ITEM | 2023/09/01

専門家が本気で考えた「通勤用のEバイク」の選び方とオススメ5選

どうせ買うなら機能やデザインに優れたモノを。E-Bikeは既存のペダルバイクにはなかった個性的なモデルも多く、カタログを...

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どうせ買うなら機能やデザインに優れたモノを。E-Bikeは既存のペダルバイクにはなかった個性的なモデルも多く、カタログを見ているだけでも気分が上がります。

ただ、“モーターがアシストしてくれる”からデザイン重視……でベストな1台は見つかりません。そこで、今回は機能面からアプローチして通勤用に向いたE-Bikeを探してみましょう。

菊地武洋

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自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。

自転車選びの前に気にするいくつかのポイント

最初にすべきことは、自転車通勤の可否。以前と比べて、自転車通勤を認める企業が急速に増えていますが、交通事故のリスクを回避するため禁止している会社も少なくありません。基本的に通勤中の事故は労働災害になるため、まずは確認が必要です。

続いては、自宅での駐輪スペースをどうするか。なにせE-Bikeは人気アイテムですから、盗難には十分に気をつけたいところ。言うまでもなく室内保管が望ましい。ただ、モデルによって違いがあるとはいえ、E-Bikeの重量は約20㎏。一戸建てなら玄関までに階段がないか? マンションならエレベーターの大きさだけでなく、自転車を載せられない規約があることも。

そして、駐輪場所の確保は自宅だけなく、会社側にも必要です。会社の敷地内に専用スペースがあればいいのですが、駅周辺にある自転車用コインパーキングなどを使う予定なら、チェックしておきたいポイントがあります。それはホイールを固定するラックの幅。クロスバイクタイプなどで採用されている30C程度までは問題ありませんが、極太タイヤに非対応です。

ファットバイクやE-MTBを購入しようと思っている人には厳しいハードルですが、こちらの問題も購入前に解決しておきたいところ。MTBタイプは駐輪スペースが狭いと、隣の自転車にハンドルが当たってしまい、駐輪するのが大変なこともあります。

予算の目安は必要最低限の性能だけなら15万円。20万円以上あるとE-Bikeらしいデザインや、最新の機能を搭載したモデルが選べるようになります。高価だと感じる人も多いでしょうが、電車の定期代で考えれば、案外、元を取るのに時間がかからないことに気がつくはずです。

いよいよモノ選び

スペックを並べても分かりにくいので、オススメモデルを紹介しながらE-Bike選びのポイントに触れていきましょう。

SPECIALIZED Turbo COMO SL4.0

SPECIALIZED(スペシャライズド)のTurbo COMO SL4.0(ターボ コモSL)は、ブレーキホースや変速ケーブルがフレーム内に納められているので、シンプルでクリーンなイメージの人気モデル。

アシストを行ってくれるドライブユニットは車体中央にモーターがあり、アシストはクランクを介して行われます。このタイプはクランク合力タイプとも呼ばれ、アシスト感が自然なのもアドバンテージです。また、バッテリーはダウンチューブ内に内蔵されており、ドライブユニットとともに低重心化に貢献している。

自社開発の超軽量スペシャライズドSL 1.1モーターのピーク出力は240W / 35Nm。最大でライダーの漕いだ力の約2倍(180%)までアシストします。これは高価なスポーツE-Bikeと変わらぬ出力です。

そして、アプリの出来の良さもスペシャライズドの魅力の1つ。モーターの出力やバッテリーの消費量を細かく調節できるだけでなく、フィットネスの目標達成に必要な指標や、トレーニングに役立つパワーデータを表示します。コネクティビティに優れているのは、いかにも最新のE-Bikeらしいアドバンテージでしょう。

バッテリーを外して充電できないのは弱点ですが、レンジエクステンダー(補助バッテリー)が用意されているなど、他の製品にはない魅力もあります。また、フロントバスケットやマッドガードなど通勤に必須のアイテムが最初からスペックインしているのも、さすが。35万2000円。

BRUNO e-tool

BRUNO(ブルーノ)のe-toolは拡張性を重視したい人向けのE-Bikeです。多くの小径車はキュートなスタイリングで人気がありますが、ハンドリングが不安定です。ホイール剛性は高く、路面の凹凸に対して弱点を抱えています。しかし、e-toolは20インチと小径ながらホイールベース(前輪と後輪の距離)がしっかりと確保され、安定感のある走行感です。タイヤ幅も2.1インチとワイドなので、多くの小径車が抱える快適性の低さを克服しています。

リアキャリアは最大積載荷重50㎏(走行時は30㎏)、通勤にはオーバースペックですが、休日にバッグを装着してツーリングに出かけたり、荷物を運んだりといった使い方にも対応します。

ドライブユニットはシマノ製STEPS DU-E5080を採用しています。これもセンターモーターのクランク合力タイプです。低速時に気になる騒音も小さく、発進時や上り坂でのアシスト感は、まるで誰かが背中を押してくれるかのような自然なフィーリングで高い評価を得ています。バッテリーの取り外しができるので、充電時に車体を室内に持ち込まなくてもいいのも大きなポイントになります。29万9200円。

CANNONDALE Adventure Neo 3EQ

前傾姿勢の浅いリラックスポジションで通勤からポタリングまで、守備範囲の拾いCANNONDALE(キャノンデール)のAdventure Neo 3EQ(アドベンチャーネオ3EQ)。ステップスルーフレームを採用して身長149〜170㎝までをカバーするので、家族で兼用するのにも適しています。

ドライブユニットは世界的に大きなシェアを誇るボッシュ社のアクティブラインプラスを採用。モーターは最大50Nmのトルクを発生させ、最大航続距離は133㎞。バッテリーの充電はフレームにプラグインで行なうことも、取り外して行なうことも可能です。

道交法では時速10㎞以下で、ペダルを踏む力の200%のアシストが認められています。ところが、実際に200%まで使うメーカーはありません。ルールの範囲内で、どのようにパワーマネージメントするかがメーカーの演出なのです。

走り出すときの加速はパワフルなほど良さそうに思えますが、そうではありません。アシスト力が強すぎると扱いにくいだけでなく、航続距離も短くなってしまいます。キャノンデールのE-Bikeは出力を大きめにマネージメントしているのが特徴。ライバルと同等のカタログスペックでも、走りの力強さは折り紙付きです。

スポーティな走りをしても安心なディスクブレーキ、舗装の良くない道や段差でもスムースに走れるサスペンションフォークなど、街乗りには贅沢な仕様なのもキャノンデールらしいこだわりでしょう。また、スタンドやリアキャリアも標準装備し、目につく価格を安くすることに腐心しないのも美点です。30万8000円。

パナソニック・ゼオルトL3

パッと見はどこにでもある普通のクロスバイク。あからさまなデザインではなく、さりげないE-Bikeに仕立てているのがパナソニック・ゼオルトL3です。

ゼオルトの絶対的なアドバンテージは自社開発のドライブユニット「カルパワードライブユニット」を搭載です。このユニットは子乗せがついたシティサイクル用ドライブユニットがベースとはいえ、スポーツバイク用に制御を見直しているといいます。2軸タイプやチェーン合力と呼ばれるドライブユニット方式で、アシスト力はチェーンに与えられることとなります。

このタイプはレスポンスこそ1軸タイプ(クランク合力)タイプに及ばないものの、加速が伸びるような印象が強いのが特徴です。ちなみにブラシレスモーターの出力は250w。高価なスポーツタイプに引けを取らないポテンシャルを秘めています。家電で培われてきたノウハウをいかしたセンサー類の完成度は、ライバルメーカーの開発陣も羨むほど。見た目は普通のクロスバイクのようですが、海外のスタイリッシュなバイクに一歩も引けを取りません。

弱点はアシスト距離。最大で90㎞(エコモード)、オートモードで58㎞、ハイモードでは45㎞しかないこと。片道10㎞の通勤だと3日に1度は充電が必要です。バッテリーの仕様は25.2V-12.0Ah (定格303Wh)。他のバイクと比べて見劣るようにみえますが、悪いことばかりではありません。自転車において軽さは正義です。バッテリーが小さければ軽くなるので、運動性能は加速・減速ともに良くなります。そして、予備バッテリーを購入するときも安く済みます。19万5000円。

SMALO by Besv LX2

最後に紹介するのは、どことなくVanMoofを彷彿とさせるSMALO by Besv(スマーロ・バイ・ヴェスビー)のLX2。ヘッドライトを内包したトップチューブやスマートなスタイリングは、いかにも新世代のモビリティツールといった風情があります。

機能面で注目したいのは「AI ドライビングシステム」を搭載している点です。これはペダリングトルク、ケイデンス(ペダル回転数)、スピードセンサーによって、常に最適なアシスト出力を自動計算し、路面状況に応じた最適なギアをAIが判断し変速するというもの。

自動変速はすでに実績のあるメーカーで、アルゴリズムを用いた変速システムは、初心者やメカが苦手な人から重宝がられてきました。自転車の操作に気をとられることなく、景色を見たり、走ることに専念するのであれば理想的なシステムと言えます。

自動点灯のヘッドライトにはじまり、ブレーキランプには加速度センサーを内蔵、チェーンステーにあるE-LOCKはアプリをスワイプして解錠します。ハンドルを支えるステムはモニタ一体型と随所に先進性を満載しているのも大きな魅力です。44万8000円。

まだまだ新興の業界。モデル選びは慎重に

今、E-Bike業界は、新興メーカーによって、新しい風が吹き込まれています。しかし、粗悪なE-Bikeが多いのも現実です。また、ユーザーの目が肥えていないのも、残念なモノ選びにつながっており、日本の法令に反したモデルも多く目にします。

E-Bikeのドライブユニットは、トラブルが起きるとメーカー修理となることがほとんどです。ですから、サービス体制がしっかりとしたバイクを選ぶのも大切なポイント。新興メーカーはユニークですが、リスクがあることも忘れずに。