霜降り明星、ぺこぱ、江頭2:50、ロンドンブーツ1号2号、神田伯山、長州力、デーブ大久保……などなど、名前を挙げるときりがないほど、去年から今年にかけて多くの芸能人がYouTubeに参入、自身のチャンネルを開設し話題を呼んでいる。
若手からベテランまで年齢層も幅広く、お笑いだけでなく伝統芸能やスポーツ界なども巻き込んだ潮流になっており、直近だと今年6月にとんねるずの石橋貴明が「貴ちゃんねるず」をスタート。3カ月で登録者数130万人を突破し、YouTuberとしてもその存在感を示した。このまま、メディアの王様として君臨していたテレビから、YouTubeへと覇権が移っていくのだろうか。
テレビ、ラジオ番組に携わりながら、数多くのYouTubeコンテンツ制作に関わる放送作家、白武ときおが8月に発表した初の著書『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)には、ムーブメントの第一線で活躍する著者の実感に基づく分析と、自身の仕事術が詰め込まれている。
新型コロナの影響も受けながら進んでいるメディアのパラダイムシフトについて、白武に語ってもらった。
取材・文:張江浩司 写真:加藤岳
白武ときお
undefined
1990年、京都府生まれ。放送作家。担当番組は『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)『霜降りミキXIT』(TBS)『霜降り明星のあてみなげ』(静岡朝日テレビ)『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』(TBSラジオ)『かが屋の鶴の間』(RCCラジオ)。YouTubeでは「しもふりチューブ」「みんなのかが屋」「ジュニア小籔フットのYouTube」など、芸人チャンネルに多数参加
YouTubeは「片手間」がバレてしまう
白武が構成作家として関わっている、霜降り明星のYouTubeチャンネル「しもふりチューブ」の動画
学生時代から放送作家としてテレビ業界に飛び込み、23歳で年末特番「絶対に笑ってはいけない大脱獄24時」(日本テレビ)に参加。バラエティーのど真ん中にいた白武がYouTuberの存在を意識し始めたのもちょうどその頃だという。
白武自身は2012年頃からYouTubeへ動画を投稿しており、メディアとしての特性を感じていたそうだ。
継続的に仕事として関わることになるのは、「SunSetTV」。静岡朝日テレビがスタートさせたインターネットテレビ局で、ブレイク前の霜降り明星やAマッソの番組をYouTubeで展開していた。全国的に見ても、テレビ業界ではかなり先見的な取り組みだと言える。
立ち上げから参加し、自由に番組を作っていくうちにYouTubeのもう一つの特性に気付く。
フワちゃんに続くYouTubeスターは
現在ではにわかに信じられないが、つい数年前まで芸能人のYouTubeコンテンツはYouTuberファンの反感を買いやすく、うまく視聴者数を稼ぐことができなかった。テレビ制作者と組んだ、地上波で流れていてもおかしくないクオリティの動画が、1万再生もいかずに終わってしまうことが珍しくなかった。
ぺこぱチャンネルのように、iPhoneで撮った動画をほとんど編集もせず公開している短い動画でもコンスタントに再生され、多いものでは100万再生を超えている。「丁寧に編集し、目立つサムネイル画像を用意する」というYouTuberの常識を覆しているチャンネルだ。
芸能人が人気を集める一方で、YouTubeはそれまで無名だった一般人が脚光を浴びるという夢がある場所でもある。芸能人が増えると、こういったYouTubeドリームが成立しなくなるのではないか。
フワちゃんが顕著だが、知名度を得たYouTuberがテレビやラジオでも活躍することも珍しくなくなった。「既存メディアからYouTubeへ」という単純な構図ではなく、両者が相互に作用し、大きなムーブメントを作っている。
次ページ:高校生時代の自分が楽しめるものを作っていきたい