CULTURE | 2021/09/08

肉厚ベーコンがたまらない!八ヶ岳で40年以上続く欧風カレーの名店「ヴィラ・アフガン(山梨・甲斐大泉)」【連載】印南敦史の「キになる食堂」(6)


印南敦史
作家、書評家
1962年東京生まれ。 広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、 音楽雑誌の編集長を経て...

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「ずっと食べていたくなる」極上カレー

メニューを開いてみると、右側に「復刻」と書かれた「ショルダーベーコンエッグカレー(税込1650円)」を見つけた。そう、これだ。前に来た時にも、看板メニューであるこれを迷わず頼んだのだった。だとすれば、もうこれしか考えられない。

辛さは「A(ふつう)」「B(やや辛い)」「C(大辛)」「ウルトラC(激辛)」があり、辛いもの好きとしてはウルトラCを頼みたい気もしたのだが、念のためCの大辛にしておいた(小心)。ライスは、お茶碗2杯分だというMで。

待っている間に真正面のカウンターに目をやると、右端に1970年代の製品だと思われるプリメインアンプが見えた。店内に流れるジャズは、あのアンプを通して響いているんだな。そんな当たり前のことを思い、それだけで来た甲斐があったような気分になる。柔らかな印象をたたえた音楽とともに、昭和の時代の空気がいまも流れ続けているように感じたからだ。

そんなことをぼーっと考えていたら、ほどなくショルダーベーコンエッグカレーが登場した。

ライスの上には、皿の直径とほぼ同じ長さのベーコン。そして、その向こう側には目玉焼きが2つ。もちろん、理想的な半熟状態だ。フォークで突いてみれば、黄身がとろりと流れ出す。たまらん。カレーは丸いソースポットに入っていて、福神漬けのポットもついてくる。

じっくり煮込まれたカレーは、辛さの中にすっきりとした味わいを感じさせる欧風タイプ。大辛でもそれほど辛くはなく(個人的な印象)、いっそ激辛にすればよかったかなとも感じたが、それでも食べ進めると体が温まってくるのがわかる。非常にバランスのとれた上品な味で、行列ができるほどの人気店であることにも納得できる。

ベーコンは、ただ大きいだけでなくステーキのような分厚さ。ナイフで切ってみると、強い弾力を感じさせながらもすっと切れるので心地よい。肉は滋味深く、カレーと見事に共存している。

すべてにおいて期待どおり、いや、その上を行っているので、いやが上にも食欲を刺激されてしまう。おかしな表現だが、食べていること自体を楽しめるので、「できれば、いつまでも食べ続けていたい」などと、おかしなことまで感じてしまうのである。

食べ終えてから、オーナーの水谷逸美さんにお話を伺った。亡き先代のパートナーとして、創業時からこの店を支えてきた方である。穏やかな口調でお店の歴史を語ってくださったが、聞けば創業は1977年らしい。

つまり、今年で44年目。以前訪れた時はまだお店も創業14年くらいしか経っていなかったということになる。そう考えると、ちょっと意外な気もする。当時からすでに、長い時間を経過してきたような雰囲気をこの店はたたえていたからだ。

しかも、そんな印象は現在も変わらない。あの時から、いい意味で時間が止まっているかのような気さえする。それは、水谷さんをはじめとするお店の方々が、原点を誠実に守り続けているからなのだろう。

すでに次の代へと店は引き継がれつつあるというので、その本質は今後もしっかりと継承されていくに違いない。

伺ってみて本当によかった。次回はぜひ、妻も連れて行きたいと思う。


ヴィラ・アフガン
住所:山梨県北杜市大泉町西井出8240-3510
営業時間:昼:11:30~14:30(L.O. 14:00)、夕:17:00~19:00(L.O. 19:00)
定休日:火曜日(月曜日は昼のみの営業)

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