それでも辞めると即答できないギャンブルの魔力
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そして、被告人質問です。まずは弁護人から、
弁護人「何故、こんなことをしたんですか?」
M被告人「仕事をしておらず、家族の生活費を得るためです」
弁護人「働いてなかったのは何故です?」
M被告人「今回の被害店で着服し、1月にクビになりました。その後に豊洲市場で働いてたんですけど、夜間の仕事で体調を崩しまして、行きにくくなりました」
弁護人「職探しはしてましたか?」
M被告人「飲食店に絞って探してたんですけど、コロナってのもあってなかなか…」
コロナウイルスに関しては被告人だけじゃなく、世界中の人たちが影響受けてますからね。こればっかりはどうしようもない。
弁護人「あなたには借金があって、1月の事件の弁償を父親に払ってもらって、そして、仕事が見つからないという状況でしたね。そんな中で、事件を起こしたと。どこに原因があると思いますか?」
M被告人「当たり前の生活をするためだったら、他人の財産を盗んでも構わないんだと思ってしまったのが原因だと思います」
弁護人「しかも、以前にも盗みをやって許してもらった店ですよね。こんなことしたら、裏切ることになるとは考えなかったですか?」
M被告人「それはありました。でも、家族のためという気持ちが上回ってしまいました」
弁護人「今、被害店に対してどう思っています?」
M被告人「上京をして最初に働いたお店でして。一度は許してもらいましたが裏切ってしまって。被害者には、2度目があったんだから、3度目4度目もあるだろうという怖い思いをさせてしまっていると思います」
どの時期にどの店に泥棒に入ってもダメなのは当然なんだけど、よりによってコロナ禍に年始にも侵入した飲食店を狙うって、そりゃないよと言いたくなりますね。しかも、初めて働いた店だったとは。もんじゃ焼きの土手が決壊するように被告人の理性が崩れる瞬間はあったんでしょうけどね。今後2度としないことを約束して質問終了。
次は検察官から。
検察官「あなたの家族はあなたの収入だけで生活してたんですか?」
M被告人「はい」
検察官「取調では、奥さんから“給料まだ?”って言われたことも原因として挙げてましたけど、そりゃ言われるのわかってたでしょ。仕事辞めたのを言ってないのは何故なの?」
M被告人「1月にクビになって、妻に負担をかけてしまったので…」
でもさらに迷惑かかる行動をやってしまうという矛盾もあるんですけどね。
最後は裁判官からの質問です。
裁判官「今年1月にもやって、同じ店に入ったと。1月の件は示談金150万円をお父さんに払ってもらって、今回の修理代110万円は祖父に出してもらったと。半年で260万円出してんだよねぇ…。そして、借金が100万円以上あるって話ですけど、債務整理は?」
M被告人「今、お願いしています」
裁判官「借金の原因はギャンブル?」
M被告人「はい」
奥さんの証人尋問でチラッとパチンコの話が出てたので、パチンコなんでしょうね。借金作るほどやっちゃうなんて。
裁判官「で、ギャンブルはどうするの?」
M被告人「逮捕されてから、生活のためと理由付けしてますが、根本的にやめることを話し合ってこなかっ…」
裁判官「やめるの? やめないの?」
M被告人「や、やめます!」
ダラダラした答えを中断させての再質問ですよ。そして、最後に、
裁判官「遊びのためにあるでしょ、ギャンブルって。あなたの場合、遊ばれてるよね」
と、名言みたいな雰囲気でパチンコやめなさいとアドバイスして質問終了。
この後、検察官が懲役2年を求刑して閉廷でした。ギャンブルで作った借金に正常な判断を狂わされたよくある事件なのかもしれません。