CULTURE | 2020/07/30

リーズナブルでボリューム満点!学生からも愛される「たかお食堂(高尾)」【連載】印南敦史の「キになる食堂」(2)


印南敦史
作家、書評家
1962年東京生まれ。 広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、 音楽雑誌の編集長を経て...

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「お店が長続きしない立地」のジンクスを打ち破る

たかお食堂の定食メニュー。サイドメニュー・おつまみとしてはキムチ(220円)、鶏のから揚げ(320円)、モツネギ豆腐(630円)などもある

「拓殖大学や法政大学が近いので、うちは学生食堂みたいなものなんですよ。学生寮もすぐ近くなんで、休みの日にも来てくれるんです。でも、そんなにこだわってるような店じゃないんですよ。たいしたものは出してませんし。でも、それなりに手ごろな値段なんで、安く済ませたい人の需要に合ってるんじゃないですかね」

そう謙遜なさる店主の高橋宏明さん(57歳)は、ゴルフ場や学生寮などで調理の仕事に携わってきた方。奥様の恭子さん(52歳)とも職場で知り合った。独立してこの店を開いて、この5月で丸6年になる。

今では学生のみならず年配の方まで、地元を中心に幅広い年齢層が訪れる。また数週間に一度くらいのペースで、登山の帰りに立ち寄る人もいる。たしかに、山から降りてきて飲むビールは格別だろう。

宏明さんの地元はずっとこのあたりだ。独立する前、山登りをするため高尾山口まで自転車で行き来していたとき、空き店舗になっていたこの物件を見つけた。

過去に3~4軒入れ替わってきたこともあり、地元では(お店が)長続きしない場所だと言われていたという。でも、そんなジンクスを、たかお食堂は打ち破った。途切れることのないお客さんの出入りを見れば、それは一目瞭然である。

「結果的にはよかったですよね。田舎なんで飲食店は都心みたいに多くはないし、場所的にも駅から近いので。夜は人通りが本当にないんですけどね。住宅地もそんなにないし、すぐそこが山じゃないですか。だから、ここを通る人ってそんなにいないんですよね」

それでも以前は21時半ごろまで開けていて、それなりに人は入っていたようだ。だが新型コロナの影響で客数が減ったこともあり、最近は20時ごろには閉めている。でも、それくらいのペースの方が無理がなく、ちょうどいいようだ。

「いつまでできるのかわかりませんが、できるところまではやろうかなと思ってます」

ところで気になる鉄道プレートだが、やはりこれは宏明さんの趣味なのだろうか?

「元々電車が好きで、高尾関係のものがほしいなと思って集めてたんですよ。一番最初は、(壁を指差して)この『高尾―甲府』っていうプレートが貼ってあったんですけど、高尾って松本ともつながってるし、新宿もつながってるし、だから『つなげていきたいな』と思って(笑)」

だから恭子さんに叱られつつも、ネットオークションなどで収集を続けているそうだ。山梨にもほど近く、どことなく旅情を誘う高尾という町によく似合う趣味だと言えるのではないだろうか。

これから先、常連さんの数だけでなく、鉄道グッズもまた増えていくのかもしれない。


たかお食堂
住所:東京都八王子市初沢町1227-1
営業時間:11:00~14:00/17:30~22:00(本文にもある通り、最近は20時ごろで閉店)
定休日:火曜日 第三水曜日

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