文:山田山太
人生には、自分ひとりの力ではどうすることもできない挫折が起こりうる。
とある犬との出会うことで、そんな辛い経験から立ち直り、さらに前進していったボディビルダーの物語を紹介したい。
妻に別れを告げられたボディビルダー
アメリカ・メリーランド州に住むボディビルダーのボビー・ハンフリーズさん(現在48歳)は、2016年の大晦日に、17年連れ添った妻から別れを告げられた。ボビーさんは気を落としながらもトレーニングに打ち込み続けたが、妻と別れてから1週間が経ったある日のトレーニング中、肩に大怪我を負ってしまった。
予期せぬ不幸が続いたボビーさんは、周りに頼れる人もあまりおらず、そのまま深いうつ病に陥った。一時は自殺未遂まで起こすほどだったという。ボビーさんは『Boared Panda』の取材に対して、「私にとって妻は世界そのものだったんです」「ただお酒を飲み続けるだけの日々でした」と当時を振り返った。
友人のチワワと意気投合
ボビーさんが沈んだ気持ちで過ごしていたある日、友人のコンスタンツ・ロジャーさんから「数カ月の間、うちのレディを預かってほしい」と連絡を受けた。「レディ」とはロジャーさんが飼うチワワで、人間の男性のことを極度に嫌うという話を以前から聞かされていた。ボビ―さんは少しためらったが、この辛い日々の中、手助けしてくれた数少ない友人に恩返しをしようと、引き受けることにした。
こうしてレディとの生活を始めてから数日が経ったある日、ボビーさんが仕事から帰宅すると部屋に置かれた犬小屋からレディがこちらは覗いていることに気が付いた。ボビーさんはそのまま15分ほどレディのことを眺めていたが、犬小屋に閉じ込められている姿を不憫に思い、噛まれても構わない、とレディを犬小屋から出すことにした。
しかし、レディはボビーさんのことを噛むようなことはなかった。それだけでなく、レディはボビーさんの膝に座った。彼らはすっかり意気投合。数カ月が経った頃には、信頼関係が生まれていた。ボビーさんは「レディは私に文字通り無条件の愛情を注いでくれて、私を立ち直らせてくれたんです」と、レディとの出会いを通してうつ病から脱することができたと『Jam Press』に語った。
50匹の小型犬に囲まれて過ごす
レディとの確かな関係を築いたボビーさんだったが、いずれはロジャーの元へ返さなければならないことを考え、レディに代わる新たなチワワを探すことにした。ボビーさんは保護施設やブリーダーの元を訪れてみると、さまざまな不幸を背負った多くのチワワたちと出会った。
最初に出会った「キラ」は食事中に近づかれたりすると、過度に怒ってしまう「フードアグレッシブ」という症状を持っていた。その次に出会った「ハーレー」と「クイニー」の姉妹は近親相姦によって生まれたため、他の犬と比べ醜い見た目をしていた。いずれの3匹も誰にも引き取ってもらえなかった。
そんな犬たちの出会いを重ねたボビーさんは2018年、虐待などを受け人間から見放されてしまったチワワのための保護施設「ビッグガイ・リトルズワールド・サンクチュアリ」を立ち上げた。「自分のためを思ってくれる人がいない時の辛さを私は身を持って知っていました。この子たちにそんな思いをさせたくなかったんです」と語るボビーさん。
現在、この施設は50匹以上のチワワを保護するまでに規模を拡大。「この施設からチワワたちが離れる唯一の理由は、彼らがさらに好きな人を見つけることです」「どんな変わりものであっても彼らの美しさとユニークさを讃えられるのです」とボビーさんはチワワたちへの愛情を語った。
誰かに助けてもらったら、今度は自分が誰かの助けとなる。そんな助け合いの輪が広がっていくことで救われる多くの命があるはず。チワワたちがボビーさんのもとを離れた後も幸せな生活を送り、まただれかの支えとなっていくことを祈る。