2019年女子ワールドカップ Photo by Shutterstock
文:角谷剛
歴代の女子代表チームの訴えに連盟側が応答
米国ではサッカー代表チームの実績と人気は、女子の方が男子より圧倒的に高い。米国女子代表のワールドカップ優勝4回、オリンピック金メダル4回といずれも世界最多で、現在のFIFAランキングでも1位を守っている。
一方で米国男子代表は同ランク13位。それにもかかわらず、女子代表が男子代表より収入が劣るのは性差別であるとして、米国女子代表チームはかねてから米国サッカー連盟を相手取り訴訟を起こしていた。世論が性差別反対を後押しする中、米国サッカー連盟がついに男女不平等の解消へと動き始めた。
米国サッカー連盟は今月14日、男女代表チームそれぞれの選手組合に対して、同一内容の契約を提示したと発表した。歴代の女子代表チームが行ってきた訴えに連盟側が応えたものと見られている。同連盟は声明にて「米国サッカー連盟は男女代表チームの給与体系を統一することが、すべての関係者と米国のスポーツの未来のために最善の道であると強く信じています」と主張した。
ワールドカップのボーナスも平等化できるか
米国サッカー連盟はさらに男女別々で行われるFIFAワールドカップの賞金も平等化する方法を模索していると述べている。しかし、これには大きな困難が伴う。大会そのものに動く金額が桁違いに異なるためだ。
2018年の男子ワールドカップの賞金総額は4億ドル(約444億円)。32チームが参加し、優勝したフランスは3800万ドル(約42億1000万円)を獲得した。一方、2019年の女子ワールドカップでの賞金総額は3000万ドル(約33億3000万円)と10分の1以下。24チームが参加し、優勝した米国は400万ドル(約4億4000万円)しか獲得しなかった。
FIFA会長のジャンニ・インファンティーノ氏は2023年の女子ワールドカップで賞金総額を2倍にすることを提案しているが、それと同時に2022年の男子ワールドカップの賞金総額も4億4000万ドル(約488億円)に増額することも提案している。男女の報酬格差は依然として大きいままだ。
2014年ワールドカップに出場した米国男子代表チームは決勝トーナメントに進出し、選手1人当たり18万7000ドル(約2070万円)のボーナスを受け取った。一方で、2019年ワールドカップで優勝した米国女子代表チームの選手1人あたりのボーナスは14万8000ドル(約1640万円)だった。
男女それぞれの選手組合は別組織であり、同連盟は契約を個別に行っている。同連盟は透明性を確保するため、それぞれの選手組合との契約に相手の選手組合も同席してほしいと声明にて提案している。
2019年の女子ワールドカップ決勝戦では、2連覇を達成した米国女子サッカー代表チームに観客スタンドからは「Equal Pay」(平等な収入)と叫ぶ声援が送られた。オーストラリアとニュージーランドの共催で開催される2023年大会では、そのような光景を見ることがないよう、問題解決に進んでほしい。