ITEM | 2023/04/12

累計4000万個「ファービー」 はなぜ売れた?歴史的メガヒット商品が持つ「ある共通点」

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3回目となる連載「高橋晋平のアイデア分解入門」。普段はおもちゃやゲーム、遊...

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3回目となる連載「高橋晋平のアイデア分解入門」。普段はおもちゃやゲーム、遊びを作り出す仕事をしてる私、高橋晋平が、身の回りにある物から、アイデアや工夫、発想の種を見つけ出そうという試みです。

今回のテーマは「ファービー」。あのなんともいえない独特なフォルムとつぶらな瞳、鳴き声。あなたの家にも一匹いたのではないでしょうか。

1998年にアメリカのTiger Electronics社が発売し、日本では1999年にタカラトミーから販売されました。初代ファービーの販売個数は、国内では約330万個、世界では約4000万個とまさに桁違いの売れ方。ファービーは、なぜ爆発的なブームを巻き起こしたのか? ちょっと変わった視点から考えてみたいと思います。

高橋 晋平 (たかはし しんぺい)

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おもちゃクリエーター、アイデア発想ファシリテーター。秋田県生まれ。2004年に株式会社バンダイに入社。第1回 日本おもちゃ大賞を受賞し、発売初年度に国内外累計335万個を販売した「∞(むげん)プチプチ」など、イノベイティブトイの開発に約10年間携わる。14年に株式会社ウサギを設立。玩具・ゲームの考え方を活かした事業を企業と共同開発し、企画アイデアの発想セミナーやワークショップを全国で実施している。得意なのは笑い・遊びのある企画を作り、話題にし、販売につなげること。TEDxTokyoでのスピーチは累計200万回再生。近著『1日1アイデア』(KADOKAWA)など、著書多数。

構成:北村有

爆発的なブームに「理屈」はない?

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おもちゃの歴史を見ると、「ファービー」のように、桁違いの売り上げを記録した“歴史的ヒット商品”が存在します。

たとえば「たまごっち」(※2018年3月末時点で累計8200万個以上)や「モンチッチ」(※2014年時点で7000万体)はどちらも数千万単位というとんでもない数を売り上げました。さらに時代を遡ると、「けん玉」や「フラフープ」なんかもそうですね。これらに共通して言えるのは「規格外の売り上げをあげた」こと、そして「理屈を超えたおもしろさ」、言い換えるなら「企画会議で売れる理由を理論的に説明できなさそう」なことだと思うんです。

ではちょっと考えてみましょう。

あなたはおもちゃ会社の社員で、今度の企画会議で「ファービー」のプレゼンをしなければなりません。「ファービーは◯◯な理由で、これだけ売れるので商品化しましょう」と、社内を説得するために、どのような理屈や根拠をもって説得に臨みますか?

………。

どうでしょう?「たまごっち」「モンチッチ」「フラフープ」でもいいです。これが人気キャラクターを使った商品だったら、明快なロジックを提示できると思いますが、こういったおもちゃは理由付けがとても難しい、というかできなかったのではないかと思います。

僕がバンダイ時代に企画した「∞(むげん)プチプチ」も、発売初年度だけで355万個を売り上げましたが、これも正直、売れる理由を説明できなかった。けれど「間違いなく売れる」という確信はあったので、どうしても商品化にこぎつけたかったわけです。

ファービーもたまごっちも決して理屈で売れたものではないはずです。「この商品は本当に面白い!」と確信している作り手がいたからこそです。まずは自分が心から「面白い! キモかわいい! 笑える!」と思えるものを作る。そして、後付でもいいから、プレゼンを通すにはどうすればいいのか、その部分に頭を使うのがポイントだと思いました。

プレゼンに知恵を絞る働き方

「∞プチプチ」商品化の道のりは、僕のキャリアの中でも特にプレゼンに力を入れた場面でした。

まず役員プレゼンの際、資料の間にプチプチシートを挟み込むという作戦をとりました。人は手元にプチプチがあると潰さずにはいられない、「これは“アフォーダンス”と呼ばれる認知心理学上の効果です」と説明する。実際に役員たちは手元でプチプチを潰し始めているので、非常に説得力がありました。

また「透明なケースに入れて販売すれば、見た人は押したくなるので売れますよ」と、実際に商品とお客さんが対面する売り場を使って説明するなど様々な工夫を凝らし、最終的に商品化の許可を得ることができたんです。

そして仲間を作ることも重要。自分以外誰一人として面白がってくれないのであれば、「思い込み」という可能性も高いかもしれません。でも誰か一人でも自分に近い熱量で面白がってくれる人がいるんだったら、きっと社会に受け入れてもらえる可能性も高いはずです。

最初から理路整然と「売れる理由」を説明できたほうが、企画会議には通りやすいし、会社としても安心して売り出すことができる。でも、それだとどうしても限界があって、爆発的なヒットには繋がりにくいと思うんです。その限界を突破するために、一人の作り手の「売れる!」という思い込み、そして一見無茶な企画を「通すための知恵」が必要です。

もちろん会社ではマーケティング的な考え方で理屈や根拠を揃え、安定したヒットを生み出すことも必要。でもそれと平行して、「絶対にヒットする」「世に出すべきだ」という、自分のうちから湧き出るアイデアを「通す」ために知恵を絞ることに是非挑戦してみてください。


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