CULTURE | 2021/09/21

なぜ華丸大吉は全国各地からオファーが絶えないのか?「30代半ばで上京」の遅咲きながら登り詰めた理由【連載】テレビの窓から(10)

イラスト:IKUMA

木村隆志
コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者
「忖度なし」のスタンスで各媒体に毎...

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ファミリー層に合う穏やかな芸風

現在、「芸人コンビがメディアで活躍するために欠かせない要素」と言われているのが、仲の良さ。たとえば、サンドウィッチマン、バナナマン、オードリー、千鳥、かまいたちなど、コンビ仲の良さで知られる芸人コンビがゴールデン・プライム帯の中核を担っている。

これは芸人に限った話ではなく、女性アイドルグループでもトップシーンにいる乃木坂46や日向坂46に、かつてのAKB48が総選挙でバチバチだったようなムードは見られない。その他、ジャニーズ、JO1、NiziU、BE:FIRSTなど、男女を問わずさまざまなグループに同じ傾向が見られる。

視聴者がエンターテインメントに刺激より癒しを求めるように変わり、芸人たちも「どつき合う」のではなく「じゃれ合う」ようなシーンが増えた。その意味で、華丸のボケに大吉が頭をはたくのではなく、優しくたしなめるようなツッコミを入れる芸風は現在の視聴者嗜好にフィット。2人の笑いは他人を傷つけず、後輩に圧を感じさせることもないため、視聴者は安心して見ていられる。

昨春の視聴率調査リニューアルによって民放各局が10~40代の視聴者を狙った番組を量産するようになったが、これも博多華丸・大吉への追い風の1つ。博多華丸・大吉の穏やかな笑いはファミリー層との相性がよく、広告関係者からの評価も高い。

ただ、博多華丸・大吉は穏やかな笑いだけでなく、企画や視聴者層に合わせて毒も吐けるし、一般人と絡むロケや大喜利も上手く、表情だけで笑わせることもできる万能タイプ。朝番組と深夜番組で見せるギャップも彼らの魅力であり、前者では主婦を、後者では独身男性を笑わせている。好感度や親近感の陰に隠れがちだが、笑いの技術が業界トップクラスだからこそ、後輩芸人たちに取って代わられることはない。

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