寿命は長ければ長いほど良い。
そういう時代はとっくに終わっているのかもしれません。
ビッグローブ株式会社の調査(2018年:対象は全国の10〜50代)によると、希望寿命(何歳まで生きたいか?)の平均は77.1歳となり、平均寿命よりも短いです。人生に絶望している少数派が平均数値を下げているのでは? と思われるかもしれません。違います。たとえば30代を例にすると、希望寿命が平均寿命よりも長い人の割合は29.3%であり、希望寿命が平均寿命より短い人は43.7%と約1.5倍でした。
世界でいちばん寿命が長い国が日本です。
それゆえに「老後2000万円問題」の議論が加熱するなど、老後資金への不安も世界トップなのかもしれません。日本人を覆う不安の主犯格は「お金」がらみであるのは言うまでもないことかと思います。
今回は「お金」というものによって不安を煽られまくる人生から脱するためのヒントを考えてみたいと思います。
永崎裕麻(ながさき ゆうま)
英語学校カラーズ(フィジー共和国) 校長RECOMPANY取締役
約2年間の世界一周を終えて、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住。南の島のゆるい空気感を日本社会に届けるべく「南国ライフスタイルLABO」というコミュニティーを運営。内閣府国際交流事業「世界青年の船2017」日本ナショナル・リーダー。2019年からはフィジー・デンマーク・日本の世界3拠点生活(トリプル・ライフ)を開始(現在はコロナで休止中)。著書に「まんが南の島フィジーの脱力幸福論」「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」。
https://www.facebook.com/yuma.nagasaki/
フィジー移住で年収が1/3に
私自身、29歳でフィジーに移住し、年収が1/3になりました。「30歳ももう目前なのに…」と不安になったことを覚えています。人生はお金じゃない。当時はそう言い聞かせるべく、お金のことを考えないようにしていましたが、それでは不安は拭えませんでした。
フィジーに移住した理由は様々ありました。「幸せに生きる秘訣を学びたい」や「寒いのが苦手なので常夏の場所で住みたい」「英語環境で生活したい」など。ある時、これらの欲求を実現できているという「無形の価値」をお金で換算してみたらいくらぐらいになるのだろうと値付けをしてみました。
・幸せに生きる秘訣が学べる → 100万円/年の価値
・常夏で暮らせる → 80万円/年の価値
・英語環境で生活できる → 130万円/年の価値
・見知らぬ人たちがすれ違いざまに気持ちの良い挨拶をしてくれる → 500円/回の価値
等々。
給与のようにハッキリと客観数値化されているものにアドオンする形で、上記のようなプライスレスなものを敢えて主観数値化したものを加えれば、「年収は1/3に下がった」ではなく、「何倍にも跳ね上がった」と解釈することができます。私自身はそう捉え直すことによって、心の平静を取り戻していました。
お金への執着を解くために、「お金がすべてじゃない」と否定するのではなく、逆に敢えて「すべてをお金化してみる」というアプローチのほうがフィットする人も少なくないのではないでしょうか。
似た概念として、ちょっと固めの用語ですが、「地位財と非地位財」があります。
地位財とは「周囲と比較することで満足が得られる財」のこと。例として、給与・貯金・車・家・社会的地位(役職)など。一方、非地位財とは「周囲との比較は関係なく、満足が得られる財」のこと。例として、愛情・自由・自主性・絆・社会との関わり・健康など。
非地位財は他人との比較が難しいがゆえに、嫉妬という厄介な感情からに揺さぶられることもありません。地位財から得られる幸福感は短期的であり、非地位財から得られる幸福感は長期的だと言われています。「無形の価値」や「非地位財」に意識を向けることによって、「お金」という存在に翻弄されにくくなるのではないでしょうか。
お金よりも大切なことを見える化
言うまでもなく「お金」は大切です。ただ、必要以上にお金を過大評価してしまっている可能性もあります。皆さんにとって、お金よりも価値があるものってどういうものがありますか? お金よりも大事なものを書き出すことによって、もう少し冷静にお金のポジションを把握できるのではないでしょうか。
たとえば、私にとってお金よりも価値があると感じているものは以下のようなものがあります。
「家族」「身体的健康」「精神的健康」「思い出」「キャリア」「自由」「成長・学び」「つながり・仲間」「変化ある生活」「趣味・遊び」「後悔がない状態」等々。
手段が目的化するという現象はよく起きます。
その最たる例は「お金」でしょう。手段にすぎないはずの「お金」が気づけば人生の目的になっていたり。そうならないためにも、お金以上に大切なものを「見える化」しておくといいのではないでしょうか。
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