B2SMB Instituteの創始者でCEOのDave Walker氏。B to Cの国際的大企業の管理職の経験もあり、人とビジネスを繋げる力で広く信頼されている人物
渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott
エッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者
兵庫県生まれ。多くの職を体験し、東京で外資系医療用装具会社勤務後、香港を経て1995年よりアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に新潮社刊)を発表。『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)など著書多数。翻訳書には糸井重里氏監修の『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経ビジネス人文庫)、レベッカ・ソルニット著『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)など。最新刊は『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)。
連載:Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク日本版
洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者。
2年4カ月ぶり、「マスク着用義務」が消えたフライト
2022年5月上旬、仕事でカリフォルニアのナパ・ヴァレーで「B2SMB Institute Leaders’ Forum22」というビジネスカンファレンスに参加した。バーチャルではないリアルなカンファレンスに参加するのは、新型コロナウイルスのパンデミックが訪れててから2年と4カ月ぶりのことだ。外国籍者に対する入国制限のために今年初頭に予定していた日本への旅をキャンセルしたので、飛行機での旅もパンデミックスタートから初めてのことだった。そういう意味で、ふだん暮らしている東海岸以外のアメリカの状況を観察するのによい機会だった。
ナパ・ヴァレーにある、有名なワイナリー「スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ」
2022年4月18日にTSA(運輸保安庁)が全米レベルのマスク着用義務を解除したのを受けて、アメリカの航空会社のほとんどのフライトもマスクなしで乗れるようになった。私は5月10日にボストンのローガン国際空港からアメリカン航空でテキサス州ダラス・フォートワース国際空港経由でカリフォルニア州サクラメント国際空港に飛び、5月15日にサクラメントからアリゾナ州フェニックス・スカイハーバー国際空港経由でボストンに戻ったのだが、どのフライトも満席でマスクを着用している乗客のほうが少なかった。
私が住む東海岸のマサチューセッツ近郊ではスーパーマーケットなど屋内ではマスク着用者が多いので、これはかなりの「カルチャーショック」だった。機内では、離陸前にマスク着用義務が解除された説明と、「どちらの選択をした方も、他の方の選択を尊重してください」というお願いのアナウンスがある。どのフライトでも他人の選択に文句を言う人はなく、マスク着用義務が出た頃よりも平穏な雰囲気だった。
アメリカ国内線のファーストクラスは通常ビジネスでの利用者が多い。エコノミークラスに比べて座席が大きいだけで価格に見合ったサービスが得られるわけではないから、自費で購入する人があまりいないのだ。ファーストクラスはアルコールが無料だが、ビジネス利用の人は通常アルコールは飲まない。
ところが、今回の旅では日中のフライトなのに朝からカクテルやワインを飲み続けていたカップルが半数ほどいて、旅の前に耳にしていた「ビジネス利用はパンデミック前の状態に戻ってはいないが、観光旅行はその空席を埋める以上に増えている」という情報が正しいことを実感した。空港やフライトでもビジネスでの出張だと思われる単独利用者は少なく、カップルや家族連れ、女友達、若者のグループが多かった。
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