CULTURE | 2022/02/22

女優のんが監督作『Ribbon』に込めた想い ― どんな困難があっても自分の好きを信じきってほしい

2022年2月25日公開の映画『Ribbon』は、「わたしたちのアートをとりもどす」――未来を奪われた美大生の再生物語だ...

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タイトル「Ribbon」に込めた思い

「Ribbon」現場写真 ©「Ribbon」フィルムパートナーズ

―― 特撮チームに関してですけど、樋口真嗣さんと尾上克郎さんを起用された意図や経緯を教えて下さい。

のん:本当にご縁というか、日本映画専門チャンネルの宮川さん(「Ribbon」エグゼクティブ・プロデューサー)が、樋口監督にお願いするのがいいんじゃないかという提案をしていただいて、樋口監督が尾上監督といつもタッグを組んで作っていたので、そのご縁で撮影していただくことになりました。

―― 『Ribbon』の表現を特撮でやってほしいという意図がおありになったんですね。

のん:最初はCG部隊で樋口監督と尾上監督に来ていただいたんですけど、こういう『Ribbon』を撮りたい、というのを私が説明しているうちに、これはCGではなくて直接撮って合成した方がいいかもしれない、ということになって、特撮しようということになったんです。

「Ribbon」場面写真 ©「Ribbon」フィルムパートナーズ

―― タイトルの『Ribbon』というのは、脚本を書いているときから頭の中にあった感じですか。それとも、書きながら浮かんできたタイトルですか?

のん:『Ribbon』は、仮タイトルでした。タイトルはなんて付ければいいのか、ずっと分からなくて。最初に、負の感情をリボンとして纏っている女の子の映像が頭に浮かんで脚本を書き始めました。撮影が終わって編集しているうちに「これは本当にリボンの映画だ」という覚悟が決まっていったので、それでタイトルは『Ribbon』そのままにしました。

―― リボンが舞ってヒラヒラと儚かったりとか美しかったりというところは、のんさんの込めた思いとすごくリンクする部分があると感じました。

のん:いつかの感情、言葉にしていないモヤモヤしたり苛立ったりした感情をリボンで表現しています。私は、負の感情をリボンで表すと、すごくかわいく変換されるところが好きで、かわいいものとネガティブなものがぶつかった時にすごいパワーが生まれると思っていて。『Ribbon』というタイトルは気に入っています。

リボンが集まると一見ゴミのようにも見えるけど、よく見ると美しかったりアートになっていたり、ぞっとするようなリボンになったり、そういういろんなリボンが見られて本当に面白かったなと思います。

―― 主人公の名前が「いつか」という設定に関してですが、映画を観ている時、ピンときました。「いつか、僕ら私たちは…」とか「いつか、自分たちの作品は…」といった、そんな思いを込めたんじゃないかなと。

のん:「いつか、きっと自由に作っていくぞ」という、そういう名前ですね。

―― それから主題歌のサンボマスターの歌と演奏が彼ららしさに溢れ、映画にもマッチしていてすごく印象的でした。特に「翼を失っていない」という歌詞。のんさんがサンボマスターに託した思いはいろいろあると思うんですけど、オファーの理由を一つ二つ挙げるとしたら?

のん:まず、お手紙を送ってオファーさせていただきました。サンボさんが読んで下さって、試写会で作品を観ていただいたら、私が本当に込めたものを受け取ってくれて。

コロナ禍で、いろんなことが中止になって自粛生活を過ごすことになり、いきなり道が閉ざされ、モヤモヤしたまま何もできずにいたんだけど、前に進める気持ちの兆しが見えてくる…そんなストーリーをお話しました。

あとは、美大生から取材した内容ですね。彼ら彼女らが本当に自分たちの作品を壊していたりとか自分たちで作ったのに展示ができなくなっちゃった…そういう状況をお伝えして、それで書いて下さいました。

―― 曲が出来上がって最初に聴いた時は?

のん:感動しましたね。泣けました。うるっときました。「またサンボマスターの名曲が生まれた」という感じで。こんなすごい曲ができたんだ…みたいな。

サンボさんはいつも力強い、みんなを元気づけてくれる応援歌を歌ってくださいますけど、今回も傷ついた学生の皆さんたちだったり、コロナ禍で本当にモヤモヤとか悔しさを抱えている人たちに向けて、すごく素敵なエールを送って下さると思いました。

私の作品を見てサンボさんの曲が生まれ…生まれたものが、こんなにものすごい威力を持って返ってくるんだ、というのが感動的でした。

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