります。それは、アフリカに救われたことの方が圧倒的に多くて、自分は何もできてないということです。
ニジェールの村づくりにも関わっていたんですが、結局成長させてもらっているのは、いつも僕だったし。世の中のためとかかっこいいことを言っていても、アフリカに出会うと、結局は自分にそれ以上のものが返ってくることが多いんですよね。多分、ミギーさんもそう感じているのかな?と思うし、日本の人に届けたい価値観などあれば、伺ってみたいなと思いました。
坂田ミギー:いっぱいありますね。奥さんが言ったことも、とても共感できます。私も、自分たちの方が立場が上だとか、助けてあげるとか、そういう「あげる」的な感覚はなくて。本当に、いつも助けてもらってるのも私だし、成長させてもらってるのも私だし、何かを得ているものが多いのは自分の方だなと感じています。
奥祐斉:本当にそうですよね。わかります。
坂田ミギー:アフリカでの印象的なエピソードだと、ケニア東海岸の民族ドゥルマの村を訪ねた時のことですね。この村では、それこそ太鼓を叩いて精霊と会話しているんです。偉大な白魔術師が亡くなられたので、約40日間の慰霊祭が行われていました。その慰霊祭の最後の3日間にお邪魔させてもらいました。驚きしかなかったので、どの部分を話すのが良いか迷うんですけど、慰霊祭の最後にマテラ長老が私たち客人に対して話してくれた内容が印象的で。
ドゥルマの住むこの村には、過去にも訪れたことがあったんです。このとき10年ぶりに行ったんですが、明らかに前回の訪問時よりも貧しくなっている。厳しい状況なのはよくわかりました。でも、そのとき長老が話したのは、「私たちは経済的な指標で見ると貧しいかもしれない。けれど、私たちには豊かな繋がりがあるから、貧しくはないのです」という言葉だったんですよね。
慰霊祭には、遠方の村や森からも駆けつけてくれる人々もたくさんいます。いろんな民族の人たちが、亡くなった呪術師“ママカブンビ”の慰霊のために集まっていました。困ったときに助け合う、よろこびを分かち合う。そんな豊かな繋がりがあるから、私たちは貧しくないし、幸せに生きていけるという話をされました。我々は、便利であるとか、物質的な豊かさとか、そういったものを大事にしすぎてきたかもしれない。繋がりの豊かさを、軽視していたと考えさせられたんです。「人と人との繋がり?少し面倒だな」とか、そういう風に考えていた時期だったのでハッとさせられて、ずっと心に残っていることの1つですね。
私が伝えたい「アフリ観(アフリカン)」はここですね。
奥祐斉:ありがとうございます。凄く素敵な話ですね。アフリカの村に行くと、井戸が壊れたら絶対に1人では治せないから、みんなで直さなきゃいけない。水が飲めないって、命にも直結するし。だから、そういう繋がりを大事にするのが当たり前ですよね。日本だと、ついつい1人で生きているような錯覚に陥りますけど。スーパーに行けば野菜が売っているのが当たり前じゃなくて、野菜を育ててくれる人がいるから僕たちも生きていける。アフリカの人たちは、いろんなことに感謝をする気持ちが当たり前にあったり、繋がりに長けているなっていうのは、僕も思いました。
坂田ミギー:全ては繋がって成り立っているのに、私たちはその繋がりを雑に扱いすぎているところがあるかもしれないですね。私は、あの時まではそうだったなと思いますね。
奥祐斉:日本では、核家族も増えてきて、誰にも頼れなかったり、頼れる人が近くにいない人もたくさんいると思うんですよね。いや、確かに豊かな繋がりって考えさせられますね。
「衣類の墓場」に、新しい命を吹き込むチャレンジ
奥祐斉:今後の予定とか、何かやってみたいことはありますか?
坂田ミギー:ケニアの職人、デザイナーと服を作っているので、日本だけでなく、ケニアでも販売してみたいですね。なので、12月にケニア・ナイロビでのPOP-UPにいくつか挑戦してみたいと思っています。
奥 祐斉:ケニアでPOP-UPって、いいですね。ケニアで挑戦するというのは、どんな感覚ですか?
坂田ミギー:正直、想像がつかないところもあって。
「SHIFT80」は古着を組み合わせたアップサイクルの服なので、現地の人々がどんな風に思うのか想像が難しい。日本なら、1点ものへの価値が伝わることは理解しています。けれど、アフリカナンバーワンの古着輸入国・ケニア在住の人たちからすると、古着に対する価値観が我々と違うはずなんです。この十数年でケニアの古着の輸入量は5倍になっています。とにかく古着が安い。欧米の質のいい古着が数十円、数百円で買えてしまう。
奥祐斉:なるほど。確かに日本ではビンテージの古着は高価ですけどね。ケニア初のPOP-UP楽しみですね。きっと、今後も何に繋がるかわからない面白さも大切に活動されていくのだろうな、と感じました。ケニアでのPOP-UP挑戦の報告会もあると良さそうですね。
坂田ミギー:考えてなかったんですけど、どこかでやってもいいですね。
奥祐斉:ぜひ、今後も色々とコラボレーションしましょう!ミギーさんとはリズムが合うというか本当に楽しかったです。ありがとうございました!!
またイベントなどでご一緒できるの楽しみにしていますね。
坂田ミギー:こちらこそ、楽しかったです。ありがとうございました。
<お知らせ>
「SHIFT80」のSNS、InstagramやX(Twitter)、LINEをフォローしていただくと、1フォロワーにつき給食1食分をアフリカの学校に届ける取り組みを行っているので、ぜひ、皆さんにも参加していただきたいです。
<イベントのお知らせ>
アフリカで受けいれた、ありのままの自分を話そう
〜坊主とアフロと、ミギーとモアナ〜
あの日、あの時、あの場所で、「アフロ」と「坊主」に出会ったことで私の人生は変わった。 そして「アフロ」と「坊主」は、アフリカに行ったことで、人生が大きく動き出した_____。 私たちの人生は、予測がつかず、一つの出会い、出来事で分岐し、大きく動いていく。 アフリカを旅した4人が、何を感じ、どう変わったのか。そこで見つけた「自分らしさ」「ありのままの自分」とはーーーー。 個性が渦巻く街、原宿の交差点にオープンした人が交差するハラカドの クリエイティブラウンジ「BABY THE COFFEE BREW CLUB」で アフリカを旅して自分自身を見つけた4人が織りなすクロストークを開催。
・開催日:2024年11月13日(水) 19:00〜(開場18:30〜)
19:00〜20:15 トークショー / 20:15〜22:00 親睦会 ※途中入退場自由
・ゲスト:坂田ミギー(SHIFT80代表)/菊池モアナ(Borderless Tanzania Limited 代表取締役社長)/エゼマタ健太チャールズ
・ファシリテーター:奥 祐斉(株式会社bona 代表取締役)
・会 場:BABY THE COFFEE BREW CLUB
東京都渋谷区神宮前6丁目31-21 東急プラザ原宿「ハラカド」 3階
・参加費:無料※1drink order
・お申込み:https://africa-arinomama.peatix.com/
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