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谷畑 英吾
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前滋賀県湖南市長。前全国市長会相談役。京都大学大学院法学研究科修士課程修了、修士(法学)。滋賀県職員から36歳で旧甲西町長、38歳で合併後の初代湖南市長(4期)。湖南市の発達支援システムがそのまま発達障害者支援法に。多文化共生のまちづくりや地域自然エネルギーを地域固有の資源とする条例を制定。糸賀一雄の発達保障の思想を社会・経済・環境に実装する取組で令和2年度SDGs未来都市に選定。
「今後は厳重に注意し、再発防止に努める」人力昭和脳で本当に行政DXができるのか
経産省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)を取りまとめました」より
今年9月に発足したばかりのデジタル庁が11月24日、メールのBCC欄に記載するべきアドレスをCC欄に記載して400件を外部流出させた。デジタル庁は「今後は厳重に注意し、再発防止に努める」としたが、人海戦術でトリプルチェックでもするつもりなのだろうか。
2018年12月に経済産業省が策定した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver.1.0」では、デジタルトランスフォーメーションの定義を
としている。一方で上記ガイドラインの策定が必要であるとした同省の「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」は、DXをスピーディに進めていくことが求められているものの実際のビジネス変革にはつながっていないと厳しく指摘する。そして、既存のITシステムがレガシーシステムとなり、DXの足かせになっている状態を憂いているのである。
しかし、考えてみれば、今回のデジタル庁の事例でDXの足かせになっているのは既存のITシステムではなく、「今後は厳重に注意し、再発防止に努める」という霞ヶ関文学で当座を乗り切ろうという昭和脳の人力システムではないだろうか。
総務省HPではメールアドレスは「記号を羅列したもののように、それだけでは特定の個人を識別できない場合には、個人情報には該当しません」とするものの、例えば氏名のローマ字既述を使ったアドレスのように「特定の個人の氏名を記載したもの」は個人情報に該当するとしている。今回の事例とは別に、デジタル庁でも当然個人名を含んだメールアドレスも扱っているだろう。
2022年4月には改正個人情報保護法が施行され、これまで努力義務だった個人情報漏洩等の場合の個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務化される。今回の事例はマスコミ=企業のメルアドだったから対象にはならないものの、もしこれが個人メールであった場合は委員会報告事案になる。それだけの重大事案に対して、「今後は厳重に注意し、再発防止に努める」という根性至上主義で対応できるのだろうか。
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