CULTURE | 2023/09/07

「6本腕を生やす東大教授」や「中国の検閲をテーマにした作品」が登場…オーストリアの巨大アートフェスが開催中

文:赤井大祐(FINDERS編集部)
日本人も多数参加する歴史あるイベント
世界最大級のメディア・アートの祭典『Ar...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

文:赤井大祐(FINDERS編集部)

日本人も多数参加する歴史あるイベント

世界最大級のメディア・アートの祭典『Ars Electronica Festival 2023』が、オーストリア・リンツ市にて、9月6日〜10日の間で開催されている。

イベントと同名のメディア・アート拠点である「アルス・エレクトロニカ」によってオーストリアの地方都市であるリンツ市で開催される本イベント。電子音楽のフェスティバルとして1979年に第一回を開催して以来、アーティストや研究者が集い、「先端テクノロジーがもたらす新しい創造性と社会の未来像」を社会に提示し続けてきた。

イベントに先駆け、アルスエレクトロニカによるコンペティション「Prix Ars Electronica」の受賞者の発表が7月に行われ、その表彰式も今回のイベントにて行われる。

日本からの参加者も非常に多く、これまでに「OriHime」で知られる実業家の吉藤オリィ、アートユニットの明和電機、ライゾマティクス・真鍋大度らによる『パフュームグローバルサイトプロジェクト』、坂本龍一×岩井俊雄、音楽家のやくしまるえつこ、池田亮司など、多くの日本人アーティスト・研究者が参加し、主要な賞を受賞してきた。また伝説的なシンセサイザー・アーティストの冨田勲の名を冠した「Isao Tomita Special Prize」という部門の賞も設けられている。

ちなみにフェスティバルの「About」ページの冒頭を飾るのも日本人アーティストの藤堂高行による作品「SEER」だ

今年の日本からの受賞者は二組。「New Animation Art」部門で、Rhizomatiks x ELEVENPLAY “multiplex”が 栄誉賞(Honorary Mention)を受賞。現代アーティストの赤松音呂と中部大学応用生物学部教授の大場裕一による『およそ芸術とはホタルとともに始まった(Perhaps, art begins with the fireflies)』が「Artificial Intelligence & Life Art」部門にて同じく栄誉賞に輝いた。

Rhizomatiks x ELEVENPLAY “multiplex”

『およそ芸術とはホタルとともに始まった(Perhaps, art begins with the fireflies)』

ちなみにこちらの2部門の最優秀賞である「GOLDEN NICA」に輝いた作品もご紹介したい。

「New Animation Art」部門では、韓国人作家のキム・アヨンによる映像作品『Delivery Dancer’s Sphere』が受賞。韓国・漢江をベースに作られた架空の都市をデリバリーライダーの女性がAIの指示に従いながら走り抜ける、実写とCGアニメーションを合成した作品だ。

「Artificial Intelligence & Life Art」部門では、香港出身の研究者ウィニー・スーンによる『Unerasable Characters Series』が受賞となった。中国最大のSNS「微博(ウェイボー)」上で、中国政府によって検閲された投稿のテキストデータをもとに、その言葉が発せられ、消去されるまでの「時間性」を追求したインスタレーション作品だ(両作品の詳細は是非こちらの受賞ページ一覧から確認してほしい)。

「Delivery Dancer’s Sphere」

「Unerasable Characters Series」

現地ではさまざまな展示が行われおり、静的に見える「物」の流動性を探求する、東京大学の筧康明研究室による4つのインスタレーション展示『Becoming Different』や、同じく東京大学の先端科学技術研究センターの稲見昌彦らによる、まるで義肢のように装着することで4本の腕を自在に操る『自在肢』といった作品も参加している。

今から現地に向かって作品を観る……というのは現実的ではないが、来年の開催に備えて、受賞作品をチェックしてみても楽しいだろう。


『Ars Electronica Festival2023』

Ars Electronica Japan