奥 祐斉(Yusai Oku)
株式会社bona 代表取締役
108の国と地域を回った旅人。イベントやツアー企画、プロダクト開発、場づくりなどを通じて、人と人を繋ぐことを積極的に行う。東アフリカや西アフリカを中心に企画型の旅を提案する。日本国内においては、京都を中心に企画・募集型の旅を主宰。また、スパイスの輸入を行い、全てアフリカ産のスパイスにこだわった「アフリカコーラ」などのプロダクト開発も行う。かつて暮らしたアフリカで心が救われた経験から、日本にアフリカの多様で大らかな価値観を輸入すべく活動を続けている。趣味は、アフリカで坊主にすること。「坊主とアフロと」と題して、Pod castを展開していく予定。
奥 祐斉 Instagram
https://www.instagram.com/yusai0214/
僕たちを魅了する、アフリカに想いを乗せて
旅・食・場をテーマに企画と運営を行う、株式会社bonaの代表を務める奥 祐斉です。
会社のロゴは“穴の開いた石“をモチーフにしています。本来ならば穴が開くはずのない石でも、少しずつ誰かの手が加わり働きかけることによって神秘的なものに変わったり、大切なものに変わったりします。そんな思いがロゴには込められています。
“諦めかけてしまいそうなことにも、アイデアとアクションで変化をもたらしていきたい”そんな思いもあって、会社を起業しました。現在は、旅やアフリカのことだけでなく、日本の福祉に関するお仕事であったりとか、イベントやコミュニティ事業などのアドバイザーも務めています。
今後、アフリカに向き合い活動を続ける方々へのインタビューを通じて、「アフリカへの入口」となるべくアフリカの魅力や価値観をお届けしたいと思います。
好きなコトを仕事にすると決めて、最後に残ったのが旅と食、そして人(場づくり)でした。自分が好きなこと、そして得意とすることを選択した結果とも言えます。現在は、訪日外国人旅行者向けにオーダーメイド型の旅のプランニングやアテンドを行ったり、アフリカのスパイスを起点とした商品企画や開発を行っています。またスパイスなどを基軸に、他の会社やブランドなどとコラボレーションすることも多々あり、様々な商品を作ってきました。
アフリカのエネルギーが漲る、クラフトコーラ
いつも唯一無二の商品開発にこだわっていますが、中でも生涯忘れることのできないのは、全てアフリカ産のスパイスにこだわって作った「AFRICA COLA」というクラフトコーラです。これは、ニジェールで取り組んでいた村づくりで“コラの実”に出逢ったことがきっかけで、偶発的に生まれた商品です。会社の商品なので主催するイベントでは殆どの場合に扱っていて、最近では思いや活動に共感してくれる仲間が一緒に運営してくれていて、上手くいかないことの方が多いですが、おもしろいところに繋がったり、何より一緒に販売を手伝ってくれる仲間が喜びを感じてくれている瞬間を見るのが幸せですね。
皆さんにも機会があれば、バチバチにキマるので味わっていただきたいです。アフリカ産の素晴らしいスパイスをブレンドしているので、アフリカのポジティブパワーを感じていただけるはずです!ECサイトでも購入できるので、ぜひ飲んでみてください。
人類誕生の地とも言われる、アフリカとの出会い
父親が転勤族だったこともあり、定住したという記憶があまりないんですよね。
生まれは千葉県の幕張で、特に歴史が深いところでもないので地元という概念もなく育ちました。今は京都という場所に拠点を置いているので、全く異なる世界というか、人との距離感とか、歴史ある街並みとか、学生さんも多くて、個人店も多くコミュニケーションが盛んな土地に住んでいるギャップに笑えることさえあります。
高校生のころから気づいたら旅をしていて、18歳でバックパッカーに目覚め、自分でもびっくりするような行動力と好奇心だけで、日本全国と世界100以上の国と地域を訪れました。訪れた国で、突如紛争が起こったり、情勢が悪化したり、決してポジティブなことだけでなく目を伏せたくなるような暗い世界の出来事もこの目で見てきました。
このことが、すべての光には闇が隠れている、その闇に光を当てられる人で在りたいと思えた原体験でもあります。旅や海外でのボランティアの経験を通して、国内外通して様々な価値観などに触れ、いつしか “行き当たりバッチリ” に好きなコトを仕事にすると決めて目の前に入ってくることに全力投球をしていていたら、最後に残ったのが旅と食、そして人(場づくり)でした。
今は、その旅と食と、人を通した場づくりのお仕事をさせていただいています。
そして実はアフリカ大陸に、はじめて降り立ったのは13年前の20歳のときです。
ギリシャからエジプトまで地中海に沿って、陸路で旅したのが初めましてでした。元々はカイロ空港から帰る予定だったのですが、アラブの春が勃発したことによって空港が封鎖されて、レバノンのベイルートへと向かい、そこからロシアのモスクワ経由で帰りました。お世辞にも綺麗とは言えないけれど安かった、ロシアのフラッグキャリアであるアエロフロート・ロシア航空が今では懐かしいです。これが僕のアフリカ大陸との最初の出会いでした。そのあと世界一周旅行をした後に、卒業旅行と題して東アフリカのケニアから南アフリカまで、こちらも陸路で縦断しました。途中、テントを買ってテント泊をしたり、まったく知らない人の家に泊めてもらったり、泊まる場所がなく売春宿に泊まったこともありました。カメラを持っていると、気軽に「撮って」と声をかけてくれるし、今までに感じたことのない異次元のホスピタリティを感じました。
こうした経験の中で、日本人が忘れてしまった心をアフリカ大陸の人たちはもっていると強く感じました。
ただアフリカといえど、広大で一括りにはできないことも確かですが。
1つの国のなかだけでも、10以上の民族や言語があったりなど、日本の北海道から沖縄まで県民性や方言が違うように、全く異なる文化を大切に生きている多様性があります。そして、それらを変えることなく生き続けていることも惹きつけられる大きなポイントです。少し車を走らせると、言葉も生活様式も全く違う人たちが住んでいて、日本の様に物質的な豊かさはないかもしれませんが、圧倒的な豊かさを感じることも本当に多いです。
アフリカの中でも田舎町に行ったりすると、「生きている=息を吸って吐いていて、心臓が動いている」ことだけでも凄いことなんだと思う瞬間が多いです。いつから、これだけ大切なことを忘れてしまったのだろう、と思うんです。
心を奪われる、“アフリ観(アフリカの価値観)”とは?
自分のエゴなのかもしれないですが、アフリカの“そのまま”って本当に美しいんですよ。
何も課題なんてなくて、“何も変えなくても、そのままでいい”って思える。というか、課題なんて自分で決めることだろう?って。日本の特に経済が盛んなエリアに滞在していると、どうしても何かを変化させたり、成長させないといけないと思いがちですが、実はそんなことなくて人は勝手に成長しているし、人は誰1人として同じ人なんていないと思うんですよね。木も雲も、すべて同じというものがない、そこに気づかせてくれるのがアフリカの価値観かもしれません。
おだやかで、ゆったりとしていて、自分が持っているものは分け与える、それが当たり前。そんな感覚で、資本主義が行き詰まりを見せる日本でも、いずれそうなっていくのだろうなと強く思うことも多いのです。
元々、連載なんておこがましいことをやるなんて思ってもいませんでした。だけど、そこには人からの依頼もあり、人から人へ情報が媒介していった先に何があるのか「何を伝えたい」というよりも、この活動が何に繋がっていくのか、そこに興味があります。
「アフリカの水を飲んだものは、アフリカに帰る」ということわざがあるのですが、まさに僕自身もその一人です。この連載を通じて、多くの人が水を飲みたくなるような、アフリカに目を向けて活動する人たちの「今」を、遠く離れた日本の人たちにおもしろく届けられたらと思っています。
株式会社bona
https://bona.world/
奥 祐斉 Instagram
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