Z世代が大事にすべき会社選びの基準④:選べる
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今瀧健登さん
寺口:この5要素は非常に重要ですね。今は8、9割が入社前に希望する配属先を保証してほしいという調査(※)もありますし、給与に関してもみんな一律だと必要以上に頑張っても仕方ないと思ってしまうので、「自分はこれだけ成果を上げたので、このぐらいの給料を下さい」という交渉できる余地がほしい。
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※2021年6月、大学生サークル専用アプリ「サークルアップ」による調査
ONE CAREERで2024年卒の学生に入社先に求めるものをアンケートで聞いてみたところ、2021年10月時点で1位は「自分のなりたい職種である」、2位は「企業内の雰囲気がいい」でした。ジョブやカルチャーの情報がオープンになっていない企業はなかなか選んでもらえない可能性があります。
ワンキャリア「データで見る24卒就活生の「今」──加速する「職種志向」と「日系志望」、コロナ禍の影響も?」 より
今瀧:ジョブ(職種)を重視する傾向は間違いなくあると思いますが、希望通りの配属が叶ったにも関わらず「やっぱり違ったな」というミスマッチも未だに多いので難しいですよね。
寺口:そうですね。ただ企業側が一方的に評価するスタイルを押し通しすぎると入社希望者が減ってしまうということは確実に起こるので、入社後面談の中でもキャリアカウンセリングのようなコミュニケーションをするところは増えてきているかと思います。
企業における「採用の競合」は他社に加えて他の「働き方」にも広がっている傾向を感じます。フリーランスになる、友達と起業するという選択肢も普通にある中で、それらと比べても「この会社に就職する価値があるんだ」と思ってもらう必要がある、という意識を持っていない企業の採用はどんどん難しくなってきています。この傾向はコロナ禍を経てさらに強まっていますね。
今瀧:コロナ後の働き方で言うと「どの会社のどの業種はテレワークができるのか」といったことが一目瞭然になっちゃいましたよね。
寺口:それもありますし、例えばメルカリやサイバーエージェントは、あれほどの規模の企業になっても、社内のカルチャーや働いている人の様子をものすごくオープンにしますよね。社員のSNS発信も禁止されていない。SNSだけではなく社内のDXがどれだけ進んでいるか、テレワークできているかどうかなども含めて「あの企業はできているのに、何でウチの会社はダメなんだ?」と簡単に比較できるようになってきている。
今瀧:5つの要素の中に「場所」を挙げているんですが、これが一番影響力が大きいんじゃないかと思っているんです。
例えば東京在住で月給が30万円・家賃が10万円の人がいたとして、これは地方在住で月給25万円・家賃5万円の人と「残るお金」は同じなんですよね。単純化しすぎている例ではありますが、突き詰めていくと「どこでどんな働き方を選択するのが自分にとってベストなんだろう」という選択肢がものすごく増えるんです。
何が重要かというと、全国どこでもテレワークが可能になった際、家賃=固定支出が減らせるとなると、稼ぐお金の総量を減らしてもやっていける余地が出てくる、つまり場合によっては勤務時間を減らせる可能性が出てくるということです。お金で時間を買っているのに残る金額が変わらないというのは、ちょっと革命的ではないでしょうか。
僕の会社の社員はどんどん地方に移住していて、僕も鎌倉に移住しようかななんて考えてます。
寺口:そうなんですね。働き方は場所や時間も含めて企業が定めていた画一的なものから、働く人たちと対話しながら柔軟にシフトしていく必要がありそうです。
Z世代が大事にすべき会社選びの基準⑤:時代に合っている
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今瀧:さっきも話が出ましたが、これからも個人・企業問わずますます多くの人がネットやSNSを活用する中で、「この会社はこんなに良い取り組みをしている」「この会社の内部は結構酷そうだ」ということは隠そうとしてもどんどんオープンになってしまいます。
だからこそ「自分たちの会社が時代に合った変化ができているか」はより比較されていくようになっていくんだと思います。SNS運用に関しても、情報を発信する、ユーザーや世間からの反応を確認する、どちらにおいても「組織内で誰一人勘所がわかっていません」という状態はもったいなさすぎます。
そしてSNSだけでなく、世の中には安価または無料で使えるITツールがどんどん増えているにも関わらず、利用を禁止している企業もまだまだ多いです。端的に言ってこれは自分で手足を縛り付けているようなものだと思います。
寺口:テクノロジーのリテラシーは若い人の方がキャッチアップしやすいという傾向は以前からありますよね。デジタルネイティブだし、コミュニケーションに関しても、今の世の中のスタンダードと同水準のレベルでやっている。その感覚をビジネスに活かせないというのは損失だと思いますし、会社に対して最初に疑問や不安を覚えてしまうきっかけにすらなりかねません。
―― こういった話をうかがう際によく疑問が浮かぶのですが、「若いながらも十分なスキルがある層」にとってはここまでのお話は完全にそうだと思う一方、自分もそうだったんですが基本的には「一人前と言えない状態の子」の方が多いと思うんですね。
寺口:確かに2〜3割ぐらいでしょうね。
―― 「できない子」に対しては、一見時間のムダにしか見えないような「研修で板書されたことをスマホで撮影するのではなくノートに手書きしてもらう」みたいな保守的な方法論や、「まずは3年頑張ってみろ」みたいなアドバイスが効いたりもする現状がある気がしているんです。
寺口:おっしゃることもわかるんですが、今の社会において「ビジネスにおいてどんなスキルが必要か」の中身がより多様化していると思うんです。少なくとも物差しが1つでしかないということは絶対にないです。
たとえ「できないこと」の方が多かったとしても、何か得意な、芽が出そうな領域があるはずで、そこを上手く見つけてあげて伸ばせるようにしていけるやり方が良いというか。何でもかんでも「オレたちもこの修羅場をくぐり抜けてきたんだから」と追い込んでしまうのではなく、避けても良い修羅場はスルーしていいんじゃないでしょうか。今の時代ならではの修羅場もどこかでやってくるはずなので。
今瀧:会社に限らず組織というのは個々人の強みを伸ばして弱点を補うために存在すると思っています。評価軸が1つあるいは少数しかないと、そこに合わなかった人は辞めざるを得なくなってしまいますよね。少なくとも「若手社員の離職を抑えたい」と思っているのであれば、何らかの制度的、社風的な配慮が必要になってくる時代なんだと思います。
寺口:そうした「社内での配慮」に加えて、個人も企業もそうですが、自身をオンラインに接続して情報を受発信していくということはもう避けられないんだと思います。オフラインにしたままだと客観的な評価もわからないし、それ自体がリスクです。
加えて従業員がこれまで飲んできた本音に、ちゃんと向き合うということなんじゃないかと思います。「顧客の声を聞け」とはよく言われますけど、従業員も同様にステークホルダーである。その認識が変わらないと、引き続き社員が離れていってしまうのではと思います。
―― これまでは、若い子を惹きつけるためには、ある種の“キラキラ感”というか、「若いうちからこんな重要な仕事を任されています!」「カッコいいオフィスで働けます!」みたいな要素が必要だと思われてきたフシがある気がするんですが、そうではなくてもっと地に足ついたリアルな話をして欲しいと感じているのではという気がしました。
寺口:本当にその通りです。皆リアルを求めているのに。
今瀧:キラキラしている話よりも、「めちゃくちゃ残業して終電で上司と二人でラーメンを食べた時の思い出が印象深かった」というような話が聞きたいですよね。