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EVENT | 2023/03/20

地域産業活性化に全力で取り組み「知の母港として」 福井大学 産学官連携本部

文:児島宏明
地域の「知と商」の融合を目指す、産学官のハブ組織

2023年1月に開催された第32回FUNTECフ...

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文:児島宏明

地域の「知と商」の融合を目指す、産学官のハブ組織

2023年1月に開催された第32回FUNTECフォーラムでの、福井大学研究シーズ発表会の様子

福井大学 産学官連携本部は、地域産業界との連携ネットワークを駆使し、産学官が一体となって地域産業の活性化に取り組む研究拠点。福井県発のイノベーションを推進する「ふくいオープンイノベーション推進機構(FOIP)」と密接に連携しながら、大学が持つシーズを地域産業に還元する活動を行っている。

同拠点の具体的な取り組みは下記の通り。

大学と産業界をつなぐFUNTECフォーラム、産学官連携本部協力会
地域産業界と福井大学の交流を目的とした「FUNTECフォーラム」を年に1回開催。また、大学の経営陣と地域企業の経営者、経営に携わる方々が交流する「トップ懇談会」など、異分野の交流が活性化するイベントを立ち上げている。

産学官連携本部協力会は、県内企業・産業の活性化と技術の高度化、 講習会・セミナーによる人材の育成を目的とした組織。プロジェクトごとに大学と連携して新技術・サービスの開発を行う。

ものづくりの場の整備と地域経済の発展に欠かせない人材の育成

大学院の学びにより実践的な工学教育を実施し、スキルが高く、また視野の広い人材の育成を目的とした「実践型技術者経営マネージメントカリキュラム

本部内では社会実装を目的に新技術・サービスの開発・研究を行う「社会実装研究センター」、大学が保有する研究設備・機器を解放し、企業の技術開発や試作品の検証に活かしてもらう「テクニカルイノベーション共創センター」など、産学が共同で研究・開発に取り組める、「ものづくりの場」を整備している。

また技術革新・技術経営の知識・経験を有する人材の育成を目的に、福井大学の学部・大学院双方で副専攻を実施。 代表的な取り組みとしては、工学技術の社会実装を広く学べる「経営・技術革新コース(大学院工学研究科副専攻)」がある。また、「株式会社ミッション起業推進基金事業」など、学生起業マインドを支援するための取り組みも実施している。

「地域産業の未来を切り拓くようなサービスや事業を生み出すには異分野の連携が大切で、大学・自治体・産業界が一緒になってプロジェクトに取り組むことが重要です。私たちの大きな役割は、異分野のハブとなり、交流を活性化したり場を整備したりすることで、産学官連携本部のすべての活動はその実現のための取り組みと言えます」(産学官連携本部 本部長 米沢晋教授)

産学連携による社会実装を目指す3つのプロジェクト

同本部が実施するさまざまな活動は、多くの知と商の交流を生み出し、社会実装を目的にした複数のプロジェクトが走り出している。中でも、特に研究・開発が進んでいるのは以下の3つのプロジェクトだ。

繊維染色における無水染色技術

研究に使う実験装置「超臨界二酸化炭素ミニプラント 容量5L」

地域の繊維産業に対して福井大学が技術シーズを提供して進められているプロジェクト。水の代わりに超臨界状態の二酸化炭素を用いる「超臨界流体染色」の研究・開発を実施。将来的な水不足や廃水による環境汚染・処理コストの増大を解消する技術として注目を集めている。

スマートグラス用の光学エンジンの研究・開発

福井大学発のベンチャー企業「ウイニングオプト株式会社」と福井大学が共同で研究・開発をすすめるプロジェクト。スマートグラスをはじめ、車載用ヘッドアップディスプレイなどに搭載できる超小型・高効率・高信頼の光学エンジンを開発。

超小型人工衛星の量産製造

ルワンダ共和国向けに開発した「RWASAT-1」という人工衛星。ルワンダの田畑のモニターする

福井県企業と福井大学が共同で研究・開発をすすめるプロジェクト。高精度な超小型人工衛星の研究・開発と量産製造に取り組む。合わせて、人工衛星で広範囲の空間情報と分光情報を測定する「ハイパースペクトルカメラ」の研究・開発も実施。

「これらは研究拠点として社会実装研究センター、テクニカルイノベーション共創センターといったものづくりの場が活用されており、知と商の融合による産業の活性化という、私たちが目指すべきひとつの形を示せた事例だと考えています」(米沢氏)

産学官連携本部は気軽に立ち寄れる『知の母港』

米沢晋氏

一方で地域産業の活性化という観点ではまだまだ課題が多いと米沢氏。特に課題と感じているのは「研究・開発の戦略的なプロモーションやブランディング」だ。

「今進めているプロジェクトが上手く社会実装できても、認知が広まらなければその利益はなかなか地域社会に還元されません。戦略的なプロモーションとブランディングでプロジェクトひとつひとつの価値を最大化させることが今後の大きな目標です」(米沢氏)

「地域企業の方々が必要に応じて立ち寄り、知識を吸収したり、アイデアを出し合ったり、試作品を作ったりと、気軽に立ち寄れる『知の母港』のようなイメージで、よりよい場所として機能するために、今後もさまざまな取り組みにチャレンジしていきます」(米沢氏)


福井大学 産学官連携本部

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