CULTURE | 2020/10/30

隆盛を極めるインフルエンサーの始祖「ブロガー」は本当に感度が高い人?イベントに参加し感じた界隈の空気感【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(17)

Photo By Shutterstock
過去の連載はこちら

中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
1...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

ブロガーは目ざとくお得情報を見つける節約型の人

Photo By Shutterstock

さて、2000年代中盤のブロガー界隈の空気感を振り返っておこう。まず、ブロガーイベントだが私も取材で行ったことがある。上記の例同様ビールだったのだが、とあるプレミアムビールの新商品の発売日にラグジュアリーなバーでブロガーが大勢集まり、そのビールを飲み、よく合うというつまみを食べる会である。終了後にはこのビールとノベルティグッズをもらえる。

「感度とアンテナが高く、好奇心旺盛で良いものを見抜く力がある最先端の人々」というよりは、「新し物好きではあるけど、タダで飲み食いしたり、挙句の果てにはちょっとしたお小遣い稼ぎもできる懸賞や宝くじが好きな人々」のように感じられた。何しろ、このイベントに参加した人のブログを過去にまで遡ると、本当に多くのイベントに参加しているのである。プレミアムビールとは対極の味わいである発泡酒のブロガーイベントにも参加して「おいしかった!」なんて書いている。果たしてこの人が「感度が高い」のだろうか? 「目ざとくお得情報を見つける節約型の人」としか私には思えなかった。

また、記者会見もこの頃、新展開になっていた。前方に記者席があり、後方にブロガー用の席が用意されることがしばしばあったのだ。これには記者から「なんでトーシローがこの聖域に入ってくるんだよ」と不評だった。記者同士が和やかに喋ることなどはあまりないが、開始前、後ろの方では「あなたが○○さんでしたか!」「えっ、××さんですか! いつもブログ呼んでます!」のように楽しそうに交流しているブロガーの姿も癪に障ったのかもしれない。

まぁ、これは「そういう時代なんですよ」と記者に言いたくもなるが、プロのモノカキがバカにされるきっかけにはなったことだろう。文章なんて誰にでも書けるものだから、私にだってできるはずだ。記者なのにその程度の文章しか書けないでお金をもらえるって羨ましいですね――こんなことを言われることが増えた。かつて雑誌の編集者をしていたが、読者ハガキにそんなことが書かれていることは皆無だった。すでにその雑誌が好きで、プレゼント狙いの人が送ってくれているだけに、悪いことを書かない傾向にあるのは分かるが、それにしてもこの落差は激しい。

次ページ:かつてのあのブロガーたちの今