テキストコミュニケーションで失敗しないコツは「優しさ」
つまり多くの人にとって、テキストコミュニケーションはストレスそのものなわけです。
読む方も書く方もつらい。これを前提とすると、どういうスタンスでテキストコミュニケーションしていけば失敗が減り気持ちのよいやりとりができるかが見えてきます。テキストコミュニケーションの失敗とは何か。それはコミュニケーションのプロセスで損失が多いものです。
以下のようなものが代表例です。
・情報の欠損・欠落が発生して意図が相手に伝わらない「情報のロス」
・コミュニケーションのスピードが遅くなり時間がかかってしまう「時間のロス」
・感情的ないきちがいや軋轢が発生して精神がすり減ってしまう「心理的ロス」
これらの失敗を回避するためにとるべきスタンス、それは「相手を慮るスマートな優しさ」を常に意識することです。
コミュケーションという相互作用による業務遂行を考えた場合、自分の立場の主張よりも相手に寄り添い思いやる優しさが、上記のようなロスをなくし結果として成果を高めていくことにつながりやすいものです。
たった一文字でもコミュニケーションの伝達ロスを補うことができる
テキストコミュニケーションを上達するにはどうすればよいか?
僕がやっているのは、身近なテキストコミュニケーション巧者を見つけて、その人の振舞いややり方をまねることです。僕が意識して模倣している一番の達人は、ビジネス特化型SNSのLinkedinのカントリーマネージャーである村上臣さんです。
村上さんと知合ったばかりのころ、チャットしていて驚いたのは、彼のメッセージのていねいさとフレンドリーさのバランスです。
村上さんはチャットしているときはずっとていねい語なのですが、よそよそしさはなく、こちらに寄り添う感じもあります。
具体的にどんな感じなのか、ひとつ例を挙げます。カジュアルな感謝の言葉として、よく「あざす」という言い方をしますよね。全然普通の言葉ですし、ていねいさもそれなりにあります。
村上さんの場合、普通の人なら「あざす」と言いそうなタイミングでかならず「あざます」という表現を使われていたのです。
間に「ま」という一文字がはいるだけで、こちらはグッとていねいに接された気がしました。
村上さんからはほかにもいくつも、相手のためにも自分のためにもなるテキストコミュニケーションの秘訣をいくつも学ばせていただきましたので、次章でご紹介したいと思います。
実践ですぐ使える!テキストコミュニケーション上達のコツ5箇条
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テキストコミュニケーションの失敗の代表例として、先ほど、「情報のロス」「時間のロス」「心理的ロス」という3つのロスを上げましたが、それらが発生しないようにするためにどうすればよいか、僕が普段心がけている具体的なコツを以下に示したいと思います。
よかったら日々のお仕事の参考にしていただけると幸いです。
(1)返信はできる限り速やかに
これは先ほどお話しした村上臣さんから学んだTipsです。テキストメッセージを送った側は少なからずドキドキしているものです。
自分が送った内容が相手に見てもらえているか、見た後にどう思われるか、賛同してもらえるか、それとも反対されるか。反対されたらどう返答しようか……。色々な不安が渦巻いているものです。そんな相手側の気持ちを考えたらできるだけ早く返してあげたいと思えてくるはずです。
そして受け取った側もこちらでボールを持ったまま時間を過ごすのは気持ちが悪いものですし、「時間のロス」にもなります。とりあえず、相手を安心させるためにもできるだけ早く返信をすることを心がけましょう。
(2)1行目にポジティブなフレーズを
本稿でもすでに書きましたが、テキストコミュニケーションは基本的にストレスです。書く方も大変ですが、読む方も大変。
何しろたくさんのチャネルでいろいろなメッセージが同時進行でたくさん飛んできます。そんな中では、なんとなく読むのが嫌だったり億劫に思えるメッセージも正直出てきますし、そういうのは最悪埋もれてしまったりもしがちです。
でも、早く読んでもらいやすくするコツがあります。それが、「1行目にポジティブなフレーズを入れる」ことです。
SlackやFacebookメッセンジャーなどスマホでも利用可能なチャットツールを使っている方はご存知だと思いますが、メッセージが来るとアタマの1行分くらいのフレーズはプッシュ通知の形で配信されます。
この時に、元気のいい挨拶でも、感謝の言葉でも、気の利いたジョークでもなんでもいいので、とにかくポジティブな言葉をチラ見することで、見る側はちょっと癒されるのです。
基本的にストレスだと認識しているテキストコミュニケーションの中に癒しの要素が垣間見えることで、相手には喜ばれますし、開封速度も少し早くなります。「時間のロス」も「心理的ロス」も防ぐことができるオススメTipsです。
(3)語尾に親しみを込める
上で「あざす」と「あざます」の違いを書きましたが、それに近いニュアンスのTipsがこちらです。
たとえば、なにかをお願いするときでも「よろしくお願いします」と淡白に終わると事務的で無感情な印象になりますが、「ありがとうございます~」と伸ばすとなんとなく親しみや余韻が感じられます。
また、「ありがとうございますっ!!」と勢いをつけると、感謝の意思と強化と若干の敬意のアップが感じられたりします。
ほんの少し語尾を変えるだけで、受けての感情に働きかけるニュアンスを変化せられますし、これにより「心理的ロス」につながるリスクをかなり緩和することができます。
(4)文章の一義性を意識する
テキストコミュニケーションの難しさの中でも特に重要なファクターが、テキストコミュニケーションでは情報の抜け落ちが多く発生するということです。
対面のコミュニケーションの中では、言葉でははっきり示されていないニュアンスを推測できる要素がかなりあります。
前後の会話の文脈や口調や表情、席が近ければ何気なく耳に入ってくる情報もかなりの割合で共有できています。そんな状況でいう「アレ」という指示語と、テレワーク環境でいう「アレ」では伝わりやすさがまったく異なります。
また、文章で書くといろいろなものが省略されやすいです。主語や述語、目的語など、重要な要素のどれかが欠ける場合も割とたくさん出てきます。こうした重要な要素が欠けると「情報のロス」そのものになってしまいます。
短く簡潔な文章を心がけるのはもちろん正しいのですが、そのためには相手が知っている情報がどれくらいあるのかということを意識した上で、何を省略できるのかを都度判断していくことが必要となります。
「言葉の重要な要素は省かない」「指示語の頻発は避ける」「こちらの意図を明記する」。そうしたことを心がければ、文章が多少長くなっても相手が判断をする負担も減りますし、意図もしっかり伝わるはずです。
(5)常に誰に対してもていねいである
これがもっとも重要で、誰でも簡単にできることです。それは、誰に対しても常にていねい語で接することを自らのルールとすることです。相手が後輩であろうが先輩であろうが、社内であろうが社外であろうが、かならずていねい語で会話をする。
このルール化は、相手を尊重する意識を常に持つことにもつながります。相手を尊重する意識を持てていれば、言葉の使い方だけではなく、相手がどんな情報を持っているか、相手の立場からするとどういうことをしてほしいのか、などといったことにも自然と意識が向くようになります。
また、「情報のロス」や「心理的ロス」などにつながるリスクも減らせますし、相手方も自分のことを尊重してくれるようにもなりやすいので、「時間のロス」も減らせるはずです。
テキストコミュニケーションがスムーズだとテレワークも快適に
自粛期間が終わってしばらく経ちますが、こうしている間にもNTTグループや日立、富士通などの大企業ではテレワークを前提としたルールの整備やオフィスの再編成を進めていることが報道されています。
ウィズコロナ期に拡大するテレワークに順応していくための最重要ポイントのひとつが、日常的に行われるようになったテキストコミュニケーションへの対応だと言えるでしょう。
テキストコミュニケーションにおいて、事故・ロスを減らし、効果を最大化していくために、本稿でお伝えした内容にぜひトライしてみていただけたらと思います。