昭和なカルチャーが一掃されつつある博報堂
―― 中川さんは、博報堂のウェブマガジン「博報堂浦島太郎」のコラムで18年ぶりに戻ってきた博報堂について「まともになった」と評していましたが、どのあたりが一番変わりましたか?
中川:昔とは大きく変わりましたね。「寝ずに仕事するのが偉い」「午前様の会議が、一番脳が冴える」みたいな社畜的なスタンスがカッコいいという文化はほぼ終わりつつありますね。
ヨッピー:それって20年近く前の話ですよね。その頃の会社なんか、どこもそういう感じありましたよね。僕がいた会社も10年ちょっと前ですが、今振り返ってみると、結構ヤバい点は多々ありましたよ。
―― ヨッピーさん、中川さんは博報堂で具体的にどんなことをしているんですか?
ヨッピー:企業の仕事にも色々と入っていますし、博報堂社内では100人規模の勉強会をやりました。テーマは、広告コミュニケーションに携わる人が知っておくべきネット情報の流れ方とか、ネット民の興味・関心についてです。
中川:あとは、メディアの記事がどうやって作られているのか。企業の情報が含まれる記事を日本でも有数の複数メガサイトに取り上げてもらうよう企画を作り、それがいかに掲載されるか。その手法についても説明しました。
―― 博報堂で実際に仕事してみて感じたことはありますか?
ヨッピー:意外と広告業界の人もインターネットのことをそこまで追いかけていないんだなということを実感しましたね。ネット業界の人ならみんな知っていることも業界が違うと知らない人も多くて。でも、テレビCMの制作担当だからといってネットを知らなくていいという時代ではないですよね。
そういう意味でも、まだまだお伝えできることがあるんじゃないかと。具体的に「この表現を今やると絶対にたたかれる」とか、「これをちょっと入れておくだけで印象が変わります」といった、ネット廃人だからこそわかるような文脈もあるので。
中川:よくあることとしては、たとえばプレスリリースの中には、エモーショナルな話にした方がいいものがあるので、お役所言葉で書かれたプレスリリースを修正することもありますね。
ヨッピー:「こんなリリースは絶対に響かないと思う」とはっきり指摘することもありますよ。
後編に続く:ネットの文脈を熟知する人気ライター・ヨッピー氏、中川淳一郎氏が「博報堂」入り!Withコロナ時代は組織の枠超えが加速?【後編】
後編では、ネットニュース黎明期に遡り、当時から記事制作をしてきた中川氏、ネットメディアでPVを担保できる最強ライターとなったヨッピー氏が博報堂にジョインするまでの軌跡について大いに語っていただきます!※6/11 17時公開予定