そこかしこに見え始めた未来化の事例
それでは、さらに未来化が進んだいくつかの例を挙げてみましょう。
オランダのRoyal Palaceという中華レストランのオーナーは、コロナ以前にたまたま中国で見かけたロボットレストランを実験的に始めようとしていました。オランダはこれまで、好景気でウェイターの人手不足が続いていたのです。そのためウェイターをロボットにしようとしていたところ、世界的なコロナ禍に。
コロナ禍では、オランダでも当然飲食店の売上は落ちているのですが、ロボットレストランはこういう状況であっても勝機があると考えられており、ロボットの導入を増やす考えだと言うのです。
日本でも労働人口の減少による人手不足と働き方改革のため、地方では飲食店では人が集まらずランチ営業ができないとか、店を閉めざる得ないことがあると聞きます。
こうした背景もあって、飲食店のロボットレストラン化が一気に早まる可能性があるかもしれません。
現在、売上が落ち込んでいる業界の1つにライドシェア系のサービスがあります。ただし、今後徐々に人が移動を始めるようになると、不特定多数が乗る公共交通機関への不安は軽減されにくいので、実はドライバーの感染有無の確認さえでき、車などの移動手段の清潔度が担保できれば安心感が高いためライドシェアの方が安心、という人が増えてくるという予測があります。
また彼らは移動にまつわるデータをすでに持っていることから、昔からの非効率的な設計体制が、そのまま維持されている公共交通機関が、ライドシェア系のデータに近づいていく。一方でライドシェアは公共交通機関のサービス設計を積極的に行うようになっていくと言われていたりします。こうしたところからも、いわゆるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス。移動のサービス化)が発展していき、やがてライドシェア系の民間サービスが公共交通機関にとって変わっていくのではないかとされています。これなども、コロナによって未来化のスピードが上がった例かもしれません。
移動といえば、フランスのデザイナー、ニコラス・アデルカイダーが提唱した、まったく新しい乗り物の使い方が話題です。「The urgency for slow down(スローダウンのための緊急アクション)(ええ)」というプロジェクトで提唱しているのは、乗り物そのものを「植物の鉢」にしてしまおうというもの。
こちらはまだ実現していませんが、そのコンセプチュアルなビジュアルのインパクトが強く、コロナ後に進化した未来の世界を象徴しているような感じがします。
まちづくりに関して、ロンドンやパリ、ミラノなどですでに始まっているのが、自転車道を街の中心に捉えた再開発です。未来の街は、車ではなく環境にも優しい自転車が中心の社会になるとか。ここで参考にされているのが、オランダ。全国に張り巡らされた自転車専用道路は3万3000kmを超えるとされ、オランダ国内の総道路距離の25%前後を占めるとされています。オランダでは、死亡事故の増加などから、すでに1970年代に自動車から自転車へのシフトが始まっており、今ではアムステルダムをはじめ多くの都市で、車の乗り入れを禁止しているエリアがあります。
市内ではほぼ全ての道路に自転車道(ここでは小豆色の道)が併設されています。そして、車よりも自転車が優先されます。
コロナ後の変化のニュースを追っていると、いわゆるニューノーマルと言われる、新しい生活スタイルの浸透が少しずつ見えてきます。これらは、もともと予想されていた未来がグッと早まったような印象も受けます。
ときにそれは予測とはまったく違ったものかもしれません。しかし、かつてペストの後に工業化社会が到来したのと同じように、コロナの後には情報化社会なのか、サステイナブルな社会なのか、いずれにせよ新しい社会になると思われます。
コロナが早めた未来の兆しを探してみるのも、きっと面白いのではないでしょうか。