LIFE STYLE | 2022/04/06

ウクライナ難民と受け入れた日本人建築家に聞く「国外退避」の困難【連載】オランダ発スロージャーナリズム(43)

ベラさん・ミハエル君(写真左)と松浦さん一家
最愛の息子ミハエル君(11歳)を連れて、ウクライナのキーウ(キエフ)から...

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キーウに残る人の現状

ベラさんがウクライナを想い作成したバッジ。インタビュー当日も胸につけていた

キーウ市内には大きなドニエプル川が流れており、その川にかかる橋がことごとく破壊されているために、物流が分断されているようです。そのため、食料や医療品の不足が出ているとのこと。また、道路も爆撃されていたり、戦車を通さないための障害物が置かれていたりするため、交通インフラは完全に麻痺しているようです。

ただしベラさんが言うには「ウクライナ軍がロシア軍を撃退しているので、現在のキーウは、ある特定の場所を除いて落ち着いている」とのこと。「それよりもキーウの周辺都市が壊滅的にやられている」ということで、キーウ自体はウクライナ軍の強固な守りが効いているようです。

そんな戦況の中、例えばベラさんのお母さんのように「高齢だったり、動けない人」は避難できないので、相変わらずキーウにいるそうですし、先述の通り女性や子どもであっても多くの普通の人は国外に出られないので、そういう人がまだまだキーウにはいるとのこと。

現在、国外に避難している人は、オフィシャルの統計では国民の10%に当たる400万人だそうです。

今、ベラさんが望んでいるのは、一刻も早くキーウに戻り、自分の元の生活、元の人生をやり直すこと。そして、子どもたちにきちんとした教育を、今まで通り受けさせてあげたいということです。

「キーウの子どもたちは学校で、毎日7つのレッスンを週に5回受けていました。それが今では、週に1回か2回のレッスンを受けているだけです。それも先週、やっと始まりました。コロナの経験から、先生たちはリモートでレッスンをするノウハウをすでに持っています。でも当然、リアルな場での教育とは全然違いますから」

最後にベラさんの話で印象に残ったのは、「今、男性は国を守るために、一生懸命働いています。私たち女性が今するべき仕事は、国の未来を守ること。つまり子どもを守ることです。子どもは国の未来だからです。ウクライナの人は、今、こうやって、みんなで国を守っているのです」という発言でした。

爆撃の音は、このように人生を分断されてしまった人の声をかき消します。ニュースでは、なかなかスポットライトが当たらない、普通の人の生活実態。ウクライナ避難民のリアルな声をお届けしました。

最後に。「トラウマ」を抱えながらも、リアルな声を聞かせてくれた、ベラさん、ミハエルくん、そして、ご家族の英断で、避難民を受け入れてくれている松浦家のみなさん、貴重な機会を作っていただきありがとうございました。

今回の連載では原稿料を受け取らず、FINDERSからウクライナ支援のチャリティを行います。また、以下に掲載するベラさんが描いた水彩画があるのですが、こちらもポストカード化して筆者の会社(ニューロマジック アムステルダム)のECショップで販売し、こちらの収益もベラさんに直接、お渡ししようと動いています。現在予約も開始していますので、ぜひチェックしてみてください。

ベラさんが描いている水彩画

松浦さんとご家族


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