CULTURE | 2020/07/30

リーズナブルでボリューム満点!学生からも愛される「たかお食堂(高尾)」【連載】印南敦史の「キになる食堂」(2)


印南敦史
作家、書評家
1962年東京生まれ。 広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、 音楽雑誌の編集長を経て...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

ご飯もフライも味噌汁もアツアツ!あらゆる角度から食欲を刺激

豊富なメニューの中から「ミックスフライ定食」を選び、待っている間に店内を眺めた。

まず目に着くのは、店内の至るところに貼られた鉄道プレートだ。高尾を中心として中央本線沿線のものが多いので、意識的に収集されていることがわかる。

そういう意味ではマニアックであるわけだが、かといってお客さんは「鉄オタ」ばかりというわけでもなさそうだ。そういう人もいるのだろうが、近隣住民らしき人、特に学生がとても多いのである。

もっと言えば、体育会系の学生が目立つ。ということは、彼らの食欲を満たすだけの魅力、すなわちボリュームがあるということなのかもしれない。事実、ご飯をお代わりしている青年もいる。

そんな光景を眺めていたら、学生時代に利用した食堂を思い出してしまった。今は食欲旺盛な学生は少なくなったのかもしれないが、本来こうでなくっちゃな、などと感じる。

さて、そうこうしているうちにミックスフライ定食(650円)が運ばれてきた。メニューには「ポテトコロッケ・カニクリームコロッケ・串カツ」と書かれているが、白身のフライも入っている。

ミックスフライ定食(650円)

キャベツのサラダにポテトサラダ、大盛りご飯に味噌汁、おしんこと、なかなかのボリューム。これで650円ならコスパは上々である。

しかも、フライも味噌汁もアツアツ。ご飯もふっくら炊けているので、あらゆる角度から食欲を刺激してくるような感じだ。そして食べ進むごとに、力が漲ってくるような気がしてくる、気のせいかもしれないが、食べものの「熱」は、そんなことを感じさせてもくれるのだ。

とは言え決して際立つ個性のようなものがあるわけではなく、いたって普通である。でも、それがいいのだ。

食堂に求められるべきは、必要以上の個性ではなく、普通であることなのだから。お客さんも、それがわかっているからこそ、この店に集まるのではないだろうか?

次ページ:「お店が長続きしない立地」のジンクスを打ち破る