CULTURE | 2021/09/21

なぜ華丸大吉は全国各地からオファーが絶えないのか?「30代半ばで上京」の遅咲きながら登り詰めた理由【連載】テレビの窓から(10)

イラスト:IKUMA

木村隆志
コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者
「忖度なし」のスタンスで各媒体に毎...

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「欠点がない」ことを感じさせない

その笑いの技術を培ってきた過程も、彼らを起用する側の業界関係者たちを魅了している。博多華丸・大吉が福岡で結成したのは1990年で、当時2人は大学生。その後、福岡吉本に所属して徐々に地元の人気者になり、トークやロケの技術を地道に磨き上げていった。

しかし、2人が上京したのは結成から15年後の2005年。すでに35歳を過ぎ、福岡ではスターだったが、東京では年下の若手芸人に混じってシビアな戦いに身を投じることになった。

そこで2人は福岡で培った力を元に、ジワジワと結果を出し始めていく。まず華丸が得意のモノマネを生かしたネタで『とんねるずのみなさんのおかげでした』の「博士と助手~細かすぎて伝わらないモノマネ選手権~」と『R-1ぐらんぷり』で優勝。一方の大吉は『アメトーーク』で披露した「焼却炉の魔術師」などのエピソードトークでフィーチャーされるようになっていた。

さらに2人は2014年の『THE MANZAI』(フジテレビ系)で優勝。モノマネ、トーク、漫才と異なるジャンルで結果を出せたのも、福岡時代から地道にキャリアを重ね、技術を磨いてきたからであり、それが視聴者とテレビマンの双方に浸透していることが現在のポジションにつながっている。

加えて、「芸人仲間たちから慕われている」「『東京に染まらない』と宣言して博多愛を貫く」などのキャラクターもあり、どこをどう切り取っても良いところしか出てこない。これだけ欠点がなく、批判されにくい芸人は希少であり、よほどのスキャンダルがない限り今後も安泰だろう。

博多華丸・大吉というコンビの本質は、その「欠点がなく、批判されにくいことを人々に感じさせない」という凄みにある。前述したように「笑いの技術の高さも感じさせずに笑わせられる」ところも含め、まさに「能ある鷹は爪を隠す」という言葉が似合う芸人コンビだ。


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